Vol.77 『Miami』
 2003年1月21日

本当なら今頃はバハマのエルーセラ島にいるはずだった。
だが、なぜかMiami(マイアミ)に来て、もう5日が経とうとしている。
理由は簡単。ジャマイカで一向に進まなかった事務処理をここでやろうというわけだ。

それにしても、久しぶりのアメリカ上陸は大変だった。
中南米から入ったことも多分にあると思うが、税関でいきなり止められ、そのまま
別室に連れて行かれたのだ! 理由を聞いても教えてくれない。
エアコンのビシバシきいたその部屋には、すでに30人程の人が詰め込まれていた。
処理しているのは冷た〜い目をしたおじさん一人。
扉に周りには強面のガードマンが数人立っている。

あまりにノロい処理状況に、文句を言い出す人が続出すると、
強面のおじさんが登場して、「ここには問題のある人が集められているんだ。
我々の処理1つで、君達を国に送り返すことも出来るんだぞっ!」
と、脅しに近い
口調でしゃべり始める。部屋の中は、中南米から来た人で一杯だ。
確かに不法滞在等の問題も多いのだろうが、その言い方はないだろう?という感じ。

なんだかテロ以来、アメリカの税関はめっきり厳しくなったような気がする。
冷え切った部屋の中で、半分犯罪者扱いで待たされるのは気分が悪い。
結局3時間程経って、私の番が廻ってきて言われたことは、
「1995年に不法滞在している。」ということ。
「それは絶対ない!」と否定すると、「コンピューターに間違いはない。今までは
ラッキーだったが、今度は君の番という訳だ。」
な〜んてヒドイ事を平気で言う。

すったもんだの末、結局、無実は証明され開放されたのだが、体は冷え切り、
風邪引く寸前だった。なんかアメリカの税関って酷い…。神経質を通り越し、
ほとんどイジワルのレベルである。勿論、あやまりの言葉ひとつも無かった。
所詮、人間、何かの役どころを演じて生きているのだろうが、
権力をかさにきて威張る役だけはゴメンだな、とつくづく思う。

ムッとした気分のまま空港を出ると、外はびっくりするほど寒かった(10℃くらい)。
Miamiと言えば、年がら年中ポカポカしているイメージだったが、どうやら冬は
比較的涼しいらしい。今までMiamiには、もっぱらトランジットで寄ることが多かったので、
ゆっくり上陸したのは今回が初めてである。

車で動くのも当然初めて。
いつもの手順で、レンタカー屋で車を借り、地図をもらう。
「さて、一体ここはどんな所だろう…?」
見知らぬ場所をこうして動くのにも、すっかり慣れた。
地図を見ながら自分達で運転すると、その国や町の本来の姿が垣間見れる
ような気がするのは何故だろう? 
きっと、新しい土地のスピード感を肌で感じるせいかもしれない。

素晴らしく舗装された高速道路。ドライブしながら目に入るMiamiは大都会だ。
ダウンタウンを通り過ぎ、マイアミ・ビーチに向かう。運河沿いには豪邸が建ち並び、
見るからに高級そうなヨットがたくさん浮んでいる。

マイアミビーチ
Miami beach
Barbizon
滞在したのはサウス・ビーチの
コンドミニアム「Barbizon」
ここすごく便利。

せっかくの機会だし、兼ねてから泊まってみたかったサウス・ビーチに宿を決める。
ここには “アート・デコ” と呼ばれる、曲線を重視した未来派建築様式の建物が
たくさんあるのだ。1930年代に建設された “アート・デコ調の建物” は、古いものから、
最近リニューアルしたものまで様々だが、どれも近未来的で可愛い。
ホテル
ネオンの使い方が可愛い!

ホテル

深夜まで人通りは絶えない。

一昔前までは治安が悪いことで有名だったMiamiだが、現在は改善されたらしく、
危険な香りはゼロ。夜通し賑わうサウス・ビーチ界隈の店は遅くまで営業していて、
「ハワイのカラカウア道り」くらいの感覚で、ショッピングも楽しめる。
ただし、子供の姿はほとんど見かけない。 ここは大人の遊ぶ町らしい。

サウス・ビーチには、センスの良いホテルが目白押しだ。
中でも『Derano Hotel』は格別。

ここ数年、各地に出来ているホテルチェーンで、ロスの「Mondorian」などと同系列。
インテリアも素敵でセンスが良い。従業員は全員アルマーニのスーツ。
サービスも一流で、当然、お値段も高い。泊まっている客も、どこかしら
おしゃれに見える。
Derano Hotel
「Derano Hotel」
パンフレットより。

ラウンジ内

ラウンジの一部。

このホテルに泊まる気満々で、服まで買う気だったのだが(久しくそんな場所に
行ってないので行ける服がない!)残念ながら部屋はすべて満室で泊まれずじまい。
ガクッ… 予約していくべきだった。
それでも古いホテルから新しいホテルまで、他にも泊まってみたい所が沢山ある。
時間があれば、ホテルめぐりも楽しそうな場所だ。

