Vol.26 『ARTS FACTORY』
  2002年2月26日

オーストラリアで出会う日本人は若者が多い。

それもそのはず、オーストラリアはワーキングホリデーが認められてる国なのだ。
ワーキングホリデーとは、滞在費を補う為に海外で働くことが認められてる制度で、 最長1年間滞在することができるもの。他にもニュージーランド、カナダ、韓国、フランス、ドイツ、イギリス等でも適用されている。 ただし年齢制限があり、オーストラリアは確か30歳までである。
旅をしながらついでに働いて、現地で外貨獲得も出来るという便利な制度。

若い国であるオーストラリアは、“多分化国家”をスローガンにしている。
いろんな国の若者に、自分達の国をある意味で解放して、より深く理解してもらいたいという 考え方は自然だし、若者にとっては、安上がりで長く旅が出来て最高なシステムだと思う。
現地の滞在の仕方も、ホテルから格安宿、キャラバンパークの設備も各町に整っていて、バックパッカーにはやさしい国だ。

話はいきなり1月末に飛ぶ。
我々が滞在している宿の管理人カシーから、「ハレ・クリシュナのパーティに行かないか?」と誘われた。 なんでも宗教団体の集まりがあって、カレーとかご飯も食べれるとの事。
暇だったので、興味津々、誘われるままに参加した。

町中に程近い場所にその集会所はあり、なにやら中からはインド系の音楽が鳴り響いている。
入場料は4A$(280円)。ゾロゾロと人が集まってくる。
集会所の中に入ると、そこに、オレンジ色の袈裟をきたスキンへッズの関係者と共に、踊り狂っている日本人達がいるではないか!
どう考えても宗教団体のメンバーとは思えないノリの良い日本人…???。

音楽と踊りが終わると、隅っこに置いてあったテーブルの上には、カレーが並べられ、それをもらうために人々が列になって並ぶ。ご飯はおいしくお代わりは自由。
すると、例の日本人達は恐ろしい勢いで食べて、またすぐ並んでる。
まさか宗教関係者? たまらず聞いてみた。
「ここをなんだと思って来てるの?」
「えっ?… カレー食べ放題の場所でしょ。」

思わず爆笑!! 久しぶりにバカな日本人を見たと大ウケ。
これが彼らとの出会い。
Arts Factory
皆んなユニークで面白い。

看板
「ARTS FACTORY」
聞くところによると、彼らは皆、「ARTS FACTORY」にステイしてるらしい。面白そうなので遊びに行ってみた。

「ARTS FACTORY」はバイロンベイにあるバックパッカーズロッジだ。
広い敷地内には各宿泊施設はもとより、バーもプールもなんでもござれで、一つの村くらいの規模である。 若者が圧倒的に多いため、“インターナショナルな合宿所(?)”とでもいうか、なんともいえない空気をかもしだしている。
Arts Factory
広い敷地。
BAR
BAR. 世界中の若者が集う。

宿泊施設はユニークで、当然、値段に応じて違う。
基本的には共同トイレ&シャワー&キッチンがあり、各自好きなタイプの宿泊施設を選択してる。
個室もあるし、バスを改造した部屋とか、テント風の建物とかの共同部屋もある。
その中でも、日本人集団はキャンプ場に自前のテントを張るテント村の住人だった。
1泊15A$。なかにはフリーアコメンデーション(1日1時間半ロッジで働くと宿泊がタダ)で住んでいる者もいる。
Arts Factory
ファンキーなバスを改造した部屋。
コテージ
Island Bungalows.

敷地内には、屋外ステージ(?)のようなものもあり、曜日によってライブやショーがあったりと、 娯楽施設も整っている。特に金曜日の8時から行われる「ファイヤーダンス」は必見!
むちゃくちゃカッコイイ。
隣接されてる映画館もなかなかユニークでカワイイ。
最初はたまたま遊びに行ったのだが、そこに集う若者達が面白く、夜毎遊びに行くようになった。
隊長
“たいちょう”

通称“隊長”。
大阪出身。28歳。職業大工。
幼い頃から旅に出るのが夢だった。
カナダに1年滞在後、日本に一時帰国。
オーストラリア滞在8ヶ月目。
この後はアジア方面へ旅する予定。
ナベ
“ナベちゃん”

豊橋出身。28歳。
学校卒業後サラリーマンを経験する。
あまりの激務に精神的に疲れ、その後インド・ネパールに旅に出る。オーストラリアでの滞在も残すところあとわずか。
ゆり
“YURI”

YURIは大阪出身。19歳。
ワーキングホリデーでオーストラリアを一周。
明るく元気な女の子。この後はバリに行く予定(?)
リトル大阪
“リトル大阪”

関西出身の子が集まってるテント。

ここには、いろんな個性の若者達が世界中から大勢集まっている。
皆一様に素直でたくましく、エネルギーにあふれていた。
これからアフリカに行くという男の子なんか、もう100%自分の体力に自信があるって感じだ。
アキヤンはわけもなく燃えてたし、私は10代の海外生活を思い出して懐かしかった。

彼らと話していて気づいたこと。
1つは、“世界は思ったより狭くなっている”という事実。
考えたら20年前と現在の旅状況が変わっているのは当たり前かもしれない。
旅人の為の情報は世の中に溢れているし、交通状況も宿泊事情も発達している。
世の中の受け入れシステムが整ってきていても、全然不思議ではない。

驚いたのは、ヒッピーでさえE−メイルアドレスを持っていることだ!
インターネットの普及が世界を狭くするのに一役買っていることは間違いない。
旅の挫折や感動はプライベートなものなので、昔も今も変わらないと思うが、思っていたよりイージーに旅が出来る時代なのかもしれない。
勿論、これはいいことだと思う。

もう1つは、自分達が結構年をとっていることを自覚したこと。
19歳のYURIなんか、しっかりしてるしすっかり外国に馴染んでる。
しっかりしているというのは正確ではないかもしれない。
だって“しっかりする”というのも一人旅をするのに必要だからするわけで…、つまり、適応能力なのだ。順応性があるというのも、やはり“若さ”なのだから。

私自身、10代の頃の旅は怖いもん無しだった。
知らない所に旅しても、「どこまでいっても所詮地球だぁ〜」と全然怖くなかったし。
その気持ちは今も変わらないけれど、変わったのは悲しいかな体力。
自分の体力を100%信じられないのは年をとった証拠だろう。

いまさら若者ぶる気はさらさらないけれど、
「3時間かけてトランスパーティーに行こう」と誘われた時に、
「徹夜すると次の日大変だし…。」とあれこれ考え即答できないのが寂しい。
昔は1時間半かけてクラブに行くのが全然苦じゃなかった。
着いてからの楽しさの方にワクワクして、たどり着く過程も楽しかった。
どうやら年をとったのは体力の問題だけではなさそうだ。
後先のことを考えて1歩を踏み出せなくなるのも、守りの体勢をとるのも、すぐ批評したがるのも、枠にはまって考えるのも…、すべて年をとった証拠である。

若いエネルギーを吸うがごとく、夜な夜な通った我々につきあってくれてありがとう。
皆これからもいい旅を続けてください。

「旅とは自分を知ることである。」
そう言ってたのは誰だったのだろう?
確かにそのとおりである。

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