Vol.10 『Little Beach』
  2001年11月10日

唐突ですが、あなたはヌーディストビーチに行ったことがありますか?
「YES」と答えられる人は、そう多くないであろう。

なぜなら、そんな場所は普通辺ぴな場所にありがちで、ファミリーで行けるリゾートには
あまり存在しない。 “ヌーディストビーチに行きましょうツアー”などというものも
今まで見たこともないので、 一般の旅行者が行く機会は、ほとんどないものだと思われる。

「リトルビーチ」 (別名スモールビーチ。なぜか現地ではそう呼ばれている。)は、
知る人ぞ知る、ヌーディストビーチである!

マウイでヌーディストビーチ?? ピンと来ない気がするが、一説には、60年代後半、
アメリカ本土から来たヒッピー達が、“LOVE&PEACE”を掲げて、 このあたりで
自由なキャンプ生活を送っていたらしい。
その名残りかどうかわからないが、確かにそれはマウイに存在した。

ビッグビーチ
Oneloa beach (Big beach)
休日なのにもかかわらずこの人数

オロネアビーチ(ビッグビーチ)という、まっこと美しい
サンドビーチの先にそこはあるらしい。
なんでも話によると、世にもうら若き女性達やカップルが、おしげもなくその肢体をなげだして、
日光浴に励んでるらしい。
サングラスは必需品だということだ。話を聞いてるそばから、興奮しているアキヤン!
「行こう行こうすぐ行こう!!」
(・・・・ったく・・・・単純な奴・・・。)

とあるよく晴れた休日。それは決行された。

ビックビーチは、すばらしく美しいビーチである。
真っ白な砂浜に、光り輝く海。なごやかな家族連れやカップル。
人の数もまばらで、これぞ海水浴でしょう…といった快適空間。
これにくらべたら日本の海水浴なんて人だらけで、ひたすら屋外日焼け場と化してる
不思議な場所にしか見えない。
ここは海水浴のイメージが変わるくらい、気持ちのよいビーチである。

ビックビーチの端にはちょっとした岩場があり、そこを超えたところにスモールビーチがあるらしい。
そこそこ激しい岩場を登っていくと、隣のビーチが見えてきた。

「岩場を抜けるとそこはヌーディストビーチであった。」(川端康成風でお願いします)
う〜ん。確かに目のやり場に困る。いきなり裸の女の子が寝そべっている。
サングラス持ってきてよかった…。
はやる気持ちを抑えながら、我々は突っ立ってるのもなんだし、
ビーチでもちょいと向こう側まで横切ってみようということになり、歩き始めた。
よくみると、年老いたカップルや中年のカップルとかもいるし、皆、普通の顔して日光浴してる。
ビーチバレーをしてる人もいれば、泳いでいる人もいる。
一瞬、あまりの自然さに、ここが普通のビーチに見えてくる気がするが(?)、
唯一の違いは、当たり前だけどみんな素っ裸だということだ。

あんまりジロジロ見るのもなんだし…と、かなり「もう全然意識してないよ〜」的に
歩いてるつもりだけれど、 そこに居る人が全員裸の中、洋服きてる我々は
かなり浮いていて、十分変だったに違いない。 ビーチの真ん中に座るのも気後れして、
ついビーチの端に端にと移動していった。
やっとの思いで端までたどり着き、ひとまず水着になって日光浴となるのだが…。

スモールビーチ
ここを抜けると… Little beach (Small beach)


なんというか…妙に落ち着かず、おちおち
寝てらんない。 目の前に、まじめに裸で
海水浴してる人々の姿がちらついてる。
写真なんぞ、とてもじゃないが撮れる空気はない。
サングラスをかけて、口をあんぐりと空けていた我々はかなり挙動不審だったであろう。

しかし、しばらくその空間にいると、不思議な感覚が湧き上がってくる。
皆、まじめに素っ裸であり、きちんとしたひとつの社会が出来上がっていて、なんだか、服きてる我々の方がここでは異端なわけでしょう?

