Vol.85 『バッパーでの日々』
 2002年2月6日

自分が旅に出て気づいた事実。
それは、“世界中には旅している奴がたくさんいる”ということだった。

インターネット、旅行代理店…etc。
今時、旅の情報を仕入れようと思ったら方法は数多くある。
しかし、どんな情報より確かな方法は、そこに実際に行った人間に話を聞くことだ。

そしてそんな旅人の溜まり場になっているのが、今も昔も変わらない、
通称『バッパー』こと「Backpaker」なのである。
ガイドブック
南アフリカのバックパッカーガイド本。
『Coast to Coast』

南アフリカの宿状況は、他の国と比べても悪くない。
“新しい国づくり”を目指す土壌もあるせいか、
施設もそれなりに整っているし物価も安い。
バックパッカーガイド本が存在している
ところをみると、若い旅行者の数も多いのだろう。

まだまだこれからの国なので、都市部では、
高級ホテルの中にも驚くほど安い
ところもあったりして選択種は多い。
それでも『バッパー』の値段は、
もともと安いこともあって、世界共通、大差はない。

オーナー自身が元旅行者というパターンが多く、
それぞれの土地の中でも旅人好みの気持ちいい場所に位置取りされているのが普通だ。
慣れない土地でもいろんな意味で融通が利くし便利。

「Backpaker」は本来、若者の為のものだと思う。実際に我々の年代で
泊まっている人は少ない。歳を聞かれて答えたら驚かれた(笑)。
だが、Port St Johnsまで長時間のドライブで辿り着いたこともあり、
これ以上宿探しするのも面倒だったし、“隊長”とも一緒にいることだ。
この際、ここでのんびりすることにさせてもらうことにする。

裏庭

「Island Backpacker's」
裏庭。
リビング
リビング。大画面のTVがうれしい。

『Island Backpacker's』は、1st beachに近くにある。
3年前までオーナーの自宅&レストランだった3LDKの1件屋を、
ちょいと改造して『バッパー』にしてあるこじんまりとした作り。
別棟に「ロッジ」と「ドミトリー」もある。

1件屋の中には2つの個室(R160)と3人部屋のドミトリー(1部屋R220)かあり、
共同で使うトイレ&シャワー&キッチン&ダイニング、そして、
大画面のTV付きのリビングが1部屋。バルコニーも広いし、なかなか快適。
Island… 』という名前とは裏腹に(一応、遠目に海は見えるけど)なぜか
山の中に存在していて、裏にはからはパノラマ・ビューが眺められたりする。

「ロッジ」はシャワー&トイレ付き山小屋風部屋の中に、Wベットが1つ(R220)。
プライバシーはあっても蚊に悩まされそうだ。
別棟の「ドミトリー」は木製の簡素な造りで、1つの部屋に数個の2段ベットが
置いてあり、1ベット(R60)。外に共同トイレ&シャワー。
それでも高いと思う人は、テント(R45)払えばテントが張れる。

快適差に応じて細かい値段設定で分けられているのは、
通常の『バッパー』と同じ。安く上げようとすればするほど、ハードな生活になる
のは常識。安い値段でも若い旅行者にとっては大きいそれらの値段のギャップ
は、旅の印象に大きく左右する。どの変で自分なりの旅を続けたいのか?
選べる方が断然面白いだろうが、通常の若者は貧乏なので、選択の余地なし!
おのずと予算に応じた所に収まることになる。
部屋
我々の部屋。
3人ドミトリーでR220。
ご飯
ご飯は自炊。
「何作ってんの??」

我々が選んだのは、人数もちょうどいいし、3人ドミトリー。
驚くことにこの前までいたJ-Bayの宿より高い。この国の値段、
一体どうなってるのか…?

