Mail from Yume and Akiyan

Vol.91 『RASTAMANとの出会い』
 2003年4月10日

旅のイメージは『誰と出会うか?』で随分変わる。
新しい土地なら尚更のこと。
いい人に巡り合ったら、旅が成功したのも同じだ。

だから誰と出会うか?仲良くなるか?はとても大事な要素だと思う。
尋ねる質問には誰でも答えられるけれど、その人がどれくらい詳しいのか、
その情報がどれくらい信用に足るものなのか?を見極める目が必要だ。

といっても、我々、人を選ぶほど偉くない。
基本的に『出会う人拒まず』で、いろんな人に旅の情報を聞いている。
ただ唯一気にするようにしてるのは、“その地を長く愛する人の話を信じる”
という鉄則だ!そういう人に巡り合えれば、付け焼刃ではない本当の魅力が
わかりやすくあっという間に体に浸透していく。
そうすれば、余計な無駄を省けるし、尚且つ、真の情報が手に入りやすいので
とても大事なポイントなのである。

そういう意味では、MAURITIUSの出会いは濃かった…。

カリンバ
カリンバ
『カラバス』という野菜をくりぬいて作る。
その男は夕方5時になると必ず、
Pereybereのビーチ沿いの公園に
姿を現していた。いつも楽器を
奏でている。ガムランのような
キレイな音色のその楽器は
カリンバだ。『カラバス』という野菜を
くりぬいて作られている。
聞くとすべて手作りだと言う。
思わず2つ買ってしまった。

最初にロドマンに出会った時は驚いたものだ。
腰まで伸びたラスタ・ヘアーは迫力満点。どんな人でも思わず目が釘付けになる。
ロドマン
RODOMAN。



凄いドレッド…。

“これがチコが言ってたRASTAMAN(ラスタマン)だな?”とすぐにピンときた。
チコというのは、Tamarin Bayで出会った若いRASTAMAN
「ノースには凄いRASTAMANが1人いるんだよね。」と、以前話に出たことが
あったからだ。 ロドマンに話しかけると、最初はつっけんどんだったが、
その後、実は宿探しをしていることを告げると、急に親切にあれこれと教えてくれ、
それをきっかけに仲良くなっていったのだ。

毎夕ビーチ沿いの公園に、出勤するかのごとく現れ、カリンバを奏でながら
サンセットを眺めている。どうやらこのカリンバを売って生業を立てている
みたいだが、別に自らセールス・トークをしゃべるわけでもなく、
ただ夕日を眺めながらカリンバを奏でているだけだ。

ほとんどの人が無視していくが、たまに『ハメルーンの笛吹き』のように、
その音色に魅かれた人間が引き寄せられていく姿を見かけた。

Rodoman Calamel
クレオール人(白人と黒人の混血)。現在53歳。
14歳の時、学校をドロップ・アウトして以来、20代〜40代でジャマイカに10年以上
滞在したのち世界中を旅してきた。自分では、今ではファッション化された
Rastamanより、サドゥ(ヒンドゥの行者)により近いと思うとのこと。
完璧なベジタリアン。穏やかな人柄だ。

実は来て早々、南部のChamarel(シャマレル)という場所に、
“ラスタマンが住む村”があるという噂を聞いていた。面白そうだから行ってみよう
と思ったのだが、なかなか部外者が入れるところではないらしく、
それ以上の情報も無いのでそのまま忘れかけてた場所があったのだ。

ロドマンに尋ねてみると、自分もついこの前までそこに住んでいたと言う。
しかも、「久しぶりに友達にも会いたいし、もしよかったら一緒に行くかい?」
と誘ってくれるではないかっ。彼としては、ただ足(車)が欲しかっただけかもしれないが、
暇を持て余してる我々に断る理由もなく、とある日、Chamarelに遊びに行くことになった。

