Vol.30 『Great Ocean Road』 2002年3月30日 オーストラリア大陸の歴史は古い。 しかし、西欧文明の影響を受けた歴史は短い。 したがって、人間の歴史上(史跡等)の産物はあまりない。 つまり、見所の多くは大自然の中にあるといってよいだろう。 「グレート・オーシャン・ロード(偉大なる海の道)」は、ビクトリア州メルボルンの西、 トーケーからウォーナンプールまでの約250kmのドライビング・ルートだ。 シドニーから南に下るにつけ、寒くなってきたのにメゲて、観光に切り替えた我々。 かねてから観たかったベルズビーチもあることだし、行ってみるかと、 グレート・オーシャン・ロードを目指す。
ここが、グレート・オーシャン・ロードの入り口。サーフィンの町として有名なトーケーには、 「Surf City Plaza」があり、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの Quick Silver , Roxy , billabong , RipCual などの本店がある町。 さぞかし、ビルが建ち並び・・・・と想像は大きくふくらんでいたのだが、現実はそんなに大した事なかった。 それでも、久しぶりのショッピングにしばし、ハマる。
ここには、有名なベルズビーチがあり、一応波チェックに行く。残念ながら波はナシ。 思いっきりフラットで、本来の姿を見ることは出来なかった。波が上がったら、きっと凄いのだろう。 一路先に進むことにする。
グレート・オーシャン・ロードは3つのパートに分かれている。最初がサーフ・コーストと呼ばれる 海沿いの道。晴れていたので、最高に気持ちいい。 波の音を聞きながら、道路に映る雲の影と追いかけっこしながらドライブ。 そして、海沿いの可愛い町であるローン、アポロベイからポートキャンベルまでが、 レインフォレストが多いオトウェイズ・ヒンダーランド。 この辺りには、国立公園や滝などを観ることができる。
中でも、オトウェイ国立公園内にあるレインフォレスト。「マイツ・レスト」は、気軽にウォーキングできるヒーリングスポットだ。 ユーカリやシダ類が、重なって生い茂る姿は、まさに“3Dフォレスト”!目に栄養になる場所だ。もちろん空気もいい。 都会からここに来ると、ロックコンサートからクラシックコンサートに来たくらいのギャップがある。緑のエネルギーを思いっきり吸ってリフレッシュ。 そして最後の、ポートキャンベルからウォーナンプールまでが、最大の見所といわれる シップレック・コーストとなる。 最も有名な「12人の使徒」を夕日時に観たいと思ったため、 一旦、通り越して先に各名所を駆け足で観ていった。
「ロンドンブリッジ」「ジ・アーチ」「ロック・アード・ゴージ」…etc。 オーストラリア大陸が、海に落ち込む奇景が見られるところを足早に見て廻る。 遥か昔から、気の遠くなるほど長い年月をかけて、波の浸食が作り出した芸術作品だ。
そして、確かにここは“大陸の果て”なのだ。 生まれて初めて見る“大陸の果て”に感動する。 サンセットタイムが近づいてきた。当初の目的地、「12人の使徒」へと急ぐ。 巨大な12個の岩が、聖人の顔に見えるということでこの名がついたらしい。ボードウォークも完備している。期待に弾んで進んでいくと、景色が見えてきた。
「うわぁ・・・・・。」 思わず声が出る。写真でみるより遥かにスケールが大きい。 写真はやはり2次元の世界でしかないのか…。 あまりの巨大な空間に、二人共、無言になる。 この空間を言葉で現すのは難しい。 巨大な岩の下方には、波のしぶきが、まるで霧のように舞っている。 グランドキャニオンをイメージさせる巨岩群。 雲ひとつない空。パーフェクトな形で海に落ちていく夕日。 その度に、景色は、ため息が出るほど美しい色のグラデーションに変化していく。 まさに、神様のショータイム…。 ふと想う。かのリチャード・タレル氏(光を使った空間アーティスト。自然と共存した作品で世界的に有名。)は、この景色を観た事があるのだろうか? 彼だったら、これをみて、どんなインスピレーションを得るのだろう?
人間の作った物の中だけに長くいると、つい忘れてしまうけれど、こういう圧倒的な自然の中に来ると思い出す。 それは「地球が巨大なテーマパーク」だということ。そして自然は偉大なアーティストで、人間もその一部だということだ。 太古の時代から、刻々と変化しながらも存在している神様の芸術作品。 今日も、美しく日は暮れているのだろうか…。 |