1部屋に3つベッドマットが敷いてあるシンプルな部屋。試しにテーブルを置いて、
サーフ・ボードと荷物をいれたら、部屋の中が一杯になってしまった。
荷物をほどくのも面倒なので、この際、最低必要なものだけ出して、後は
そのまま解かず置いておくことにする。

この部屋はもともとオーナーの寝室だったらしく、奥に小部屋(もとは
クローゼットだったものか?)があり、現在そこはスタッフ件宿泊客の
「貴重品預かり所」、「シーツ&タオル置き場」、「従業員の洋服棚」と化している。

その為、しょっちゅう従業員は出入りするし、部屋の鍵も無い。
“貴重品はどうしたらよいのか?”との我々の質問に、管理人のGuyは、
「その部屋は大丈夫だから。」と答える。
なるほど、ここは従業員しか出入りしないし、「貴重品」をあずけても所詮
奥の小部屋に入れられるだけなので、盗まれるとしたら従業員しかいないし、
ここにはそんな従業員はいない。だから大丈夫だと…。

わかるようなわからないような話だが、一応理屈は合っている。
2,3日たっても、掃除1つされていないところを見ると、ここは宿の中でも
治外法権の不思議な部屋であった。

大画面のTVでは、自由にDVDやビデオも観れるし、本でも読みながら
ゴロゴロするには最適だ。コーヒーもセルフ・サービスで勝手に入れて楽しめる。
お腹が空いたら、街のスーパーで買出しした食材で適当に作って
食べれば良いし、人が少ない時はプライベート・ハウス風の感もしないでもない。

写真
冷蔵庫に貼られた写真。

メイドのおばさん

メイドのおばさん。お茶目!

ここのオーナーがイスラエル人のせいか、イスラエル人が多い。
そう思うのも、イスラエル人の“濃いめ”の容貌と明るさのせいなのかもしれない。
とにかく目立つのだ! 管理人をしているラスタ・ヘアーのGuyもイスラエル人。

彼らのたくましさは、イスラエルという国の事情と別問題ではない。
男女共、若い時期に必ず3年徴兵制度にたずさわらなければならないイスラエル。
彼らの国では、徴兵制度が終わると、若者は世界中に旅に出るのが常識だ。
アラブの列強に囲まれて緊張を強いられてる国で生まれ育ったこともあり、
どこの国に行っても「安全」に感じるのではなかろうか?

世界各地に旅する彼らに、“日本はどんな国?”と尋ねると、
あっさりと、「お金を稼ぐ国」と語っていたのが印象に残った。

バー
隣のバッパーにはBarがある。
猫
猫もの〜んびり。

裏庭づたいに行ける隣の『バッパー』にはBARがある。
BARといっても、飲めるのはビールとジュースくらい。
ただし、ここからはパノラマ・ビューが眺められるので、
日陰でボーッとするにはいい感じだ。

傍の小屋では、ヒッピーのおじさんが、自家製タイコ作りの教室を開いていた。
アフリカらしく(?)動物の毛皮が、奥にドサッと置いてあり、好きなものを選んで
作れるとの事。「1つ作ってみてはどうか?」と誘われるものの、
ただでさえサーフ・ボードを担いで動く我々に、タイコまで持ち歩く余裕はない。
興味はあったが丁寧にお断りする。

『バッパー』には世界中いろんな国からの旅人がいる。
友達もすぐ出来るし、一人旅の孤独も解消できる。
しかも、旅情報を集めるには最適だ。
唯一の難点は“貧乏旅行”の偏った情報しか入らないということだが、
それも時には的を得てるし、実際若者には充分だと思う。

ガイ&隊長
管理人のGUYと隊長。
『バッパー』生活は気軽だ。
荷物も開かず、片付けるわけでも
なかった我々の部屋は、あっというまに
長屋状態に早代わりしていったが、
学生生活を思い出すような毎日は
それなりに面白かった。

ほとんど荷物をほどかなくても、
日々生活できたことだし、
何にもせずに気楽にのんびり
するだけの旅なら、荷物はグッと少なくて済むと
いうこともわかった。「こういうのもいいね…。」
シンプルライフの旅は、荷物が少なくてすむのが最大の魅力だ。

ダラダラと過ごした為、Port St Johnsがどんな所か把握出来ないままだったが、
そろそろ次の目的地に移動することにしよう。
“隊長”ともここでお別れだ。彼はここから再びインドに入るつもりらしい。
短い間だったけど、一緒に過ごせて面白かったよ。お互いに良い旅を続けよう!

この後、Transkeiで気になるもう1つの場所、「Coffe Bay」に向かう。
より田舎で、Xhosa(コーサ族)が昔ながらの生活を送る村とのこと。
果たして、兼ねてから気になってた “3rd World” がここに存在するのか??
それは行ってみてからのお楽しみだ。

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