シャマレル
Chamarel
Chamarelは南西部にあるひときわ目立つ
高い山の中腹にある。近くに観光名所の
“7色に変わる岩”があるのでほとんどの
観光客はこの村を通り過ぎてそこに向かう。
MAURITIUSの中でも最も田舎で村には
電気も水道も無い。

村に入ると、それまでリゾートの空気は
まったくなくなり、ジャマイカの山の中の
ような、緑の濃い景色に変わる。
その昔の植民地時代に、奴隷制度を拒否して
逃げてきた人々で出来上がった村らしい。

折りしも曇り空だった空からポツリポツリと雨が降り出し、そのうちにあたりは
土砂降りに変わった。ロドマンは少々困り顔になり、「近くに友達の家が
あるからお茶飲みに寄ろう」
と、そこで一休みすることにする。


クリフと。
只今お嫁さん募集中!
サルと犬
クリフん家で飼ってるサルと犬。
“犬猿の仲”というけれど彼らは仲良し。

その家の主であるクリフはシャイでやさしいRASTAMANだ。
最近建てたばかりの家は新築で、キレイ好きらしく(?)、家の中は清潔で
片付いていた。現在お嫁さん募集中とのこと(笑)!
「この辺りは田舎過ぎて嫁のきてがないんだ。皆、ここに来て1週間も経つと
町に戻りたいっていうんだよ…。」
と苦笑しながら言う。

というのも、ここには水道が引かれてないので、洗濯するにもいちいち
川に行かねばならない。お店も無いし、最寄の町には朝5時と夕方の
たった2本のバスに乗るしかない、つまり不便な村なのだ。

ボブ・マーリーが大好きらしく、ラジオからはボブの曲が流れているし、
部屋の中にもポスターが大事そうに貼られている。
“新築の家を建て嫁を待つRASTAMAN” ていうのもなんか受けるけど、
もの凄くいい奴だし…、誰かお嫁さんに来ませんか〜(笑)??

彼の家にはひっきりなしに友達のRASTAMANが遊びにやってくる。
島産のおいしい紅茶をご馳走になり、すっかりくつろいでるうちに、
いつの間にか雨も上がっていた。
「そろそろ行くかい?」というロドマン


いよいよ本命の友達の家に…。
クリフの家の裏から山に入っていく。
濡れたあぜ道を注意深く歩いて行くと、
景色はパノラマ・ビューのジャングルに
なっていった。
“一帯全体ここはどこだぁ?”と聞きたく
なるような浮世離れした景色が広がっている。

さすが10年以上住んでいたらしく、1人で
行っても決して辿り着けないような道を
ロドマンはスイスイ歩いていく。後に着いて
歩いて行くこと10分あまり…。
ようやくその場所に辿り着く。

緑濃いジャングルの中にその家はあった。
まるで童話に出てくるような美しい場所。掘っ立て小屋のような数件の家の
周りには川が流れ、池には魚が泳いでおり、大きな木の下には木の枝を
簡単に組んだだけの椅子が並べてある。鳥のさえずりが聞こえるだけの
静かな静かな場所…。

「ちょっと友達を呼んでくるから。」と、ロドマンがいなくなると
その風景の中で、しばしボーっとしてしまった。
そうして間もなく出てきた友達とは…??

「オイオイ、凄い人出てきちゃったよ〜。」と思わずつぶやくアキヤン。

家

ラスタマンの家。
ラスタマンズ
RASTAMANS

「どひゃ〜ぁ…!!」
掘っ立て小屋から、笑顔で飛び出してきたRASTAMAN
シャツを着ながら走ってくる(ちなみにシャツには髪の毛から入れてた!)。
ドレッド・ヘアをまとめておさげにしている姿は強烈なインパクト!
まるで他の星から来た謎の生物みたいである。

驚く我々をよそに、笑顔満面のRASTAMANは握手の手を差し伸べると、
快く迎え入れてくれた。といっても、フランス語なので何を喋っているか
我々にはほとんどわからない。たまにロドマンが通訳してくれる。

