Vol.89 『MAURITIUS』
 2003年3月30日

タラップを降りた瞬間、ムッとした空気が体を包む。
湿気を含んだ空気は、ここが確かに“島”だということを感じさせてくれる。

Cape Townケープ タウンからJohanesburgヨハネスブルグを経由して、そこからさらに約4時間のフライトで
到着したMAURITIUS(モーリシャス)。マダガスカル島の隣にある小さな島だ。
入国審査も極めて簡単。荷物もノー・チェックでスムーズに上陸出来た。

人口の7割をインド人が占める国らしく、見かけるのはほとんどインド人。
しかも、皆、フランス語(公用語)を喋っている!!
“フランス語をしゃべるインド人” …なんか変な感じだ。

早速レンタカーを借りようと、空港内のレンタカー・オフィスを訪ねると、
驚いた事に、どの会社にも車が無いという。
よもやこの国もクリケットかぁ? と一瞬考えたものの、すぐにそんなことはないと
思い直し、すべてのレンタカー会社に当たってみるも、すべて無し。
「・・・???」

そのうちHertzのオヤジが、1台だけ貸してやると言い出した。
値段を尋ねると1日110$だという。…高いっ!!
しかし、すでに時刻は夕方で、選択の余地は無さそうだ。
しかたなくそれを借りることを告げると、オヤジは、妙にヒソヒソ声になり、紙に
ある住所を書くと、「ここまでタクシーに300Rs(Rs : モーリシャス・ルピー)出して
乗って行け。そしたら、そこで車を渡すから。」
などと不思議なことを言う。
「・・・???。」

よくよく話を聞くと、面倒な事に、ここMAURITIUSでは、前もって予約を入れて
おかないと空港で車を借りれないシステムになっているらしい!
Hertzオヤジは、特別貸してやるからそこに行けというのだ。
なんだか腑に落ちないまま、タクシー乗り場にいくと、待ち構えていた
タクシー乗りのおっさん達がいっせいに寄ってくる。

行き先を告げると、タクシー乗りのおっさん達は、不審な顔になり、
「そこに何しに行くんだ? …さては、レンタカーだな?
 いいかい、君達はだまされている!!
 この国では空港でレンタカーは借りれないんだ。それは法律違反なのだ。
 宿はどこだ?? …何、決まってない?
 それじゃぁ、俺がいい宿を紹介してやろう。 …etc」
と、弾丸トーク!
大丈夫だから!と断っても、皆しつこい。しかも必死の形相である。

動けずに困ってると、Hertzオヤジが出てきて、タクシーのおっさん達と口論が
始まった。そのうち、空港内のタクシーのおっさんが大集合してきて、
場面は、にわかに“Hertzおやじ vs タクシー運ちゃん連盟の仁義無き戦い”
形相を呈してきたのであった…。

初めての国なので、どちらを信じたものかもわからないが、
“どーでもいいけど、早く移動させろよ…。” と疲労感が増してくる。
大騒ぎの最中、客である我々は、ほとんどそっちのけである。
興奮したインド人のおっさん達は本当に始末に終えない。
最後は警察官まで登場して、結局、警察官の指示に従い、
最もやる気のタクシーのおっさんが粘り勝ちして、我々を乗せて行くこととなった。

なんだか分けがわからない。
すでにインフォメ・センターも閉まっており、日も暮れ始めている。
地図も無く右も左もわからないのに、このまま宿探しをするのも面倒だ。
この際、タクシーのおっさんに捜してもらうことにする。
“サーフィンが目的だ” と告げると、おっさんは即座に、
「それならTamarin(タマリン)だ!」と答えた。

途中の風景
一瞬、タヒチのモーレア島を
彷彿させる山々。
道路
道路は舗装されていてキレイ。

Tamarin Bay(タマリン・ベイ)は、島の南西に位置していて、世界有数のベスト・ウェイブとして
名高い所。12フィートまでホールドすると言われているここの波は、最良のコンディションだと
かなり長く乗れるという噂だ。ただしあまりコンスタントに波が立たないのが難点。
本場はやはり冬らしい。

ローカルに言わせると、この島の南には3つのポイントがあり、中でも、
Riviere Des Galeというポイントが最もコンスタントに波が立つという。
しかしどちらにせよ、今の時期はサイクロンが来ないと波が立たないらしく、
海は静かで誰も入ってないので、どこがポイントなのかわかりにくい。

ホテル
『Escale Vacances』
キッチン付のメゾネットホテル。
海
海の透明度は高い!

南には宿らしきものはまったく無く、Tamarin Bayには腐った宿しか無い。
とりあえず、近場の町「Fric en Frac(フリック・エン・フラック)」に宿をとり、
サイクロンを待つ方が良さそうだ。

宿の値段は1500Rs (6750円)。最初、相場もよくわからなかったので、
高いのか安いのか判断の使用がなかったが、一応ホテルと名の付く所では、
この辺りでは一番安かった。後は1泊300$〜500$の高級リゾートしかなさそうだし、
まずはこのホテルに2日程腰を落ち着けて、明日から宿とポイント・チェックだ!
と逸る気持ちを押さえながらも、この日は眠りに落ちたのであった。

・・・・・・が!!!
翌日、腹痛がする。体もだるく、どーも調子が悪い。
実は南アフリカに居た時から、かれこれ2週間も下痢(汚くてスイマセン)が
続いていたのだ。もともと胃腸には自信があり、正露丸さえ飲めば、
大抵なんとかなるものだったのに、今回はまったく効き目なし!
おかしいとは思ったものの、別に腹痛もないので、そのままにしておいたのだ。

移動疲れかも?と、この日はゆっくり宿でゴロゴロすることにした。
だが、夕方近くになると、腹痛はかなり激しくなっていき、歩く事もままならない。
もはや何も食べる気に慣れず、寝たきり状態…。
その日は一晩中、激痛に悩まされロクに眠れなかった。
翌朝、口を利くのも辛い状態になり、もはやこれまで。病院に直行!

