Vol.53 『LONGBOARD世界戦』 2002年9月7日 8月23日、第11回「ワールド・ロングボード・チャンピョンシップ」がスタートした。 毎年違う場所で行われるというこの大会は、今回はロス・カボスの「ロックス」で開催されたのだ。 最終戦にもかかわらず、場所が場所だけに、ギャラリーも少なく、 大会関係者と、近所の人と女子高生やガキンチョだけという、極めてローカルな雰囲気。 おかげで非常にゆったりとした空気の中で、大会観戦することができたのであった。
ジャッジ本部からのヒートの声が、部屋にいても聞こえるくらいだ。 毎朝、ヒートに参加する選手を呼び出すスピーカーの音で目が覚める。 それから起きて出かけても十分間に合う。パイプライン・マスターズ観戦の時とは、エライ違いである。
大会開催にあたって、セレモニーが始まった。 これは今回世界中から集まった 選手達が、それぞれ“自分の国の水”を 持参して、それを一つの器に入れて 飲むというもの。 ハワイの儀式に則って セレモニーは厳かに行われた。 そしてそのまま大会スタート。 今大会には、世界中から48人の選手達が参加している。 第1ラウンドは16ヒートで、それぞれ3人の選手で戦う。初回ラウンドは基本的に敗者なし。 1位になった者は勝ち抜け、そのまま第3ラウンドにスキップできる。 ここで2位、3位になった者が、第2ラウンドを2人で戦うのだ。 この日はスウェルも入り、4〜6フィートくらいの波。完璧なコンディション。 このところ、海で当たり前に見かけていたプロ達も、大会となるとさすがに気合が入っている。 目の覚める様なライディングに、ただただ溜息がもれるばかり…。
今回の参加者の中でも最年長。 私の今乗っている板(Wataman)の シェイパーでもある。 思わず応援にも力が入るというものだ。 第1ラウンドを惜しくも2位で通過した クリスは、第2ラウンドを難なくクリア。 同じく隣人(?)のノア・島袋も、 そつのないライディングで 第3ラウンドに進出を決めた。 ショート・ボードはともかく、本格的なロングボードの大会を観るのは初めての体験である。 特に第2ラウンドからの2人での戦いは、なんだか“さしで勝負”といった感じで非常に楽しかった。 先に1本乗った者は、必然的に次の波はプライオリティ(優先権)を、もう1人に譲らなければ ならないルール。 乗った本数の中で、最も高い点数の2本の波の平均で、点数の高い方が勝ちとなる。 ショート・ボードの大会とは、また一味違った面白さがある。 日中はかなりの日ざしで、風が無いと日よけのテントの下でも暑い。 バテそうになったら、ひとまず部屋に戻り一休み。バルコニーから、ビールを飲みながら試合観戦。 ヒート表や大会の模様は、隣人のクリスやノア、そのまた隣の大会本部から逐一聞けるし…。 気になる対戦は下に降りて観戦。なんと贅沢なことよっ! まさに極楽観戦。
選手はほとんど同じコンドミニアムに滞在しているので、夕方になると、 また、目の前のポイントでスーパー・セッションが繰り広げられるのであった。 翌日24日。波は少々サイズダウンしたものの、第2ラウンドの続きからスタート。 そしてそのまま第3ラウンドに突入。 ここでもクリスは大健闘!第4ラウンドに進む。残念ながらノアは現世界ランキング1位の コリン・マクフィリップスと対戦して敗れる。同じくラスティ・ケアウラナも、 ボー・ヤングに敗れてここで敗退。
セットの間隔も広くなっていった。どうやら波選びが重要なポイントになってきたようだ。 しかし、つくづくプロは上手い。普段見慣れたポイントなので尚更そう思うのかもしれないが、 「へぇ〜ここはそういう風に乗れるんだ…。」と、目からウロコである。 しかし、波はあっという間にサイズダウン。 普段、我々でさえ海に入らないサイズまで落ちてしまった。おまけに風はオンショア。 それでもプロは乗るんだ、これが! しかも、彼らが乗ると、波が良く見えてくるから不思議。 波数に恵まれないまま、クリス、惜しくもここで敗退。この日は第4ラウンドまでで終了となった。 そしてそのまま波が無いこと4日間。 毎朝、海辺の大会本部のスピーカーから流れる放送で、試合が行われるかどうか確認する日々。 この間、プロ・ロングボーダー達は、各自サーフマガジンの取材や撮影に追われる者もいれば、 海辺で釣りする者もいたりと、かなりリラックスムードだった。 「ロックス」、「オールドマンズ」、そして「ジッパーズ」までがプロだらけ。 しかも、彼らは本当にサーフィンが好きなのだろう。ほとんど1日中、暇さえあれば海に入っている。 必然的に、我々は早朝か夕方に入ることになるのだが…。それでもやっぱりプロが入ってる。 ある夕暮れ時のこと。「ロックス」のポイントに入っているのはアキヤンとボー・ヤング だけだったことがある。 話しているうちに、ボー・ヤングがバイロンベイに住んでいることがわかり、 盛り上がったりして…。 そんなこんなで、日々は過ぎ、とうとう30日。大会が再開された。 大会最終日となった30日。波はイマイチだ。 現金なもので、自分が入るとなると躊躇するが、大会観戦なら話は別。 波は大きければ大きいほど観がいがあるというものである。 しかし、ウェイティング期間は31日までで時間がない。太平洋側の「セリトス」に移るという噂もあったが、 結局そのまま「ロックス」で行われることになった。 この日はクォーター・ファイナルからのスタート。 波に恵まれないままも、熾烈な戦いが繰り広げられた。結局、勝ち残ってセミファイナルに進んだのは、 ジェイ・バーンズvsコリン・マクフィリップス、ボンガ・パーキンスvsボー・ヤングの4組。 その中で、見事ファイナルに進んだのは、コリン・マクフィリップスとボンガ・パーキンスであった。
「ベスト・ノーズ・ライディング賞」や 「ベスト・マニューバ賞」など、 5項目にわたる賞を競って、 希望選手参加のエクシビジョンが 行われ、大いに楽しめた。 それぞれの賞金は、わずか$100。 ほとんど洒落のようなもんか…? ファイナルでは現世界ランキング1位の コリン・マクフィリップスと、今年世界ランキング 1位になる(すでに今年の総合ポイントで 1位が決まっている)ボンガ・パーキンスとの一騎打ちとなった。 両者とも素晴らしいライディングであったが、結果は…??
残り2分を残しボンガ・パーキンスが海から上がってしまったくらいである。 ようするに、それ以上やってられないくらい圧倒的な勝利だったということ。
見事、優勝賞金$15000を獲得した。 (ショートに比べると格段に安い!) うれしく楽しくワクワクした、第11回、 世界ロングボード・チャンピョン・シップは、 これにて終了。 大会終了後、プロ・ロングボーダー達は 1人帰り、2人帰り… そして、とうとう 誰もいなくなってしまった。 目の前のポイントも、コンドミニアムも静ずけさを取り戻している。まさに“ツワモノ共が夢のあと”状態。 再び静かになった日常の中で、それにしても、随分得がたい経験をしたものだと感じているのであった。 |