Vol.82 『Jeffrey's Bay』
 2003年2月20日

Port Elizabeth(ポート・エリザベス)の空港は、日本の地方都市のそれと
いっても不思議じゃないくらい、こじんまりとした空港だった。
夕方遅く到着したので、辺りは真っ暗か?と思いきや、予想に反して外は明るい。
そういえば、南アフリカは“世界で最も日照時間の長い国”だったっけ…。

空港近くには、レンタカーオフィスがあり、そこには、いくつものレンタカー会社が
入っている。ところが、いざ車を借りようと窓口に行くと、「車が無い。」
言うではないか?! 「Hartz」も「Budget」も「Imperial」もどこもかしこも全然無い。

一体全体どうしたことか?と尋ねると、現在、南アフリカでは、
『クリケットのワールドカップ』が開催されているという。
その為、世界中から選手を含めサポーター達が殺到していて、
Port Elizabeth中のレンタカーが無くなったというのだ。

『クリケット』のルールさえおぼつかない我々にとっては、そのワールド・カップが
どの程度のものなのか、さっぱり理解出来なかったが、とりあえず、「Avis」が
たった1台だけあるというので、選択の余地なくそのゴルフを借りる。
レンタカー代は安い。物価は安そうだ。

いつもそうだが、今回はいつも以上に情報が無い。
南アフリカと言えば、近年までアパルトヘイトをやっていた国、動植物大国、
ネルソン・マンデラがいる国…。その程度しか知らない。

まずは地図を片手に、空港から予約したJeffrey's Bay(ジェフリーズ・ベイ)
「SUPERTUBES Guesthouse」に向かう。日はすっかり暮れてしまっていたが、
空は広〜く、道路は舗装されていて道も簡単。
なんとなく、オーストラリアに似た風景だ。
「なんか… いい感じだね。」「うん。」 第一印象は、良好だ。

1時間程のドライブでJeffrey's Bayに到着。
「SUPERTUBES Guesthouse」はすぐに見つかった。夜10時だというのに、
辺りはひっそりと静まり返っている。ここにはナイトライフは無いらしい。
さすがの長旅で、体はドロドロのヘトヘト…。そのままベッドに雪崩れ込む。

看板
看板。
SUPERTUBES
「SUPERTUBES Guest House」

翌日、目覚めたらすでに午後2時をまわっていた。よっぽど疲れていたらしい。
この宿は、J-Bayの中でも有名なポイント“Supertubes”の目の前にあるので、
さぞかし、宿はサーファーだらけで、波情報も沢山もらえると思い込んでいた。
しかし…、宿泊客の中に、サーファーは居なかった。壁にも波の写真すらない。
妙に小奇麗ではあるが、サーフィンの空気は薄い。

「???・・・・。」
本格的なサーフ・シーズンは冬(5、6、7月)なので、今は時期外れなのか?
それとも、ここは値段が高いので(DR/R400=US$50。これでもJ-Bayの物価
からすると高い!)、サーファーは向かいの建物『Supertubes Backpackers』に
いるのか?よくわからない。どちらにせよ、他の場所に移動することにする。
早速、宿探しである。如何せん、起きたのが遅すぎて数箇所回っただけだったが、
空いてる宿はいくらでもありそうだ。

そのまた翌日、またしても起きたのは正午…。どうやら時差ボケらしい。
土曜日でインフォメーション・センターも正午で閉まってしまう。
焦って駆け込むと、帰り支度をしていたお姉さんが、“しょうがないわねぇ”と、
カチャカチャとコンピューターを打ち込むと、「んじゃ、これねっ!」と1件だけ
教えてくれた。

住所を見ると、今まで居た『SUPERTUBES Guest House』の隣である。
現地に到着すると、オーナーのヴァネッサが待っていてくれた。
そうして、「他にも部屋はあるんだけど、今はこれしかないのよねぇ…。」
部屋を見せてくれる。それが、これ!!

家
我々の宿。
室内
広〜いベッド・ルーム。

「広い・・・・・。」
恐ろしく広いリビング&キッチンは、ゆうに50畳以上はあるし、しかも新築同然。
ベッド・ルームは4つ、バス・ルームも2つある。
最初はてっきり豪華なシェア・ハウスだと思った。ところがそうではないと言う。

きっと高いんだろうなぁと思いながらも一応、「それで、いくら?」と尋ねると、
「そうねー。1人R100だから2人でR200もらうわ。」という。
200ランドということは、えーっとえーっと…、急いで頭の中で計算してみる。
まだ新しい通貨の価値がよくわかっていないので時間がかかる。

すると… なんと!日本円で \3000だ。
「えーーーっ!! ホントォ〜??」 と驚く我々に、ヴァネッサはニッコリ笑うと、
「本当よ。変な話だけど、他の狭い部屋の方が高いのよね。
 でも、今はとりあえず、ここしか空いてないから。」
というではないか!