この国は医療費がタダということもあり、病院はいつも大混雑で、いつ診察される
かわからない。だからちゃんとした治療を受けたい人は、病院ではなく、
クリニックに行くのだそうだ。ホテルで聞いた所は、島一と名高いクリニック。

そしてその診察の結果は…??

ベッドにて
撮るなよ〜、意識不明の病人を!
「あ〜恥ずかしい…。」
注射
何度も刺された注射針。

なんと! 『食中毒』であった!!!
ということで、いきなりそのまま入院。
どうやら南アフリカでもらった菌が、ここMAURITIUSで発病したらしい。
トホホ… 情けない。

入院したのは『MEDISAVE』というクリニック。
インド人のやさしそうな先生だ。ベッドに横になった途端動けなくなり、
そのまま点滴を打たれる。息をするのも苦しい…。
心配そうに見守るアキヤンも目に入らず、意識不明状態に突入。
そばにいてもしょうがないので、アキヤンは宿に帰ってお見舞いに通うことになる。

それにしても、『食中毒』がこんなに痛いもんだとは思わなかった。
もう、寝返りも打てない。「ボンジュール?」と、インド人看護婦さん達が
入れ替わり立ち代りやってきては、痛み止めの注射を打ってくれたり、
薬を飲ませてくれたりする。

“南の島で入院”というのは悲しいもんである。
青空と美しい海も、この際まったくおよびじゃない。
しかもよりによってこの間に、10年に一度というサイクロンがやってきて、
海には素晴らしい波が立っていたという…。あ〜あ。神様のイジワル…。

その後、クリニックの人々の手厚い看護でなんとか退院できたが、
結局、1週間程身動きとれない状態が続いた。

Port Louis
Port Louis
町
町中の様子。

幸か不幸か、MAURITIUSは意外と洗練られた島だった。
フランス領だった名残りか公用語はフランス語。その後イギリス領になった
こともあり、観光地では英語も通じる。人種はインド人(ヒンドゥー&モスリム)が最も多く、
次いでアフリカ人、中国人、そしてヨーロッパ人と続く。
クレオール人と呼ばれるアフリカ人と白人の混血も見かける。

人種同様、食事もインド料理、中華料理、クレオール料理… と様々な料理が楽しめる。
物価は高いと聞いていたが、ジャマイカやバルバドスに比べたら全然安い。
観光地としての顔を持つものの、この国には、ローカルの生活空間が
立派に存在しているようだ。

南アフリカの貿易の中継地的役割を果たしているらしく、
商業地区「Port Louis(ポート・ルイス)」には、旅行代理店や銀行、
ウォーター・フロントと呼ばれるカフェやレストランなどが集まっていて、
立派な商業都市となっていた。こじんまりとした町の中に商業関係が固まって
存在しているので、今後移動するチケットの手配や荷物の送り出しなど、
事務処理には適していて便利だ。サーフ・ショップもここで発見!

マーケット
町中のマーケット。
新鮮な野菜や果物がいっぱい。
サトウキビ畑
島中にサトウキビ畑が広がる。

カリブ海諸島や南アフリカに比べて、植民地の名残はあまり感じられない。
人口も多いし活気もある。町行く人々の表情も明るい。
一見、立派な都市風の「Port Louis」も、一歩裏通りに入れば、
“市民の台所”とも言えるマーケット(市場)が立ち並び、新鮮な野菜や果物が、
驚くほどの安さで売られている。一日中、凄い人出だ。

国の主な産業は観光、サービス業、繊維、そして植民地時代からの主産業
である砂糖キビ。そのせいかここでは砂糖の値段はとんでもなく安く、
大袋で20円くらい。ほとんどタダみたいなもんである。
島のハイウェイの両端には砂糖キビ畑が、どこまでも広がっている。

タマリン ベイ
Tamarin Bay
『食中毒』から回復した頃には、
サイクロンはすっかり過ぎ去っていた。
次のサイクロンはしばらく来そうに無い。
コスタリカ以来、ロクにいい波に乗ってない。
溜まったウップンをここで晴らすつもりが、
思いっきり外してしまった。
“移動しながら波を当てる”
というのはつくづく難しいと思う。

でも、旅にアクシデントはつきもの。
どうせ波も無いことだしイライラしてもしょうがない。ここは気分転換で、
海の綺麗な北の町「Grand Bay(グラン・ベイ)」に移動することにしよう。

グラン ベイ
Grand Bay
夕日
サンセット。
休日のビーチはローカルのもの。

青い空、荘厳な山、エメラルド・グリーンの海、砂糖キビ畑、たくさんの鳥達、
洗練された高級リゾート地、昔ながらの村… etc。
島の中を車で走るたび、どんどん景色が変わる。

どうやらMAURITIUSは、多様な魅力を持つ美しい島のようだ。

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