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Tiger Tops![]() およそ何世紀もの間、 ネパールの自然は外部の世界から遮断され、 その野生動物王国は神秘のベールに包まれていた。 平原を囲む山々や背の高い草原は、この地を完璧な秘境と変え、 その姿をよそ者から守り続けてきたのだ。 1950年、王様がツーリストにそのシャングリラを開放するまで…。
ネパールのタライ平原。 かってそこは亜熱帯の植物が生い茂るジャングルで、野生の象や 虎やサイにとっての楽園、野鳥の王国でもあった。 この地域にはマラリアが生息していたため、長い間、一部の先住民(タルー族、 ダライ族)しか住めなかったという。1950年代以降、マラリアが撲滅されると 山岳部より住民が移住してきた。そうして開発が進み、今ではジャングルは ほとんど姿を消しているが、この中に「チトワン国立公園」がある。 「チトワン国立公園」としてその自然が守られた背景には、皮肉にも、 ここが当時の王族やイギリス上流階級の狩猟地となっていたため開発を免れた というのがあった。その後、サイ保護区、ネパール初の国立公園に指定され、 1984年にはユネスコの世界遺産にも登録されて現在に至る。 東西80km、南北23kmにもわたる広大な園内をもつ国立公園である。 未だ野生動物が息づくその場所に、「Tiger Tops(タイガー・トップス)」は ひっそりと存在していた。
「Tiger Tops Jungle Lodge(タイガー・トップス・ジャングル・ロッジ)」 は、 国立公園内に真ん中に位置するホテル。 ドーム型のメインロビーを挟むように両脇にロッジが建っている。 それらのツリーハウスやバンガローには、エレファント・グラスなどすべて地元で とれた自然素材が使われている。素朴で可愛い造り。 部屋の中に本物の木が突き抜けてたりしてるのも楽しい。 全ての部屋にはソーラー・パワーによるランプや扇風機が付いており、 温水出るシャワー・ルームと洗面所も室内に完備。 ひとつひとつの造りは簡素だが、トータルに見たらお洒落に仕上がってる。 今時のゴージャス系ホテルが失くした “素朴な心地よさ” があり、 ありそうでなさそうな微妙なセンでの快適さが気持ちいい。 ドーム型のメインロビーで食べる食事もおいしいし、西洋風のサービスは まさに一流ホテル並み。用意されているアクティビティも、 「エレファント・サファリ」 「ジープ・サファリ」 「ボート・サファリ」 など充実していて、 思いっきり子供心に戻って遊べるように、うまく配慮がなされている。 ここも最高だったが、我々が特に気に入ったのは 「Tented Camp(テンティッド・キャンプ)」であった!!
「Tented Camp」は、ロッジからジープで20分。途中、ボートに乗り換えて 川を渡り、さらに徒歩10分余りの森の中にある。ここまで来ると、 ソーラー・パワーも電話も無く、まさに俗世間から
窓もないオープン・エアーの メインロビーの建物からは、 エレファント・グラスに覆われた 草原や丘、そこを流れる川が見え、 まさに絶景のワイルドライフ! ここからサイの姿を 眺めることも出来る。
テントといっても、中には清潔なシーツが張られたツインのベッドがあり、 夕方には綺麗にベッドメイクもなされている。 別錬には小屋風のバスルームも隣接されていて快適そのもの! 非常にセンスの良い造りになっている。 素朴で簡素な造りなのに、コンフォータブル・ゾーンは極めて高い。 日本にあっても住みたいくらい気に入った!
夜になると辺りは真っ暗闇に変わる。 たまに見える明かりは蛍の光だけ…。 ランプの灯りに照らされるテントは、さらに雰囲気が出てカッコイイ。 テントの前の椅子に座って、昼間の「エレファント・サファリ」で観た数々の 動物の話で花が咲く。気分はまるで “サバイバー”。 見上げると空は満天の星空だ。 ここちよい風を感じながらベッドに入る。 虫の声がサラウンド・システムのように響き渡る。 遠くで象の泣き声が聞こえたかと思うと、すぐ側で、ガサガサッ… という音。 何か動物が動いているのだろうか? 快適テントの中で、様々な音に包まれながら眠る。 心は子供の頃のようにワクワクしていた。 大自然の中に安全に確保されたプライベート空間は贅沢そのもの。 ましては気心の知れた仲間で行くには最高である。 ここはまさに “大人の為の快楽ジャングル・スペース” なのであった! さて、そんな快適空間を提供している『Tiger Tops』だが、 ここの売りは、なんといっても「エレファント・サファリ」である。
ずばり、“ゾウに乗って野生動物を探しちゃおう!” というもの。 このホテルでは敷地内に それ専用のゾウが飼われており、 いつでもすぐにゲストが 「エレファント・サファリ」に 出かけられるよう待機している。 強い昼間の陽射しを避けて、 早朝と夕方に出かけるのが普通。
スタッフに誘われるまま、ゾウの宿舎に遊びに行く。 ちょうど食事の時間だったらしく、ゾウ達はもの凄い量の草をムシャムシャと 平らげていた。ここではゾウに触ったり、自分の手からゾウに直接餌を与えたり することができる。今までいろんな国でゾウを見てきたが、こんなにゆっくりと 近い距離感で彼らと触れ合ったことはなかったので新鮮な驚きだ。
その後、ちょうど水浴びの時間だから… ということで、ゾウと一緒に川に行く。 暑い日差しに冷たい水がことのほか気持ち良いのだろう。 ゾウはゴロリと横になり、『ゾウ使い』に洗ってもらうのを待っている。 我々も一緒になって洗う。 ゾウの皮膚はザラザラしたゴムのような感覚だが、その皮膚の下には確かに 我々と同じ赤い血が流れているらしく、触ると体温が感じられる。 まるで飼い犬のように、目を閉じて気持ちよさげなゾウ達…。 体にまんべんなく水を掛けたり、耳の後ろを洗ってあげたりと、ゾウとのスキンシップに 我々も思わず狂喜乱舞!!
