Vol.69 『極めて原始的な生活』 2002年12月4日 昨日の夜は、窓の外を飛びまわる蛍を見ているうちに寝てしまった。 早朝7:00。鳥の鳴き声で目を覚ます。 バルコニー&台所に出てコーヒーを入れ、ボーッと飲んでいると、 目の前を数匹のリスが通り過ぎていく。 ハチドリも花の蜜を吸うのに忙しく飛び回っている。 どうやら皆さん食事の時間らしい…。 天井を見上げると、コウモリの “二郎” も戻ってきている。 そろそろ海にでも行くかなぁ…。
Santa Teresa(サンタテレサ)のこの宿に居ついて2週間以上になる。 ここは海から探した。Mal Pais & Santa Teresa間に宿はたくさんあるものの、 道路事情からオン・ザ・ビーチの宿を探していたのだ。 だからお気に入りのポイントの目の前に、「FOR RENT」の看板を見つけた時は喜んだ。 中に入るとそこは1軒の家だった。一応プールも付いているが、 水は落ち葉だらけで入れそうもない。庭は荒れ放題。洗濯物がそこらじゅうの 芝生に置いて干してあり、コスタリカ人の家族が住んでいる気配。 カタコトのスペイン語で『部屋が見たい』と伝えると、無愛想なおばちゃんが、 家の2階の角部屋を見せてくれた。ホットシャワーでトイレも台所ついている。 ちょっと暗いが、部屋もギリギリのレベルでOKだ。 早速借りようと、値段の交渉をするのだが、これがまったく言葉が通じない。 困ったおばちゃんは電話機を持ってきて話せという。電話に出たのはオーナーで 英語が通じ、1泊30$で無事交渉成立。以来、ここに落ち着いている。 どうやら住民だと思ったコスタリカ人家族は、使用人で留守を任されているだけ。 オーナー不在の為、家の管理はすっかり手を抜かれ、使用人の家と 化していたのであった。我々が入ったせいで、にわかに庭の手入れが始まって いたが、ここにきて急にピッチがあがっている。今週オーナーが帰ってくるらしい。 ボロ雑巾のように汚れていた飼い犬や馬も、きれいに洗われていて驚いた。
朝起きたら、まずはサーフィン。お昼を食べたら昼寝して、 そんでもって午後またサーフィン。サンセットと共に海から上がって夕飯。 夜の9時には睡魔が襲ってくる。zzzz。 毎日やっていることいえばこれだけ。 TVも雑誌も本もない。 旅先でもらった日本語の本も3回は読み直したし、すでに活字中毒の状態だ。 もし今ここに「六法全書」があれば読破できるに違いない。 それくらい飢えている。 ここにきて、手持ちのCDにも聞き飽きた。 おまけにお金もないときたら出歩くことも出来やしない。 もう、ひたすらダラダラする以外にやることがないのだ!! 食べて寝て波乗りするだけ、あとは自然の中でボーッとしている原始的生活。 この宿で見る動物の数は多い。 馬、犬、猫、鹿、リス、サル、イグアナ、コウモリ、鳥各種…。 モロフォ蝶やカブト虫、蛍、バッタ、蛾、蜘蛛、蜂などの昆虫の数も凄い。 台所&バルコニーが半分アウトドアなので、山小屋に毛が生えたようなもので ある。自然が身近なのはうれしいが、困るのは“アリ”だ!!
蚊やハエ対策の為購入したハエ叩きがあるのだが、今はもっぱら“アリ叩き”として 活躍している。コスタリカに来て以来、アリにもたくさんの種類があることに 気づいていたが、こいつは危険!噛まれると痛いし腫れる。 しかも1回叩いたぐらいでは死なない。“アリ”という昆虫の概念が変わるくらいの スモールアニマルなのである。よく部屋の中を歩き回っているので注意が必要。 ここに移って以来、体中虫に刺されている。果たしてこの歳でこんなに虫に刺され まくってよいものか…? と疑問に思うが、刺されるのだからどうしようもない。 “自然と共生する”というのは、思っているより“痒いこと”なのだ。
今朝は、台所に置いていたパンが謎の動物に食い散らかされていた。 貴重な食料だったのに…。ジャングルの生存競争は厳しい。 生ゴミもオチオチ捨てられないので、必然的にきちんと片付けもするようになり、 まるでエコの人に褒めてもらえるかようなライフスタイルだ。 それでも自炊生活は意外と楽しい。 水は綺麗だから飲めるし、野菜や果物はオーガニック(有機農法)で新鮮。 (だって今時日本で、虫付きの野菜が買える所はそうないでしょう?) つまり何を作ってもおいしい!!ということなのだ。 スーパーに卸している八百屋&果物屋のトラックを見つけて以来、食材も そのトラックから直接買うようになったので安く上がって助かっている。 そんなこんなの原始生活なのだが、やはりうれしいのは海が近いことだ。 裏庭の先はもうビーチ。気が向いた時に波乗り出来るのが最高だ。 しかもここは毎日波があるし、人も少ない。 波チェックに行くと、『ただいま、ポイントにはペリカン1匹』というのもよくある。
そういえば、昔、“南国でのんびりする” というのが夢だったことを思い出す。 でも実際はそれを実現することは難しかった。 観光もしたいし、ショッピングもしたいし、プールサイドで日焼けもしたいしと、 行く国ごとにやりたいことや、やらなきゃいけないことが多いものだ。 ところがここには観光も買う物もないし、すでに黒いので日焼けも必要ない。 あるのはジャングルの緑と、南国のフルーツ、新鮮な野菜、夕日、波だけ。 でもよくよく考えたら、これ以上何がいるというのだろう? 自分が好きなものは全部揃っている。 やっぱり、ここはパラダイスに違いない。 そうかぁ、“南国でのんびりする”夢が叶っているんだ…。 ポリポリ… と虫刺されの足を掻きながら、 不思議でおかしい夢の実現と現実を同時に体感したのであった。 |