Nosara Yoga Institute


『こんなところにYOGA教室があるよ。』
それはNosara(ノサラ)に入った途端に目についた。

緑生い茂るジャングルの中に、さりげなく立っている小さな看板。
そこには「PUBLIC YOGA CLASSES」と書いてある。
見落としそうな入り口の奥には、巨大なパラパ(藁葺小屋)の様な建物が見える。

YOGAを習う事は長い間の夢の1つだった。

かの有名なジェリー・ロペス氏や故ジャック・マイヨール氏もやっているし、
マドンナを筆頭とするハリウッドのスター達の間で流行っていたのも知っていた。
様々なスポーツ選手達にもYOGAファンは多いし、特にサーフィン関係者で
やってる人をたくさん見た。ビーチでYOGAのポーズらしきものをとってから
海に入る人も珍しくない。

体の事を考える年になったということもあるだろうが、
サーフィンを始めて尚更やりたくなったというのもある。
旅に出てからも至る所で看板やチラシを見るたびに、“行ってみようよ” と
言いながら行きそびれていたのだ。

始める以前のYOGAのイメージは ・・・・・ わかりにくかった。
ストレッチ体操のようなものなのか? はたまた呼吸法や瞑想なのか?

当時日本でYOGA教室を探しても、近所には見当たらなかったし、
インドで生まれたというのもあり、やってる人も、たまたまインドかぶれ(?)
の人しかみたことなく、カッコイイには程遠くファッションもイケてない。 
興味はあったものの、カルチャーセンターでエアロビ風に習うのも億劫だ。

雨季にNOSARAに辿り着いてしまった我々。
ひどい雨で海に入れないこともしばしば…。これぞまさしくタイミングか?
ここで行くしかない! とYOGAの世界を初体験することになった。
そうして覗いたYOGAの世界は…?

パンフレット
「Nosara Yoga Institute」

コスタリカ、Nosara(ノサラ)
あるYOGA教室。

本来は、YOGA教師の資格を取る
ための教育機関として作られている。
只今、世界中から申込者殺到中。
詳しくは下記のHP参照。

www.nosarayoga.com


それはニコヤ半島でもっとも緑が多いといわれる
Nosaraに、ひっそりと存在している。
教室の入口
ジャングルのような庭の奥が教室。

看板の矢印に沿って入ると、
手入れの行き届いた
緑生い茂る庭がある。
その間の通路を進むと、
左奥に巨大なパラパが目に入る。
どうやらそれが道場らしい。

一歩、この場所に足を踏み入れると、
シーンとした静けさに体が包まれていく。
水分に満ち溢れた緑の濃い匂い。
緑の中をモルフォ蝶が飛んでいる。
通路
通路には花が咲き乱れている。
ヨガ
巨大なパラパ(藁葺小屋)。

中を見渡すが、誰も居ない。
呼び鈴もどきのものを鳴らしてみるが、人が出てくる気配がない。
玄関に観覧版のようなものがあったので覗いて見ると、
教室のスケジュールらしきものが貼ってある。

玄関
パラパの入り口。
ユメ
スケジュールチェック。

それによると、ビギナークラスがあることがわかった。
スケジュール通りなら明日は朝の8:30からだ。まずはこれに行ってみよう! と、
その日は期待にワクワクしながら帰った。

翌朝、再び道場を訪れると誰も居ない。
『やってないのかなぁ…。』とガッカリしていると、突然1人の女性が現れる。
それが、Erika先生だった。
エリカ先生
Erika Cubillos先生。
『You were great teacher.
Thank you so much !! 』

やさしそうな笑顔の明るい先生。
7年以上のYOGAのキャリアを持つ。
ベネズエラ人で、数年前からこの地に
移り住んでいる。英語も流暢に喋れる。
一見普通そうに見えるが、YOGAをやりだすと凄い。
ものすごくキレイで驚く。
彼女が先生で本当によかった!

今はシーズン・オフで、数人いる先生も
すべてお休みとのこと。
皆が留守の間、1人でここを任されて管理していた。
我々がここを訪れた始めての日本人だったらしく、大喜びされる。

『実はYOGAは初体験なんです。』 そう告げると、
『ワォ〜! ノープログレモ。早速始めましょう! 』と言ってくれた。
この日の生徒は我々以外にアメリカ人のおじさん1人。つまり全部で3人!
ほとんどプライベート・レッスンだ!!

朝露にぬれたジャングルの中、パラパの道場は気持ちの良い空間だ。
ヨガ・マットを床に引き、プラスチックで出来たブロックやベルトのような紐などの
道具をひと通り渡されると、YOGAレッスンは始まった…。

朝道場

朝の道場の風景。

ヨガ
これから始まる所。
ワクワク、ドキドキ…。

通常、教室はスペイン語で行われているらしいが、Erika先生
我々の為に英語を交えながらレッスンを進めてくれた。

YOGAで最も大事な事は、“呼吸”です。』 先生はそう言いながら、
まずはマットの上で足を組み基本姿勢をとる。
見よう見まねで真似をしてみる。

『Breath in …。』
ゆっくり息を吸いながら、両手を横に挙げ始め、真横で止める。
『Hold your breath , drop your shoulder …。』
息をためながら、両手をのばしたまま、肩を落とす。
『… and breath out …。』
ゆっくり息を吐きながら、両手を元に戻す。