水浴びが終わると、再び『ゾウ使い』は、 ヒョイと、いとも簡単にゾウに飛び乗った。 ゾウの背中を歩いたりしてる! 無論長い丹念のたまものだろうが、 それにしても、彼らのバランス感覚には 本当に驚かされることが多い。 遠くから動物を見つける「視力」の 良さにも脱帽! チトワン国立公園内には、野生のサイや熊、 レパード、数種類の鹿やサル、450種類の鳥達、 河川にはワニや淡水イルカ、そしてこのホテルの名前にも なっている絶滅寸前のベンガル虎など、様々な野生動物が生息している。 これらの動物をゾウに乗って探すのだ!面白くないわけがない!!
「失礼しますよ〜。よっこらしょっと… 」 とゾウに乗り込む。 ゾウの背中には四角い木枠に布が張られた椅子が設置されており、 そこが我々の座る場所。 それでもいざ動き出すと、巨大な四つ足の動物に乗っているという変な感覚で、 ゾウが歩くたび、体がゆら〜りゆらりと揺られてとても快適とは言いがたい。 “ここは、しばし力を抜いてゾウの動きに身を任せてみよう” と体から力を 抜いてみる…。これで随分ラクになった。 慣れるとゾウの動くリズムが段々心地よく感じられてくるから不思議だ。 『ゾウ使い』はゾウの頭に乗り、足で耳の後ろをけったりして方向転換をしている。 手には木の棒がしっかりと握られている。この木の棒はゾウの頭を叩いて合図に 使ったり、森や草地の木々から後ろに乗ってる客を守る為に “枝よけ” としても 完璧な役目を果たしていた。 たまに『ゾウ使い』がゾウの頭を木の棒でパシッと叩くと、なんだかゾウが 可哀想になってくるのだが、スタッフの 「ゾウは地球上で最も知的な生物です。 彼らが人間を楽しませるように、私達も彼らを病気から守ったりして互いに 助け合っている。この関係をゾウ達はよくわかっていて、そしてそれを 楽しんでいてくれるのです…。」 という言葉に、少し安心する。
ゾウの背中に乗って見渡す世界は独特だ。 目線が高いのと、ゾウの動くリズムに揺られているのとで、 まるで自分が恐竜にでもなったかのように感じられてくる。 のっしのっしと、巨大な雑草のように生い茂るエレファント・グラスを掻き分けて、 ゾウは進んで行く。木の枝が邪魔な時は、その長い鼻でバキッとへし折ってしまう。 人間の足は勿論のこと、車でも入っていけない場所にゾウで入って行くというのは格別な体験だ! その昔この地では、王侯貴族やイギリス上流階級のために数百頭のゾウを使って 大規模な狩猟が行われていたという。確かにゾウの上だと見晴らしがいいし、 動物も見つけやすい。ゾウに揺られて森やジャングルの中を進んでいると、 しばし、太古の狩猟気分を味わえる。 動物愛護教会の人には怒られそうだが、ゾウに乗って狩猟する気分は さぞかしエキサイティングなものだったであろうと想像される。 人間の残酷さと欲望はいつの時代も貪欲だ。 昔のハンティングが、今はチェイシングに変わったものの、「エレファント・サファリ」 は あなたを太古の世界に確実にタイム・スリップさせてくれる。
滞在中、ゾウに乗りながら、たくさんの動物を観る事が出来た。 サイは勿論のこと、サルや鹿、美しい鳥達。 中でも野生の孔雀が羽を広げて、木から木へとバッサバッサと飛んでいく姿には、 “孔雀って空を飛ぶものだったんだぁ…。” と心底ビックリしてしまった。 最大の目的だったトラ。これは見るのがかなり難しいらしい。 途中足跡を何個も発見するものの、実物は見つけられず、唯一NOBUちゃんが 「トラの足を見た!」 だけにとどまった。 それでも十分な動物も観れたし本当にハッピーな時間が過ごせた。 “極楽ジャングル空間” に泊まって、 “快楽ジャングル体験” をする。 「Tiger Tops」 は、仲間や家族で自然を楽しみたい人にとって 最高のアミューズメントパークであった。 ![]() |