Vol.52 『海で見る風景』
  2002年9月1日

ここのところ、毎日、少々興奮気味である。
…といっても暑さのせいでもないし、変なもん食べたわけでもない。
ポスター
大会ポスター。
理由は、これ!!

8月21〜31日の間、
世界ロングボード・チャンピョンシップ
の最終戦が、ここロス・カボスで開催
されているのだ!!
コンテスト会場はコスタ・アスルのポイント「ロックス」
そう、我がコンドミニアムの目の前である。
ラッキー!!!

そもそも、こちらに来てから初めてこの大会の事を知り、
それも目の前でやるらしいと聞いて、
今か今かと楽しみに待ちわびていたのだ。
大会1週間前になると、徐々に人が増え始め、中には明らかに上手いプロらしき人々が
目につくようになってきた。こうして、にわかに“海の風景”が変わってきたのであった。

人にはそれぞれの日常生活の中で、その人だけに見えている風景や空間というものがある。
ある人にとってはそれは通勤途中の道のりだったり、職場の空間だったり、
家庭の風景だったりと様々だ。
そういった意味で、サーファーには、“海の風景”というものが存在していると思う。

ほぼ1年余り旅して廻っているので、いろんな国の海の社会に、ちょっとづつおじゃましている。
マウイ、オアフ、フィジー、オーストラリア、カウアイ、…。
国が変われば人や海の色が変わり、ポイントが変われば波質も変わる。

“メローな波にメローな人々”というポイントもあれば、“ホローな波にホットな人々”というのもある。

同じポイントでも、朝、午後、夕方で、また全然違った風景に変化していったりするのが面白い。
初めて足を踏み入れる陸地にワクワクする様に、初めて触れる海にもワクワク、ドキドキする。

しばらく同じポイントに通っていると、ローカル、ビジター、上手い奴、下手な奴、
おじさん、おばさん、子供、若者、ガツガツしてる人、おっとりしてる人… と
本当にいろんなタイプの人間とも触れ合う。
人間の五感とは不思議なもので、目を閉じてしばらくそのポイントの事を思い出そうとすると、
その波質、人の数、天気などがイメージとして浮かんできたりする。
きっと海に触れてる時間が長い人ほど、いくつもの“海の風景”というものに出会っているのだろう。

メキシコの波(といっても、我々が知ってるのはロス・カボス近辺だけ)は、パワフルだ。
海の水も透明で、波を滑っている時に下の岩がきれいに見えるし、水の量も多い。
人の数もまだまだ少ないと思う。それでも、人間というものはやはり慣れる動物らしい。
しばらくすると、当初感動した風景も、いつの間にやら日常のありふれた風景に
変わっていくのが悲しい。
OXBOW
今大会のメインスポンサーは
OXBOWだ。

そんな中で、このロングボードの世界戦は、
非常にインパクトのあるものだった。
コンテストそのものもそうだけれど、
それ以上に、環境がガラリと変化
したのだ。つまり、“海の風景”の中に、
プロ・ロングボーダーというのが、
いきなり増えたのである。

おまけに、我等の滞在しているコンドミニアムに
大会本部が置かれた為、
あっという間にプロ・ロングボーダー達が集まり、コンドミニアムはサーファーだらけとなった。
おかげで、マウイから参加しているクリス・ヴァンダーボルトも探す手間がはぶけて
よかったけれど…。
クリスとは大会開催2日前に、部屋を出たらバッタリ。ウソみたいな再会。
なんと、我々の隣の部屋に引っ越してきたのだ!! 再会を喜び、早速夕食を一緒にとる。
隣の人
隣の部屋はクリスとノア島袋。
そのまた隣が大会本部。
ノア
NOA島袋。若干19歳。
海から上がって、サーフボードごと
プールにドボン。カワイイ。

目の前のポイントは勿論の事、お気に入りのポイント「ナインパームス」でも、
“あきらかに上手い人々”を見かける様になった。我々2人以外は残りは全部プロといった具合だ。
普段人が少ないだけに、余計目立つ。下手な方が目立つくらいだ。

ライディング1
華麗なライディング。
ライディング2
オールスター夢の競演?

事態はさながら、“オールスター夢の競演”といった感じ。
当然波はなかなか取れない。だって、波待ちで隣にいるのがボンガ・パーキンスだったり、
ボー・ヤングだったりするんだよ!!もう、乗れるわけないっ。
それでも、プロのライディングを間近で見れるというのは、もの凄い体験だ。

ボードのロゴ
サーフボード。
少年
この子もプロ。

なんというか、あなたがもし野球好きの人だとしたら、
いつも練習しているグランドで、オールスター・ゲームが開かれるようなもんである。
10日間余りの間、毎日そこでプロ野球選手と一緒のグランドにいる状態は、いかがなもんか?
TVや雑誌の世界ではなく、それは、等身大のイチローを見る感じに近い。
別にプロを目指してないエンジョイ野球でも、かなりの刺激になるに違いない。

ボー・ヤング
Beau Young。
ワイプアウト
ワイプアウト。

それにしても、皆本当に上手い!
今までも上手い人はよく見てきたが、それよりも、もう一段階レベルが上。やはりプロなのだ。
その華麗なライディングを目にしたら、つい、「もう、お金とっていいよ。君達は。」と言いたくなる。

テイクオフの早さなんて感動もの。「えっ、そこから行くの?」っていうぐらいギリギリの所からテイクオフ。
そんでもって、いきなりハング・ファイブ。な〜んていうのは当たり前。
そのままオフ・ザ・リップにカット・バック、そのまま波を乗り継いで、またまたハングテン…ともう、
自由自在である。

近くで見ていたら、“手放しの自転車に乗って、急斜を駆け下りて、そのままスラローム…。”といった感じ。
もう同じ人間とは思えない! 当たり前だけど、プロはやっぱり凄かった。
ロング・ボードってこうやって乗るものだったのね…。本物を見てこそ初めてわかる事実。
サーファー
プロサーファーを観てるのも
これまたプロ。

冷静考えると、メゲそうになる。
一体、あと何年経ったら、
こんな風に波乗りできるように
なるのだろう…?
きっと、今生は無理だろうなぁ。

それでも、海を見ているだけで、
すごく勉強になる。

すべての波を、おいしそうに最後までたいらげていくプロ達のライディング。
彼らが乗ると、どんなショボ波も、良い波に見えるから不思議である。
きっと、彼らに見えている“海の風景”は、私に見えている世界とは明らかに違うものなのだろう。

朝焼け
大会当日の朝焼け。
素晴らしく美しい満月の夜が過ぎ、
夜通し波の音が聞こえていた。
スウェルは万全だ。

朝日が昇ってきた。
大会のスタートだ。

さて、気になる大会の模様は…?
それは次回に続く。

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