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Giselleの世界![]()
話は少々長い。 バイロンベイにたどり着いて数週間たった頃、 移動やサーフィンやらで、体がボロボロになった時があった。 どうにもこうにもツライ。マッサージに行きたいと思い始めたのだが、 やってるところが多すぎて、どこにいったらよいか迷う始末。 これはひとつ、地元に住んでるマッサージが好きそうな奴に聞くのが賢明だろうと、 何人か物色して、マッサージ好きな洋服屋の女の子に聞いてみた。 彼女が教えてくれたのが、その名も「Relax Haven」。
そこは、ベロンギル・ビーチハウスの裏にある。 小さくてひっそりした入り口。 予約した時間に行くと、受付に大柄な女の子が出迎えてくれた。 ここの売り物は、「マッサージ」と「フローティング」。 「フローティング」とは … バスタブの上に、ジャバラのような完全密封になる天井が付いていて、中には大量の食塩水(?)が入っており、首用の浮き枕をつけて、 真っ暗な世界でプカリプカリと浮かぶというもの。 ヒーリングミュージックを聞きながら、しばしの浮遊感覚を楽しめる。 所有時間は1時間。ただし、体に切り傷等がある人は止めた方がよい。 激痛で、“因幡の白兎”状態となる。(現にアキヤンはそうなった。) 店には、その大柄な女の子が一人だけ。 受付も、セッティングも、全部自分でやっている。 必然的に「マッサージ」は、一人ずつしか出来なかったので、 アキヤンが先にマッサージを受け、私は「フローティング」しながら待つことにした。 ちょいと塩素くさいが、なかなか不思議感覚で、確かにリラックス出来る。 でも、これは1回やれば充分。 シャワーを終えて待っていると、どうやら「マッサージ」が終わったらしく、 アキヤンが出てきた。その顔は放心状態。 「なんか知んないけど、この人スゴイよ。いやぁ〜気持ちよかった…。」と、 フニャフニャの顔で出てきた。その顔を見て、期待が高まる。 (実は、私は自他共に認めるマッサージ好き。 日本では、自宅にマッサージ台まで購入していたくらい、ハマってた。) 言われるがままに、疲れきった体で、マッサージ台にうつ伏せになった。 腰を軽くゆすったら、それが始まりの合図。 その時からだ。「言葉のいらない世界」に突入したのは…。 「マッサージ」が終わった時、ほとんど起き上がるのが億劫になるくらい、 体はトロトロだった。硬くなった筋肉が、すべてほぐれてる…。 “スゴイ!この人天才じゃないの?!”と、もう大満足。 まさに“MAGIC HANDS”の持ち主だ!! これで、バイロンベイで心おきなく遊べるゾと、喜んで帰ったのであった。
それから3,4日経って、どちらともなく、“もう一度行きたいね”ということになり、 電話で予約した。今度は2人同じ時間に出来るという。 “ん?… あの子一人でやってるお店じゃないのかな?” 一瞬不安がよぎったが、 期待のほうが上回り、この時は深く考えなかった。 そして、「マッサージ」当日。 「どうせだったら、思いっきり疲れていかなければ…。」 などと言い合いながら、いつになく海で激しくパドルしたりなんかして。 必要以上に体をクタクタにして、「Relax Haven」にたどり着く。 すると、「あれっ…??」 お店の中には、見たこともない女の人が2人。 「ハァ〜イ。」と声掛けられる。 最初、てっきり客だと思っていたら、 なんと、この2人が、「マッサージ」をするという。 (“なんだ…あの子が一人でやってるんじゃなかったんだぁ…、でも、 この人達もきっと上手いのだろう… ここで働いてるんだから。”) そう気を取り直し、再び期待に胸はずませてマッサージ台に乗る。 …最初、いつ「マッサージ」が始まったのか全然分からなかった。 どう考えても、オイルで撫でているとしか考えられない! いちいちよく喋りかけるし、部屋を歩きまわる足音もバタバタとせわしい。 手つきもあやしいし、どう考えても「マッサージ」には、程遠い代物だ。 「期待」は次第に「不安」に変わり、そして「失望」へと変化していく…。 