最近でこそ、オーランド(ディズニーワールド)にお株を奪われた感じのMiamiだが、
そこはやっぱり一大リゾート地。近くにはキー・ウエストなど見所も多い。
今回は別に観光の為に寄ったわけではないので、いちいち見て廻る暇なんぞ
なかったが、唯一、気になっていた所があったので行ってみた。
それは、「Everglades Holiday Park(エバグレイズ・ホリデー・パーク)」
TV 『Animal Planet』などで有名な大湿地帯である。

我々自身、行くまで知らなかったのだが、フロリダ半島南は、ほとんどが湿地帯。
そのほんの一部がMiamiの大都会なのである。そういえばフロリダは“ワニ”で有名な
場所なのであった。都会からほんの30分程車を走らせると、そこはもう大湿地帯。
こんなに近いのにあまりの景色のギャップにビックリ。

エバグレイズ
巨大な湿地帯。
エアーボートの上から…。
ワニ
野生アリゲーターが見れる!

湿地帯エバーグレイズは、世界的にも貴重な生態系を持つ国立公園。
そこには、マナティー、パンサー、クロコダイル、アリゲーターなど、多くの野生動物が
生息している。エアー・ボート(もう絶対2人用が面白い!)に乗って、
湿地帯の中を突っ走るのは気持ちいい。水は透明で、鳥が飛び交い、
1時間余りのツアーもあっという間。“ワニ”にも出会えたし、かなり面白かった。
これ、お勧めです!

アート
サウス・ビーチで見た
巨大なアート。全部“砂”で出来ている!
アート
あるホテルのロビーに飾られたアート。

1959年、カストロのキューバ政権の後、多くの難民が押し寄せた経過もあり、
現在この町には、キューバ人、プエルト・リコ人などラテン諸国&カリブ諸国の人が
たくさん住んでいる。スペイン語があちらこちらで飛び交い、不思議な感じだ。
ゲイ・ピープルも多い。“ラテン&カリブの陽気さ” + “ゲイのセンスの良さ” が、
温暖なこの土地に妙にマッチしている。
古本屋
古本&インターネット屋。

リーディング

サイキック・リーディング屋。
こういうのがあるのもマイアミっぽい。

メキシコ・シティ〜サンホセ〜キングストンなど今まで大都会だと思っていたけれど、
Miamiに比べたら、なんのなんの、ただの田舎の都市だった…。

“ここは人間が創った素敵なもので溢れている。”
食事も、おいしいレストランやオシャレなカフェがたくさんある。服だっておしゃれだ。
CDだってデジカメだって、最新のものがなんでもすぐ買える。
インターネットなんて、部屋から繋ぎ放題で、しかもフリー・チャージ。
今後の旅のチケットも、スムースに手に入る。サービスとはこういうものだ!と
いうことも徐々に思い出してきた。

ここにきて、なんだか長らくセンスのいいものを見ていなかったことに気がつく。
人間の5感も、パドル筋同様、使わなきゃすぐ退化するものらしい。
そしてそのこと自体、いいものに触れたときにしか思い出せないときているから
たちが悪い。お〜〜恐っ…。

過去にないスピードで物事が片付く Miami…。
おかげでいろんな事がクリアになって、今後の旅の予定を見直すことが出来た。
実はこのところ2人共、いろいろと迷っていたのだ。

コスタリカで、ある程度、波乗りに満足したこともあると思う。
ジャマイカで物事が進まず、体力切れで疲れたこともかなり関係すると思う。
本来行くはずだったバハマが、この時期寒いということが判明し、急遽キャンセル
したことも関係あるだろう。つまり…、今後の予定が立たなくなってしまったのだ。

今まで波乗りメインで旅してきたけれど、そろそろ板を置いて、インド&ネパール、
ベトナム、タイなどのアジア諸国を廻ろうか? とか、ヨーロッパの方に動こうか? とか、
はたまた、馴染みのバリやハワイでのんびり過ごそうか? とか…etc。

新しい土地で、毎回宿探しをしたり、波乗りのポイントを探したり、
HP用のメールを送るためにインターネット・カフェを探し回ったり…。
旅も長くなって、なんだかそんなことに、疲れてきていたというのも正直なところだ。

こんなこと書くと、「遊んでるくせして、何言ってんだぁ〜!」と怒る人もいるだろうが、
そういう人は、大抵、本気で遊んだことがない人である。
本気で遊び続けるには、かなりの体力とエネルギーがいるものなのだ。

・・・・・・・・・が、
波乗りから離れて40日余り。
体を使ってないので、どうも調子が悪い。
新しい土地は確かに面白いけれど、きれいな海や町を見ても、何かが足りない気が
するのだ。どうやら、ほど良い波乗りのリズムが恋しくなっているらしい…。
ようやく、そう気付いたのはここ数日のこと。

“そろそろ波乗りしたいね〜…。”
ほとんど同時につぶやいた一言。それで決定!
しばし、波乗りの世界に帰ろう!!

ということで、明日から、Barbados(バルバドス)に向かいます。
それでは、次は再びカリブの世界でお会いしましょう。 So Long !

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