「人間はなにを基準に恥ずかしいと思うのか…。自由に生きてよいではないか!
他人にどうみられるかより、結局自分がどうしたいかだし…。
よーく考えたら裸も気持ちよさげではないの。
もし、人間が裸のまま今の社会に進化していたら、一体どうなっていたのか?」などとどーでもよいことを考えながら、ただ漠然とビーチにたたずんでいたのであった。

ふと隣を見ると、やけに無口なアキヤン。
やっと口を開いたかと思うと、
「俺・・・気持ち悪くなってきた・・・。」
「・・・・はぁ?」
 (何を言ってるんだ奴は?)
「だってサ・・・ここよく見てよ。・・・・・・男ばっかり。」 (ん〜?)

そう、よーく落ち着いて見渡すと、そこは男だらけ…。
どうもこのビーチには、それぞれテリトリーが暗黙の了解になってるらしく、ビーチの一番端っこは、
なんとゲイビーチになっていたのであった!
つまり、我々はゲイビーチの中に寝転んでいたのだ。見渡す限り、男・男・男!
中にはモデル並にカッコイイカップルもいるけれど、いちゃついてる中年おじさんのカップルなど、様々なゲイカップル炸裂である!!

手をつないで、仲良く海に入っていく中年の素っ裸のハゲおじさんカップル…。
なんだか空気は一転し、さっきまでのオシャレなヌーディストビーチが、
いきなり巨大な銭湯の「男湯」に見えてきた。危ない…。
我々の寝ている奥には林があり、そこに素っ裸のおじさんが定期的に入っていく。
「一体、あの林に入っていく人は何しにいってるんだろうねー?」とつぶやくと、
「知りたくもない…。」はき捨てるように答えるアキヤン。

結局我々は、「そろそろ行く?」 と、早々と立ち上がって退散したのであった。
なんだか疲れた。岩場を越えてビッグビーチに戻るとホッとする。
「でも、なんか面白かったね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

出かける前の勢いはどうしたっ… というぐらいおとなしくなったアキヤン。
どうやら奴のワクワク脳みそは、手をつないだ中年ハゲおじさんカップルに
無残に打ち砕かれたらしい。

そしてその残像は、夜うなされて起こされるまで続いたとさ…。おしまい。


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  {後日談}

Key bay
Key bay。あの有名な大波「ジョーズ」のすぐ近く。
翌朝ホキーパで波乗りした後、ローカルのシークレットポイント「Kay Bay」に出かける。 迷路のようなパイナップル畑を越えて、車を止め、いばら道の崖を下ると入り江にたどりつく。
あいにく波はなかったが、まぁ、日光浴でもしながら読書でもしようと寝そべった。ビーチの横には芝生が広がっていて気持ちよい。 周囲を山に囲まれているので、とても隔離された空間に感じる。誰もいない…。

「あ〜俺もう裸になっちゃおーっと!」
いきなり服を脱ぎだすアキヤン。

「えーっ、大丈夫???」

「誰も見てないよー平気でしょ〜。脱いじゃえ脱いじゃえ。
おーっ、気持ちいい! ここはプライベートヌーディストビーチでしょう!!」


素っ裸で寝転んで本まで読み出した。明らかに昨日のヌーディストビーチに刺激されてる!
思うに…羞恥心とは、人の心が創るものではなく、空間が創るものなのかも?
つい私も乗って服を脱ぎ捨てた。2人で寝転んで読書にふける。
そして、あまりの気持ちよさについつい眠りこけてしまったのだ。

ガタガタガタッ…車の音で目が覚めた。
ふと見上げると、トラックに乗ったおじさんが、呆然と我々を見つめてる!
(なんで車で降りて来れるワケ??)
実は、我々が必死こいて下った崖の横に、ちゃんと道があったのでした。

「・・・・・??????」 (終始お互いに無言。双方とも事態を把握するのに時間がかかってる。)
「・・・・・??????」

永遠の時が流れたかと思ったら、おじさんはおもむろに、ガタガタガタッ…と
また崖を登っていったのだった。

きっと気でも狂ってると思われたのに違いない…。
こうして、我々の“勝手にヌーディストビーチ”はあっけなく終わったのでした。トホホ…。

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