Vol.74 『Port Antonio (後編)』
 2002年12月30日

「お前はジャーク・チキンは好きか? このソースはスペシャルなジャーク・ソースなんだ。
 えっ? いらない? なんでいらない? 嫌いなのか? ・・・・etc、
 今どこにステイしてる? いい所を知ってるぞ。なんだったら今から行くか?
 いくら出せる? えっ? 必要ない? じゃぁラフティングはどうだ?
 ガンジャ欲しいか? ブルー・ラグーンのいかだ乗りは? ・・・・etc・・・・。」


男は延々しゃべり続けている。
“あ〜〜〜そうだった… JAMAICAはこれが面倒なんだった…。”

13年前の苦い思い出が蘇ってくるが、時すでに遅し。
声を掛けられ振向きざまに名前を聞かれ、つい答えてしまったのが運のツキ。
JAMAICA訛りの英語が聞きにくく一瞬真剣に聞いてしまったこともあるのかもしれない。
永久に続くかと思われるセールス・トークが始まってしまった。

なんせ平和なコスタリカから、いきなりここである。まだ頭が現状に追いついてない。
コスタリカでは「人に話しかけられたら答える」というのは常識だし、それでトラブルが起こる
こともない。見知らぬ人とでも、平気で身の上話する国である。
でもここはJAMAICAだった!!

はっきりと「No man !」と断っても “つきまとい” は終わらない。
せっかくローカル・サーファーと話が盛り上がっているところだったのに最悪だ。
ローカル・サーファーも困ったようなどうしていいかわからないような顔をしている。

「ロング・ボード向けのポイントある?」男を無視して喋ることにする。
「あ〜それなら、“X'mas Bay” がいいよ。リーフ・ブレイクみたいな場所で、キレイな波で
 ロング・ライドできる…」
とローカル・サーファーが話している途中でも、その男は平気で、
「サーフィン? サーフィンがしたいのか?
 サーフィンなら、レンタル・ボードがあるぜ。いくらなら払える。
 お前が払える値段を言うなら俺も値段を教えてやる… (延々) … etc。」


などと、頼んでも聞いてもいないことに対して、意味不明の商売方法でぶつかってくるので
話にならない。大体“ビジネス”とかいう言葉の意味自体わかってないんじゃないの?といった
感じだ。“ビジネス”と「ゆすり」「たかり」を同義語だと思っている輩も多い。

男にたびたび話の腰を折られて、うっとうしいことこの上ない。
結局、ローカル達ともゆっくり話せずその場を立ち去ることになってしまった。
立ち去る間際まで、背後で男が喋りながらついて来る。最後は捨て台詞まではいていた。
なんだかイヤな気分にさせられて終わる。
そう、JAMAICAではこれが面倒くさいのだ!!
久しぶりにリアルに厭な感じを体感してしまった。体が弱っているので、尚更疲れる。

すぐに感じたのは、どうやらここでは “日本人は舐められてる” らしいということだ。
道を歩いていても、「ジャッパニーズ!」と、なんの尊敬もこもってない捨て台詞のような
言い回しで声を掛けられることが多い。ガイドブック等には “この国では日本人はお金持ち
だと思われているので気をつけましょう” などと、持ってまわった言い回しで書いてあるが、
なんのことはない。たかられてるのである。

確かにジャマイカンは迫力ある。肌の色もアフリカン・ブラックだし、図体もデカイ。
あの風体であの迫力で迫られれば、ついお金を払ってしまうのは仕方が無いのかもしれない
が、不必要なお金を使いたくなければ、しっかりしたほうがいいと思う。
“「お金持ち」だと思われてるのに尊敬されてない”なんて、舐められてるとしか言いよう
がないではないか! 旅に出て初めて、日本人であることを面倒くさく感じた。

勿論、たかられてるのは他の外国人観光客も同じである。
それでも尚、そう感じるのはポート・アントニオに滞在する日本人観光客が、
他の大きな町に比べて極端に少ないせいもあるのかもしれない。目立ち過ぎるのだ。

たとえホテルの従業員でも油断は出来ない。
従業員の中で仲良くなった1人に、『いかだ下り』のことを尋ねると、それだったら後で自分が
連れてってくれると言う。随分サービスがいいんだなと思って車に乗ってしばらく行くと、
「ガソリン代やタクシー代を○○渡せ」と言い出す。あ〜あ。
「それならいい。引き返してくれ。」とこちらが言うと、返ってくる言葉は、
「ノー・プロブレム!」 (出た〜!!)
“私にとってそれは Big Problem なんだよっ!” と言いたくなることが多々ある。

毎年JAMAICAに来ているアメリカ人のポールにそのことを話すと
「あ〜よくわかるよ。そういう時はリスペクトのポーズ(こぶしをグーにするやつ)で、
 “No thank you, but Respect”って言えばいいんだよ。」
と教えてくれる。
今度やってみよう。

Boston Bay』 の先には、サーフ・ポイント『Long Bay』がある。

CoolRunnings
レストラン&バー『Cool Runnings』。
ローカル・サーファーのマーティンがいるよ。
LongBay
Long Bayの左奥のポイント。

広いビーチが見えてきて、このレストランが目に入ったら、そこに車を止める。
ここがちょうど『Long Bay』の真ん中だ。うっとうしい奴もここには見当たらない。
ショア・ブレイク気味の波が至る所でブレイクしている。海に向かって左端が一番人気のポイント
らしい。ボトムはリーフだが深そうなので大丈夫みたいだ。

ローカル・サーファーのマーティンが、連れてってくれると言うのだが、
鼻水ズルズルで海に入るのはまだ無理そうだったので断る。
そのまま教えてもらった『X'mas Bay』に向かう。
車で海沿いを10分程走ると左側に「Runch ○○」というバー見えたらそこが『X'mas Bay』。

X'mas Bay
X'mas Bay
足元
透明度抜群!!