そしてついに終いには、「絶望」と変わっていった。 「ひどい… ひどすぎる…。」 マッサージ好きの人ならおわかりだろうが、この世の中で、 “下手な奴にマッサージされる”というのは、最悪の出来事の1つである! タダならまだしも、お金払って、なんでこんな具合の悪い思いをしなければならないのかっ。 “ツボ”をコトゴトく外すその動き。彼女自身、“過去「マッサージ」なんぞ受けた事はないで あろう”と想像するに遠くなかった。 我慢も頂点に達して、思わず、“「お金払うから止めてくれっ。」”と叫ぶ寸前で、 その苦行は終わった。…ガックシ。大ハズレ。 “こうなったらせめて、アキヤンだけでも当たりだったらなぁ…”。 その考えも、違う部屋を出てきた奴の顔を見て、すぐに打ち消される。 「もう、最悪…。」 この世の終わりみたいな顔してる。 どうやら2人共大ハズレだったらしい。「金返せ、バカヤローッ!」。 怒り大爆発の帰りの車の中で、ふと、“「じゃぁ、あの子は誰?」”という話になったのも 不思議じゃない。この日から、“MAGIC HANDS”の持ち主を探す日々が始まった…。 うっかり名前を聞き忘れた為、電話で尋ねてもラチがあかない。 店を訪ねて行っても、毎回違う女の子がいる。話に聞くと、互いに面識のない 26人もの女性がいて、それぞれシフト制で働いているらしい。 いまさら、他の女の子の予約を入れる気などサラサラない。 しかたなく、来る日も来る日も通って約2週間。 とうとう、ある日、その子を発見したのである! それが「ジゼル」だ。
妙な日本人カップルが、誰かを探しまくってたという噂は、なんとなく聞いていたらしい。 再会出来た時は、お互いに大喜び! 早速、予約する。 こうして、再び「ジゼルの世界」へ辿り着けた。 それからというもの、週2回の彼女の勤務日には、欠かさず通っている。 彼女自身、1日4人しかやらないので、勤務時間の半分は我々という訳である。 もうほとんど“ジゼル・ジャンキー”。 週2回の愛人との蜜月くらい、楽しみにしてる。 バイロンベイを離れられない理由の1つは、彼女の「マッサージ」なのだ! 個人的な主観だが、良いマッサージ師の条件というのが一応ある。 それは以下の3点である。 1).見るからに健康そうな人。 2).手のひらが肉厚で体温が暖かい人。 3).波長(気)が穏やかでオーラが落ちついている人。 この中でも、3).が一番大事で、いくらテクニックが上手でも、波長が荒かったり、 オーラに落ちつきがない人(人の影響をモロ受けやすい)は避けたほうが無難。 後で、必ず、調子が悪くなり不快な気分が残る。 ジゼルは勿論この条件をすべてオーバーフローでクリアー。
その健康そのもの! といった体格から繰り出されるストロークは逸脱だ。彼女の「マッサージ」を受ける日は、“疲れてないと損”というくらいの気分。 部屋に通されたら、できれば下着は取り、裸でうつぶせになりたい。 心地よいヒーリングミュージックを聞きながら、 タオルを上に掛けて待つ。 静かな音でジゼルが部屋に入ってくる。 大柄なのにもかかわらず、驚くほど繊細な動きだ。 彼女の手が腰に触れたら始まり…。
片方の足の裏から始まって、足の甲、ふくらはぎ、腿、お尻へと、“魔法の手”は 動いていく。筋肉が一枚一枚剥がれていくような錯覚を感じる。 絶妙な力加減・・・。彼女は、確かに“体のことを良く知ってる”と思う。 特に、ふくらはぎの筋肉に沿って、腿、お尻へと動くくだりは、 痛いのと気持ちいいののギリギリの線をいく妙技だ。思い切って身をゆだねてみる。 腰から背中、そして肩から首へと、 あたかも、彼女の手の感覚が自分のものであるかのごとく、 “魔法の手”は、滑るように動いていく。 自分の体に、すべての神経が集中していく…。 最後に顔をやってもらったらお終い。もう息も絶え絶え。深〜い呼吸が待っている。 すべてが終わった後の体は、恐ろしく軽い。 ジゼルにいくつか質問してみた。
もちろん!! こちらこそ一生お付き合い願いたい。 こうなったら日本に来てもらうか…。結構真剣に考えてる今日この頃である。 ![]() |