Vol.68 『Mal Pais & Santa Teresa』
 2002年12月1日

ニコヤ半島南には、無数のサーフ・ポイントがあると言われている。

Mal Pais(マルパイス)Santa Teresa(サンタテレサ)は、
旅の途中にたまたま寄る所ではなく、ここに来る事自体が目的の人しか来ない。
なぜなら、ここから海沿いを北上する道はコスタリカでも最悪の道として名高く、
時として“インポッシブル・ロード”になるからだ。

勿論、ローカル達はいつでも道の事は「大丈夫だ」と保証してくれるが、
それを信じて動いて迷った末、結局辿り着けないという話も少なくない。
悪路のおかげで(?)、この辺りの海は、長い間シークレットビーチとして存在していた。
ここ数年でかなり人が増えてきているらしいが、それでも未だに
“インポッシブル・ロード” であることには変わりはない。

悪路を越えてようやく辿り着いたMal Pais
しかし、最もヒドイ道は町のメインストリートだった…。

牛達
対向車じゃなくて対向牛。
看板
町の入り口。
左に行くとMal Pais
右に行くとSanta Teresa
道の悪さはとにかく半端じゃない!
雨季の間にガタガタ&ボコボコに穴が空きまくった道が、乾季になって乾燥して
固まり酷いことになっている。まるでマンガのごとく凸凹に穴が空いた道は、
運転していると、体がロデオドライブのように前後左右に飛び跳ねて大変だ。
「ムチウチ」や「痔病持ち」の人なら地獄のような道になることであろう。

なんたって、歩いてる人も自転車も車も、皆同じスピードなのだ。
神経衰弱のような道に、町に入るなりいきなりメゲる。
乾季でこれなら、雨季はどんなことになるのか想像するのも恐ろしい。
ローカルの「もうすぐ道も直るよ」という言葉を信じて、まずは宿探し。

ハイビスカス
まるで雑草のように咲きまくる
ハイビスカス。
道
街中の道。これでも
土を盛って直した後なのだ!

予定していた宿「Tropico Latino」が満室の為、とりあえずビーチ沿いの
「Ranchos Itauna」に2泊して、ゆっくり他の宿をチェックすることにした。
ここはオーナーがサーファーでポイントにも詳しいので、いろいろ教えてもらう。

通常Mal Paisと呼ばれているのはPlaya Carmenのことで、
ここから隣のPlaya Santa Teresaまでの数kmの間に、全部で11個もの
サーフ・ポイントがあるらしい。

だが、想像以上の悪路で、車で自由に動けず、ポイントチェックもままならない。
これではいちいち海に行くのもストレスになる!
この辺りでは、Santa Teresaの波が一番形がキレイで気に入ったので、
そこにもっとも近い宿を探して決めた。ここでしばらく落ち着くことにする。

スーパー
街にはミニスーパーが3軒あり
必要最低限のものは手に入る。
ゴミ
ゴミ置き場。
この高さは動物よけか??

カードも殆ど使えないこんな場所に、所持金も少ない(前回お金を盗まれた!)
状態で来てしまった我々。それに輪をかけて悪路の現実を知り、
すっかり調子が狂ってしまった。乾季の突き刺さるような陽射しも、
動き回るには強すぎて体も疲れ気味。

「お金がない」ということは、イコール「選択の自由がない」ということ。
何やるにしても、いちいちお金の計算をしなくてはならず、本当に面倒だ。
特に旅をしている時なら尚更そうだ。それを考えている間、
楽しむ時間が減ってしまう。

…と、都会だったらグレでいるところだろうが、ここはジャングルの中。
幸か不幸か、お金で問題解決出来ない世界である。
ここでならなんとか楽しめるかもしれない…? そう気を取り直す。

まずは最寄のミニスーパーに買出し。
このジャングルと悪路の中で生き抜くには、 “完全自炊” しかない! とばかりに
最低1週間は外に出なくても死なない程度の食材や飲み物を買い込む。
サーフィンのポイントには歩いていけるし、これで当面は大丈夫。