リバーマウスで波が立っている為、水は多少冷たい。海に向かって左端と右端で波が
ブレイクしている。透明度は抜群。他のポイント同様、この日は波が小さかった。
しかもロータイドでリーフが見え隠れしている。

体も疲れ気味だし、ここで冷たいものでも飲もうとバーに入る。
そこで出会ったのがスタンフォードだ!

Stanford
Stanford
やさしいラスタマン。
あまりやる気のなさそうなバーを
経営してるCoolなラスタマン。
レゲエ・ミュージシャンで、
昔は歌も歌っていたらしい。
片腕が無いことも、彼の人柄の前では
まったく問題にもならない。
お互いに話がつきず、すっかり意気投合!!
以来、よく遊びに行くようになった。
最高にやさしい人である。

ちょっと外出してホテルに戻ると、
かなり疲れているのに気がつく。
つくづく「体力」というのは大事だなと思う。「体力」が無い時は、Badなエネルギーを
撥ね退けるパワーが弱ってしまい、つい受け入れてしまいがちだ。宿探しも一向に進まない。

仕方なくファビオに延泊したいことを伝えると、5日間なら一部屋空いていると言う。
とりあえずそこに移ったものの、その後も、出歩いては具合が悪くなりイマイチの体調。
天気も悪く、雨が降ったりしてパッとしない。あっという間に日にちが過ぎていく。

かねてから、JAMAICA入りで最も心配していたのは宿問題だった。
ただでさえ物価の高い国なのに、X'masと年度末からはハイシーズンで、ホテルの値段も
軽く30%増しになる。しかもどれくらい混んでいるのか見当もつかなかった。
ファビオに年末ネグリルに行こうと思ってることを伝えると、それならX'mas前に移動した方が
良いとアドバイスされる。

ようやく体調が復活して来た頃には、スウェルはどこかに消えていた。
ローカルに曰く、「3日後にまた波が上がるよ。」
しかたなく、気分転換に『Rio Grande (リオ・グランデ)のいかだ下り』に出かけることにする。

ポート・アントニオの西にあるリオ・グランデは、島に数多くある『いかだ下り』の発祥の地
でもあり、ブルー・マウンテンから流れる透明度の高い川を、竹製のいかだで、
山から2時間半かけて下るというもの。
体も回復したので、JAMAICA人との交渉も全然へっちゃらだ。
ほどよく1人船頭を選ぶと、早速スタート。
船頭マン
器用にいかだを漕ぐ船頭マン。
こっちは本物。
へっぴり腰
それに比べて、
このへっぴり腰のこの人は??

透明度抜群のはずのリオ・グランデは、残念ながら、ここのとこの大雨で濁っていた。
それでも、トロピカルな木々の中をユラユラといかだに乗って下っていくのは、
思いのほか気持ちよい。途中、ハミング・バード(国鳥)が花の蜜を吸っているのが見える。

船頭
途中レゲエを歌いだす船頭。
我々が受けると、ノリノリになり
大熱唱!おいおい… もうイイよ!
物売り
物売りもいかだに乗ってやってくる。

途中、物売りがいかだに乗って寄ってきたり、川の傍の岩場に歌うバンドがいたりと、
なかなか笑える。2時間半という時間も十分だし、たまに急流もどきの場所では必死の船頭
の漕ぎっぷりに、適度のスリルも感じられて面白い。
船頭もなかなか重労働なので、料金の45US$ は妥当な値段だと思われる。

『いかだ下り』の後、ちょうど言い寄ってくるラスタマンがいたので、例のポール
教えてもらったとおりに「No thank you,but(こぶしを出して)Respect !」と言ってみる。
すると … そのラスタマンは急に態度が改まって、「OK man, take it easy.」 と言うと
去っていくではないかっ! 凄い! 効果テキメンだ。

海岸沿
海岸沿いを走っていると、
ポイントらしき所をたくさん見つける。
ポート・アントニオの住民は、皆一様に口を揃えて
ポート・アントニオが最高だ” と言う。
確かにそうなのかもしれない。
リゾート化から離れて手付かずの自然の中で
静かに暮らす…。
JAMAICAに腰を落ち着けて住むのなら、
ここは最高だろう。
なんといってもここならサーフィンが出来る!

しかし、到着以来まだ海にも入れていないし、
ネグリルには波は無い。このまま
ポート・アントニオで宿を探すか、動くか…??
迷っている私達を一押ししてくれたのはスタンフォードの一言だった。

「結局のところ、いろいろ見ても最後はポート・アントニオが一番だと思うよ。
 けれども新しい場所を見るのは凄くいいことだ。ネグリルキングストンも是非、
 行ったほうがいい…。」
「でもキングストンは危ないし、ネグリルは観光地なんでしょ?」
と尋ねる私に、
彼はニッコリ笑ってこう答える。
「What ever you do,
 If you know the where to go,
 when to go,
 who to go,
 No Ploblem man !!」


う〜〜ん。渋い…。確かに自分次第でどうにでもなるもんだ。
長かった風邪もようやく治ったことだし。
よし! ネグリルに行こう!! 年末にもうひと移動だ。

今年も残すところあとわずか。
REGGE X'mas from JAMAICA !!

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