Vol.50 『ローカリズム』
  2002年8月18日

旅をしていると、いろんな場所や人々に触れる。
その中には、外から来る人に対して親切でオープンな土地柄の所と、勿論そうでない所がある。
当然ながら、それはその国の経済状態や過去の歴史と関係ある場合が多い。

もし自分が生まれ育った所が、ある日、観光地として発展していったとしたらどうだろう?
日常の風景に突然入ってくるツーリスト。1人目は珍しく、10人目になれば目立ち、
100人になったら慣れてきて、1000人になったらそれらを相手に商売を始める者が出てきて、
10000人になったら政府ぐるみで商売を始めかねない。

世界中から来るツーリスト。
ある人はヒッピーで、ある人はサーファーで、そしてまたある人はビジネスマンで…。
こうなったら、どうやら最初に集まる人種のイメージが大事な要素になりそうだ。
ヒッピーやサーファーはまだ持ち物が少なそうだけれど、ビジネスマンになると、
先進国の考え方とか経済システムとかも持ち込んでくるだろう。

自分の日常の風景に、想像以上の“日常的ではない人や物”が視界に入り出した時、
もし自分だったら、それを受け入れて吸収していくのだろうか?それとも遮断していくのだろうか?
うまく想像できないけれど、もし、地元の空気やリズム、自然を愛していたならば、
あきらかに日常のリズムをぶち壊すくらい多くの人や物は、不快以外のなにものでもないだろう。

特に、外部からの侵入者の方が経済力に長けてる場合が多いので、
地元民なら、卑屈になるか、順応していくか、「なんだと〜ここは俺達の土地だっ!」と開き直るか、
それとも、受け入れながら大事な物を守るという最も難しい道を歩くか…etc。選択はそう多くない。

「ZIPPER'S(ジッパーズ)」はいい波だ。
朝一の波
朝一の波に乗るアキヤン。
だが、なかなか乗れない。地元でも有名な
ローカルがホットなポイントだからだ。

ということで、
朝一の空いてる時をねらって、
「ジッパーズ」に入る為、アキヤンは
もっぱら早起きが日課になっている。
それでも、人がいなかったためしがない。

白々と夜が明ける頃から、
日が暮れるまで、たえず人が入ってる。
それだけいい波だということだろう。
看板
「Zipper's」。
ローカル
ローカルズ。

コスタ・アズールにあるレストラン「Zipper's」の前にある為、それがそのままポイント名になっている。
ボトムはロックで、ボール状に波が入ってくるパワフルなライトブレイク。
隣の「オールドマンズ」 「ロックス」が、外国人やビジターに開放されているのと裏腹に、
この「ジッパーズ」だけは、“よそ者には絶対譲れない”空気が漂っている。

知らずに入った外国人が、強面のローカルにパンチアウトされたりすることも珍しくないらしい。
まぁ、気持ちもわからないではない。
ここはローカルをリスペクトして、ビジターは他のポイントに行った方がいいだろう。
ジッパーズの波
「ジッパーズ」の波。
男の子
地元の男の子達。

コンドミニアムがオン・ザ・ビーチにある為、波が上がってくると、夜中に波の爆音が響く。
そんな時は決まって、翌日いい波が立っている。

ハリケーンが来るとの噂が流れたある日、スウェルが入った。
隣の2つのポイント「オールドマンズ」 「ロックス」から「ジッパーズ」に至るまで、
全部波が繋がっている! この日のビーチにはプロのカメラマンが登場し、
日が暮れるまで、ハイパフォーマンスが繰り広げられていた。
皆、本当にウマイよ!! もう、見てるだけでも楽しい。
波
波は速いピーリングライト!
サーファーGIRL
あまりのデカさにびびる女の子達。

そんな「ジッパーズ」も、波が無い時がある。
そういう日はローカルズは何をしているかというと・・・・。
・・・・・やはり、ビーチにいるのである。釣りしたり、牡蠣カキ採ったり。

巨大な魚
こんな巨大な魚が釣れてしまう。
魚inトランク
おもむろに車のトランクへ。

海の上で波待ちしていると、水面下に魚の集団が通り過ぎたりするのをよく見る。
小魚なんだろうけど、結構デカイ。
そう、ここロス・カボスは釣りで有名な場所なのである。特に大物が釣れることで有名らしい。
世界的なフィッシング・トーナメントもよく行われている。牡蠣も一年中採れるとの事。

波がない日は、海にプカ〜りと黒いタイヤが浮いている。
この黒いタイヤに捕まって“牡蠣採り漁”をするのだ。
だから、海をみて波チェックをする際、黒いタイヤが浮いてる時は波はイマイチというわけ。
カキ
大きな“牡蠣”!
採って、そのまま食べる。
ローカルズ
ローカルズの皆さん。

豊かな海の幸に恵まれた彼らの生活。
波があれば一日中サーフィンしている。
そして、いつも仲間が一緒だ。

海の上は平等だ。ここには貧富の差も、家柄や学歴や職業など、陸の上の常識は通じない。
あるとしたら、楽しんでるかどうか? 又は、リスペクトしてるかどうか? というシンプルなもの。
こういう風景の中にいると、本当の豊かさとはなんだろう? と、ふと考えてしまう。

変わりゆくロス・カボスのなかで、こんな場所があると、ちょっとホッとする。
10年後、またはもっと先に、またこの地に訪れた時にも、
ローカルズ達がまだまだ元気で、暴れていてくれたらいいなと思う。

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