Vol.66 『Ostional』
  2002年11月17日

別名『中米の花園』と呼ばれるコスタリカ。この国の主役は動植物や昆虫だ。
オーストラリアをジャングルにした様なスケールの自然は、動植物の宝庫。
ここにいると、蝶々の数の方が人間より多いのではないか? と思う時さえある。
そんな大自然の中に人間がちょっとだけ住んでいる平和な国。

ここに来て以来、生まれて初めて見る動植物の数が異常に多い。
ふと気が付くと日常の視界の中には、必ず、初めて見る鳥や動物や昆虫が
入っている。これは一つの驚きだ!!

モルフォ蝶(世界で最も美しいと言われている青い蝶)やTUCANと呼ばれる
極彩色の鳥、5秒間くらい静止画像で空を飛ぶトビウオ、集団で海を泳いでいく
ウミガメの大群、ハンマーシャーク、緑色のヘビ… などなど挙げたらきりがない。
その辺のゴミ箱をあさっているのがアライグマだったりするし、リス、豚、牛、馬などは
野生でそこら辺中にいる。イグアナなんて見すぎて今ではゲッコーぐらいの存在だ。

自然が近いという事は、イコール文明が遠いという事。
気持ちいい所に行けば行くほど、“便利さ” からは遠くなっていくのはしかたがない。

Playa Ostional (オスショナル・ビーチ)は、一応 サーフポイントだ。
ノサラの波が多き過ぎる時は、ここに来ればほど良いサイズの波が立っている。
しかし、ここに入れる時期は限られている。
それは… “亀の来ない時期” だけだ!

そう、ここは世界的に有名なヒメウミガメの産卵地。『arribada(アリバダ)』と呼ばれる、
何千頭ものヒメウミガメが卵を産みに来るビーチなのである。
だからこのビーチでサーファーは見かけない。
arribadaの時期に訪れる
4輪バキー
これがATV(4輪バキー)。
エコ関係者と村人が住んでいるだけ。

この村へのアクセスは悪い。
特に雨季の時期は、
何本もの川が氾濫して、
4WD車でも難しい時がある。
(川が膝下までなら行くこと可能)
ノサラに滞在している我々はもっぱら
ATV (All Terrain Vehicle) を利用している。
道路状況を考えたらこれが1番。


川
これが問題の川。
よく車がハマッてるのを見た。
奥に見えるつり橋を渡ろう!
つり橋
つり橋。これから渡るところ。
ギリギリかぁ〜?!
Playa Ostional は国立野生保護区内に存在している。
ようするに緑濃いジャングルの中に村があると想像するといい。
川とブラック・サンドビーチと緑だけ。観光地とは程遠い、
川のせせらぎと美しい鳥の声。自然そのままのところ。

朝顔
村の中に咲いていた朝顔。
こんなに大量に咲くものなんだね。
川辺
至る所にある川。
見たこともない鳥が飛んでいる。

村の中心にはお決まりのサッカー場があり、その周りにSODAが1軒と、
青空教室の学校があるだけで、これといった店もない。
さすがにここにはインターネット屋もないし、TVがある家も稀だ。
当然夜は真っ暗。街頭も無い。この村で育って不良になるのは難しいと思われる。

たまにジャングルの果てしない小道を、子供達が歩いていく姿が見えるが、
見渡す限り家など無いのにどこまで歩いていくのだろう? と不思議になる。

少年達
学校が終わった途端、
ATVが物珍しかったらしく、
子供達に取り囲まれる。
SODA
村1軒のSODA屋。
予想通り、大したもんは売ってない。

村の主な産業は亀の卵を出荷すること。昼間に行くと亀の卵を巨大なナイロン袋に
パンパンに摘めているのが見れる。1個いくらだったか忘れたが、驚く安さだった。

ヒメウミガメの卵は熱を通しても固まらないらしく、鶏の卵とかと混ぜて使うのが
普通らしい。だから、ヒメウミガメの卵の目玉焼きとかゆで卵とかは存在しない。
村人はもっぱらトマトジュースと割って飲んでいる。(どう考えてもトマトジュースだけ
飲んだ方がおいしかろう…。)

アリバダ自体は、通常7〜11月の間と言われているが、
現地の人間は、実は毎月来るのだと言う…。真偽の程は定かではないが、
この現代から切り離された村を見ていると、それも有りか?と思えてくる。

村にはレストランが1軒と宿屋が2軒存在しているが、お薦め出来る所は無い。
ある日の事。オスショナル村に遊びに行ったがいいが、夕方からとんでもない雨が
降り始め、とても川を渡れそうになく、仕方が無く泊まったのだが…。

安宿
「Cabinas GUACAMAYAS」。
天井
天井はトタン…。
これで1泊1500コロン(6$)は高かろう。
部屋には水シャワーとトイレ。ベッドが2つあるだけ。
天井はトタンで、雨が降ると落ちてくるか? と思うほどもの凄い音がする。
おまけに夜は蚊の猛襲で、一晩中格闘!! 結局、ろくに寝れなかった。

それでもジャングルの暗闇の中、夜空には想像を絶する星空も見れるし、
謎の動物の遠吠えが聞こえたりと迫力満点。
“カメが来るビーチ” は、自然好きの人には手付かずで面白いだろう。

手付かずの自然は好きだけれど、正直なところ、気持ちよく過ごすには
少しは “手が付いて” 居た方がよいなぁ… などと思ってしまうのは軟弱だからか?
“気持ちいい” と “便利さ” のバランスは難しい。
それでも、どこかにそんな場所があるのでは? と思って探してしまう。
まったく人間っていうのは欲が深い生き物だ。

さて、そんな村のビーチ沿いには数軒の家があるのだが、
そこに住む子供達は野生児そのままで生きている。

親父ガキ
命名 “オヤジガキ”
こいつも大きくなったら
カメの卵を拾うのだろうか?
ビーチの前に住んでいる少年。
顔がオヤジ風で全然可愛くない。
可愛くなさ過ぎて憶えてしまった。
初めてあった時、カス(グアヴァ)の
木の実にその辺の枝をぶつけて落として
食べていたのにビックリ。

次に会った時には、大きな木にスルスルと
得意げに登って行き、驚く我々を見て、
“ニヤリ”と笑う。…その笑顔がまた可愛くない。
見慣れない外人の我々が、珍しかったらしく、
いつもスペイン語でくったくなくしゃべりかけてくる。
こいつは絶対TVは見ていないだろうなぁ…。

このコの頭の中には、テレビゲームの攻略法も無いし、受験戦争の余波も無い。
自然の中にただ生きている。小さい頃からあらゆる情報を詰め込んできた我々と、
この村でのんびり生きているこのコに見えている世界観はまったく違う。
どちらが豊かな世界観なのかどうかはわからない。

コスタリカで過ごして2ヶ月弱。
ありあまる自然の中で、ようやくこのコが見て感じている世界に触れだした。
人間が造った物が極端に少ない場所。自然しか存在しない場所。
その中には、図鑑で見るような動・植物や昆虫が立派に生きていた。

花と自然と人々が平和に暮らすオスショナル村。

あの“オヤジガキ”が大きくなる頃も、まだカメは来ているのだろうか?

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