にわかに信じがたく、もう一度聞き直してみたがやはり値段は一緒だった。
思わず、何か事情でもあるのか? (お化けがでるとかetc)と、聞いてみたい
衝動にかられたが、願ってもない条件だし、オーナーの気が変わらないうちに
サッサと引越すことにする。

リビング
リビング。
食材
マイアミで仕入れたお宝!

こうして、快適スペース確保!!
マイアミで仕入れた日本食材も、買ってきたかいがあるというものである。
唯一の難点は、広すぎることくらい(リビングを端から端まで30歩も歩く)。
収納棚も多く、我々の少ない荷物を入れると、一体どこに何が入っているか
探すのが大変。だから、その辺に全部出しっぱなしだ。それでも充分広い。
サーフ・ポイントにも歩いて行けるし、最高の宿だ。

さて、快適空間は確保したものの、肝心の波はというと…。

世界でも最高峰といわれるJ-Bayの波は、最初に「Boneyards」でブレイクし、
次に「Super Tubes」、「Car Park」、「Impossible」、「Tubes」と、
すべての波を乗り継ぐと3分乗れるパーフェクト・ウェイブとなるらしい。

J-Bay
J-Bay「Super Tubes」
J-Bay
「Sufers Point」

・・・・が、今の時期シーズン・オフの為か、さっぱり波が無い。
今日ですでに1週間。ほとんどフラットか、もしくは“因幡の白兎”のように
風がビュービューで白波が立っている。 ローカルのマイク曰く、
「俺がJ-Bayに移り住んで、唯一学んだこと。それは“忍耐”さ。」とのセリフ
に代表されるように、この地に移り住むサーファーは多いが、皆、スウェルが
入るのを待っているようだ。

インサイド
インサイドは岩だらけ。
藤壺
そして岩には藤壺や貝がいっぱい。

心配していた水温は、今の時期最も暖かいらしく、外人は裸で入っている。
だが、彼らの寒さに対する感覚は異常なので参考にならない。
我々はスプリングでなんとか… という感じ。寒さに強い人ならラッシュガードに
トランクスでもいけるだろう。

ただ〜し!! この辺りはほとんどリーフ・ブレイク。
インサイドは岩だらけだし、その岩には藤壺がぎっしり。藤壺はまだしも、
一番イヤなのは、岩の表面に立てに突き刺さるようにして“貝”が密集してること!
ゲッティング・インやゲッティング・アウトの時も超慎重に出ないと大変だし、
インサイドでワイプ・アウトするとザクザクだ。

海で見かけた人は全員と言ってよいほど、あちこち切っていた。
ブーツは必需品!! 怪我防止の為にも、フル・スーツを着たほうが良さそうだ。
幸いにも、サーフ・ショップも充実してるし、レンタル・フルスーツもある。
我々も早速借りるつもりだ。

前に雑誌か何かで、『J-Bayに入るには決断がいる』と書いてあったが、
こういうことだったのか…?! 波乗り以前に入るのも大変である。
ちゃんとその辺も書いといて欲しいもんだ。
アロエ
ビーチのあちこちに勝手に
繁ってるアロエ。

ビーチ沿いには野生のアロエが
たくさん生えている。
アロエの折られた葉を眺めながら、
思わず、“まさか、海から上がって
怪我したとこに、ハイ、どーぞ!
ってわけじゃないだろうなぁ…?”
などと、いらぬことを考えてしまう。

波が無い時でこれなら、波が上がったら
どうなるのだろう? どちらにせよ、しばらく
ここで待機してみるつもりだ。


街

街の様子。
ランドリー屋
ランドリー屋。
目方で値段が決まる。

Jeffrey's Bayの海はハードだが、ライフ・スタイルはイージー。
近代的なスーパー・マーケットも完備しているし、物価はもの凄く安い。
米俵くらいの大きさにパンパンに入ったじゃがいも袋で \400くらい…。
野菜も果物も肉も充実してるし、魚屋に至っては、最高に新鮮でおいしい店がある。
ここで餓えることは、まず無いだろう。地元の人も親切だ。

街はこじんまりと小さく、その割にはサーフ・ショップは充実している。
やはり、この街もサーフィンで出来上がったサーフ・シティなのだ。
比較的新しい街らしく、古びた建物は見当たらない。
街全体に高い建物は無く、それがよりいっそう空を広く感じさせる。

このところ移動の連続で硬直していた体が、随分ゆるんできた。
久しぶりに夢も見るようになった。
Jeffrey's Bay…。かなりリラックスできる街である。

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