大自然の中にあるその家には、一面ジャングルに囲まれていて、
その中にポッカリと空間が造られている。プライバシーは完璧だ。
野菜や果物も作られていて自給自足の生活。
この世のものとは思えない空間で、これまた、この世のものとは思えない
RASTAMAN達がフランス語で喋っている…。
まったくもってここは“アナザー・ワールド”なのであった。

この日をきっかけに、MAURITIUSでの生活は一変。
以来毎夕方になるとロドマンのいろんな友達の家に遊びに行くことになる。
“類は友を呼ぶ”の諺どおり、RASTAMANの友達はやはりRASTAMANである。
事態はにわかに、『ロドマンと行こうRASTAMANツアー』の形相を呈してきた
のであった。まぁ、いいっか。

RASTA BOYS

RASTA BOYS。
ダニエル
バンド「Fight Again」のダニエル

しばらくしてわかったのだが、どうやらロドマンは、この島では
知らない人がいないくらいの有名人なのだった。
一番年長という事もあるのだろうが、どこに行っても、彼と一緒にいくと、
他のRASTAMANの対応が違う。尊敬されているのである。

彼自身、ミュージシャンということもあり、若いレゲエ・ミュージシャンの
精神的サポートにも余念が無い。おかげでいろんなRASTAMAN達と知り合えて、
面白い日々が送れた。

彼らはほとんどがクレオール人。
この地のクレオール人にとって、ボブ・マーリーの存在は大きい。
島の中で少数でカースト(一応あるらしい)が低く差別と抑圧された歴史を持つ
クレオール人にとって、ボブの存在はアイデンティティの確立ともいえるほどの
影響を与えたらしい。

MAURITIUSにはSagerという古来のリズムがあり、それがReggae
ミックスされ、『Saggae(サゲエ)』と呼ばれる音楽が生まれた。
なかなかいい感じの音楽で新鮮なリズム。
ジャマイカで生まれたリズムが、こんなに離れた島に多大な影響を与えた
という事実に、驚きをと感動を覚える。ボブ・マーリーはやはり凄かった!
ミュージシャン達は皆ウルトライイ奴で、おみやげにCDまでもらう。

しかし、まさかMAURITIUSでこんなにRASTAMANと触れ合うとは想像もして
いなかった。ジャマイカで出会うはずだったのに、こんな島で会うとは…。
わからないもんである。これもそれももちろんロドマンのおかげだ。

別名“Man of Answer”と言われている彼は、何でも良く知っている。
本当にいろんなことを教えてもらった。ロドマン曰く、
MAURITIUSは美しい女のような島だ。
 イギリス、フランス、インド、中国… 昔から世界中いろんな所から人々が
 この島を自分のものにしようと寄ってくる。そしてそれは奇跡的に
 今も続いているのさ…。」


これからこの美しい島がどう変化していくのか? 誰にもわからない。

今朝、旅行代理店からNEPAL行きのチケットが取れたと連絡があった。
あさってには出発だ。ロドマンNEPALに動くことを伝えると、
「今度はヒマラヤでサーフィンでもするのかい?」とからかわれる。
「いや、ヒマラヤでカリンバでも弾いてくるよ。」と答えると、
彼はうれしそうに笑っていた。

ありがとう。ロドマン
おかげで楽しい日々を過ごせたよ。
いつか、またどこかで会いたいね。それまでどうか元気でいて欲しい。


MAURITIUS
最後に島を離れる時、空の上から
見下ろすとついさってきまで居た島の
全体が浮かび上がる。
息を呑むほど美しい。

“美しい女かぁ…。本当にその通りだ。”

そう思いながら見つめていると、
島はどんどん遠ざかり、
そのうち見えなくなっていった。

次はいよいよ山である。今度はどんな人と出会うのだろう?
期待に胸は膨らむのであった。

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