先生の声が心地よい音楽のように辺りに響く。
『Feel the jungle …。』
『Feel the ocean breath …。』

そう言われて一連の動きの中で、呼吸を繰り返す。
静かな中で耳を澄ますと、様々な鳥や虫の声聞こえてくる。
ここは周りが本当にジャングルなのが凄い!
海の音まで聞こえてくるような気がするから不思議だ。

『Hear of your body breathing …。』
ゆっくりと自分の呼吸に集中していく。
酸素を沢山含んだ緑濃い空気が、肺の中に入ってきて、体中にエネルギーが
充満していくように感じる。

深〜い呼吸を繰り返しながら、先生はゆっくりと、新しいポーズをとっていく。
流れが自然なので、素人でもなんとかついていけそうだ。

“息を吸って・・・・・止めて・・・・・吐いて・・・・” という呼吸のリズムに合わせながら、
ゆっくりと手足を動かしていく。気持ちイイのとキツイのギリギリの所で止まるポーズも多い。
普段は使わないような筋肉が伸びていくのが自分でもわかる。
次第に自分の呼吸の音と先生の声だけになっていく。気持ちいい…。

1時間半のセッションが終わった頃には、体中が汗ばんでいた。
風呂上りのような心地よい疲労感。ほとんど放心状態である。

1回の受講料は10$。(10回分70$という回数券のようなシステムあり。)
とりあえず、初回分払ってお礼を言ってこの日は帰った。
さて帰ってからのこと。互いに興奮しながら、ポーズのおさらいをしようとやってみるのだが、
これがさっぱり憶えていない。

呼吸のリズムと共にゆっくりと体を動かしながらとっていくポーズが多いので、
最後の形だけで覚えようと思っても無駄なのである。
なるほど、過去ヨガポーズの写真を見てもピンとこなかったのを思い出して納得。
これは呼吸と共鳴したリズムが必要なのだ。

こうして、連日のYOGA道場通いが始まった。
朝は「ビギナークラス」で夕方は「応用クラス」。風の無い朝はサーフィンすることが
多いので、もっぱら夕方の「応用クラス」に通うことになった。
これがもう!最高なのである!!
シンボルマーク
Nosara Yogaのシンボル。
ロウソク
夕方はローソクを点けて…。

「応用クラス」は夕方 4:30から始まる。いつも大抵我々を含めても4〜5人。
ジャングルの日暮れは早く夕方には真っ暗になるので、
始まる前にローソクを点す。音楽は気持ちいいトランス・ミュージック。
ひんやりとした道場の隅に点されたインセンツの香りがほのかに漂ってくる。
道場はこれから秘儀でも始まるかのように、あやしくカッコイイ空間に様変わりする。

音楽と共に、ゆっくりと呼吸が始まる。
『Feel the jungle …。』
『Feel the ocean …。』


道場
道場の周りはジャングル。
ジャングル
ポーズをとって止まっている時に
見えるジャングルは美しい。


外は次第に暗くなっていく。ジャングルの日暮れは凄まじい美しさだ。
途中、雨が降ってくる。雨音がひどくなり音楽が聞こえなくなると、
先生は音楽を止めて、今度は "雨音だけの世界" で、YOGAのポーズをとり始める。

ジャングルの中、ローソクの灯りだけの道場で、ゆっくりとした自分の呼吸と、
それに共鳴している自分の体、ただそれだけ…。
一連の動きに、まるで “呼吸の舞” でも踊っている気分になっていく。
途中ポーズをとっている間、自分の視界に映るのは、暮れゆくジャングルの景色。
本当に美しいピースフルな空間。

レッスンの終了近くになると、瞑想している我々の周りを、
先生が静かに動いてローソクを消していってくれる。やがて真っ暗の中、
マンダラを唱える声が聞こえ、美しい鐘の音が鳴り響くと終了…。

『今日はどうだった?』 と尋ねる先生に、
とっさに言葉にならず思わず、『ハァ〜〜〜 …。』 と大きなため息をつくと、
先生はニッコリ微笑みながらこう言った。『 “ハァ〜〜” は最高の返事だわ。』

こうしてNosaraに滞在している間、最高の環境でYOGAの世界を堪能した我々。
すっかりファンになってしまったのはよいが、今後、これ以上のシチュエーションで
YOGA体験をすることが出来るかどうかは、はなはだ疑問である。

自らの体を媒体として、 “呼吸” によって地球の波動と共鳴する…。
母なる自然の中に存在する「NOSARA YOGA」
ここはまさにYOGAを堪能するための極楽空間なのであった。

*     *     *     *     *

(後日談)
後でわかったこと。
この「Nosara Yoga Institute」の創立者はAmba&Don Stapleton夫妻。
約30年ものキャリアを持つYOGAの世界の第一人者であった。
各国で活躍し、デミ・ムーアやロバート・レッドフォード、グレン・グロース、
ロビン・ウィリアムスなど、数多くのハリウッド・スターを個人指導した後、
1994年〜2000年の間、コスタリカに在住しながら、YOGA教師を目指す人々の
指導に当たる。2001年に正式なYOGA教師資格を取れる機関を設立。
雑誌『YOGA JOURNAL』でも常連の、YOGA教師を目指す人々にとっては
超有名な “虎の穴” 的存在。

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