スムージー
左がレンタルボード屋。
右がリッチーがやっている
「インターネット屋&洗濯屋
&スムージー屋」。
リチャード
通称リッチーことリチャード。
12年もこの地に住んでいる。
口癖は『COOL !!』。
“コスタリカの長友清”と命名。

こうしてほとんど“引きこもり”のような毎日が始まった。
唯一出かける所は、町に1軒しかない「インターネット屋」。リッチーがやっている
この店は、他に「洗濯屋」と「スムージー屋」も兼ねている。

3台あるPCの中で、日本語が読める(当然打てない)PCは1台だけ。
しかも恐ろしく遅い…。コスタリカ自体にサーバーが1つしかないらしく、
行ったはいいが故障して使えないことも日常茶飯事。
大体、リッチーが波乗りしてる時は店自体が空いてないので、メールも
運が良ければチェック出来る程度だ。このメールもいつHPに立ち上がるのか
見当も付かない。それでもこのジャングルの中では貴重な空間で助かっている。

自然以外なんにも無い所だが、波だけは豊富にある。
Santa Teresaから北には(例のインポッシブル・ロード)、海沿いに無数の
未開のポイントがありそうだ。

Manzanillo
Playa Manzanillo
エルモサ
Playa Hermosa
(注) ハコの近くのエルモサとは違う。

Santa Teresaを4km(ただし道は極めて悪い!)北上すると「Playa Hermosa」
があり、その奥には「Playa Manzanillo」がある。どちらもリーフ・ブレイクと
ビーチ・ブレイクの両方がある。人は極端に少ない。
我々が見た限り、この2つのビーチ間に割れているたくさんのブレイクの中で、
見かけたサーファーはたったの1人だけだった!
TATTOMAN
全身筋肉の彼は、キックボクシングの先生。

小さな町(というか村)なので、
道ですれ違う人も大体同じだ。
長くいれば必然的に
全員知り合いになるであろう。

最初は悪路にやられて、
見えなかった町の雰囲気も、
1週間が過ぎる頃、ようやく見えだした。

到着以来、我々のもっぱらの話題は世界状況より“道路状況”であったが、
それもある日とうとう解決する。

今まで生きてきて、工事現場に出会ってこんなに喜んだことは
工事
『お待ちしてました!』
工事のトラック。
かつてなかっただろう。
工事と言っても、凸凹道に土を盛って、
その上から砕いた岩を敷くだけなのだが、
これで全然違う。
これまでの道から考えれば、舗装道路に近い!

「ガガガガガ〜〜〜ッ」と鳴り響く
騒音にさえ心が躍る。
巨大なトラックが何台も来たかと思うと、
あっという間に道は直っていった。
“やる時はやるぜっ” というコスタリカ地元民の、
ハイ・シーズンに向けての意気込みというものを
改めて感じた出来事であった。これでようやく地域の人々とも交流できるというものだ。

道が直ったら、ここはパラダイス。

Mal PaisSanta Teresaは隣町。町というより村と言ったほうがぴったりする。
Tの字で行き止まりの道を、左に行くとMal Pais、右に行くとSanta Teresa
いう、単に1本の道上にある隣村だ。

Mal Paisの奥はCabo Blanco野生保護区で、ジャングルの行き止まり、
Santa Teresaの奥にはPlaya Coyoteに至るインポッシブル・ロードがあり、
つまりここは、ある意味で隔離された空間として残されていた場所なのだ。

村にはローカルがたくさん住んでいて、英語はぐっと通じない。
出会う外国人は(観光客も含む)、ほとんどがスペイン語が堪能で、しかもサーファーである。
ここ3年で北米&カナダから移住する外国人が増えてきたらしい。それでも数kmに渡る
ビーチには多くのブレイクがあるし、海でも町でも、混雑とは無縁である。
人の数も少なく、皆のんびり暮らしている。
思わず “オールド・コスタリカ” の世界にレイドバックする。いい感じだ。
どうやら望んでいたコスタリカのイメージは、ここだったような気がしている。

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