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Vol.95 『Chitwan』
 2003年5月8日

人それぞれに違う魅力があるように、国それぞれにも違う魅力がある。
NEPAL(ネパール)の魅力は?と言えば、山、人、田舎差加減… その他もろもろ
たくさんあれど、何といっても最大の魅力は“物価の安さ”だろう。

すでに周知の事実だが、今一度ここではっきり言おう!
NEPALは安い!!』
ホテル代しかり、食事代しかり、移動費しかり。
これは素晴らしい魅力である。両替したお金がなかなか減らない。
物価が安いので心の安定度も高く、リラックス度合いが高いのだ。

高くて快適なのは当たり前。
高くて不快なのは最低!
安くて不快なのは当たり前。
安くて快適なのは最高!

NEPALの場合、ゴージャス系ホテルは少なくても、“許せる貧乏臭さ”
“まぁまぁ快適” というホテルには事欠かない。
何事も安いに越したことはない。なんたって楽である。
面倒なのは、『高い世界にだけ存在している最高のモノがある』という事実だ。

ポカラの次にどこに行こうか考えた末、Chitwan(チトワン)行きを決めた。
野生生物の宝庫でもあるNEPALには、7つの国立公園と3つの野生保護区がある。
そのうちの1つが「チトワン国立公園」である。
そこでは聞くところによると、『エレファント・サファリ』などというものがあるらしい。

NOBUが加わり、観光気分に拍車がかかった我々3人組は
Chitwanで象に乗ろうツアー” を思いつきワクワクしたのだが、困ったのは
『地球の歩き方』に書いてある記事だった。
そこには、「チトワンは公園の中と外と大きく分けて2つの宿泊場所があって、
どちらに宿をとるかで大きく変わる…。」なんて書いてある。

国立公園内には有名な『Tiger Tops (タイガー・トップス)』を始めとする
6つの高級ロッジがあり値段も “NEPALなのにこんなに??” というくらい高い。
一方、公園の外であるソウラハの村には10US$以下の宿が50軒以上あり、
公園内と外では値段の差がはなはだしい。
“どっちがおもしろいのだろうか…?”

“これはもう実際に、Chitwanに行った人に聞いてみるしかないっ!” と
出会う人に聞きまくるのだが、ほとんどの人はソウラハ村に滞在した人が多く、
「公園内のロッジは高すぎる。ソウラハ村で十分!! 死ぬほど暑いけど、
タルー族も見れるし、ソウラハ村よかったよ〜。」という。

『Tiger Tops』は昔雑誌でも見たことのある世界のセレブ御用達の高級ロッジ。
ただし写真を見る限り、ゴージャスホテル系でないのは確か。エコを売り物に
しているだけに、部屋にエアコンなんぞはなさそうである。
ジャングルの中にあるのでホテル・オンリーの生活。

う〜ん…。そんなに面白いなら村も見てみたいし、公園内は高い。
安上がりに越したことはないので、今回はやはり外の村に泊まって
そこから『エレファント・サファリ』を楽しむことにするか…。

ほとんどそう決めた頃、ある時マムズ・ガーデンの宮本さんが、
「例えばエレファント・サファリをする時も、村に泊まると外から
国立公園に入る形になるので、広い公園内を見て回るのに限界がある。
中のロッジの方が、もともとジャングルの中にあり、そこから出発できるので、
動物に出会える確立が断然高いですよ。」

などというではないか?

そう。彼女は我々が始めて会った “『Tiger Tops』に実際に泊まった人” なのであった。
思えば今まで聞いた人はすべてソウラハに滞在した人ばかりだったのだ。
これで決まった。いざ、目指すはChitwan『Tiger Tops』へ!!
バス
ネパールのバスは激しい。
荷台にも人がテンコ盛り。

ポカラからは運転手付の車で移動
することにしたので楽チン。
運転手のラム君はほとんど英語が
しゃべれないが、前もって行き先は
伝えてあるので安心だ。
それにしても、NEPALの道路には
バスが多い。運転も荒いし、さぞかし
事故も多かろう?と思っていたら、
案の定、事故ってるのを良く見かけた。

この国で走っている車はすべて輸入車だし、しかもどれもこれも古くてボロい。
タイヤなんかツルツルだ! したがって当然パンクも多い。
外国人がこの国で運転するのは難しいかも…?
人件費も安いし、頼んで乗ったほうが全然安心だ。

タライ平原
タライ平原に入って来た。
タルー族
タルー族の家は素朴で可愛い。

いくつかの山を越え、5時間ほどでChitwanに到着。
今までの山沿いの景色とは打って変わって、平野が広がっていく。
どうやらタライ平原に入ってきたらしい。
シーンがまた変わった。

ジープ

空港ではホテルからの
ジープがお待ちかね。
吟遊詩人
吟遊詩人。 我々が近づくと
急に演奏が始まった。

ふと気がつくと、車はメガウリ空港の中に入っていく。
ここが「チトワン国立公園」の入口。お迎えのジープが待機していた。
運転手ラム君とはここでお別れ。彼はここで我々がロッジに泊まって戻ってくるまで
待機しておいてくれるのである。

現在公園内にある6つの高級ロッジの中でも『Tiger Tops』はパイオニア的存在。
この空港自体もともとはその為に存在したようなものだったという。
TigerTops
『Tiger Tops Jungle Lodge』


ティータイム

ティー・タイム。

昔、雑誌で見た時に、「いつかは泊まってみたい!」と漠然と思っていた場所に、
自分達が実際に居るというのは不思議な気分だ。
『Tiger Tops』は簡素ながら設備は十分に整った快適ロッジで、
「Jungle Lodge」と別の敷地に「Tented Camp」というキャンプタイプの2つの
宿泊施設を持っている。せっかくだからと両方泊まってみた。

泊まった感想は…。スタッフのホスピタリティーも西洋風で完璧だし、『ジープ・サファリ』や
『エレファント・サファリ』 など、アクティビィティも充実していて、想像以上に素晴らしかった。
皆に一様に「暑いよ〜」と脅かされていた気候も、ジャングルの中の夜は涼しく、
しかも大そう気持ち良い。ぐっすりと眠れる。

Tented Camp
『Tented Camp』
中でも気に入ったのは、「Tented Camp」
テントといっても、清潔なベッドがあるし、
テントに繋がる別棟に、トイレとシャワーの
小屋が隣接して付いていて雰囲気抜群!
夜は電気の代わりのランプの灯がいい感じだ。

特に今回我々が泊まった時は、たまたま
「Tented Camp」には他の客がいなく
はからずも “貸し切り” となってしまったので、
尚更最高だった。
食事もおいしいく、夜なんて我々3人だけなのに、
豪華ビュッフェ・ディナーで持て成され、まるで気分は王様状態である。

当然「エレファント・サファリ」も、「一人一頭でお願い。」と、まるで “マイ・ゾウ” 扱い(笑)。
アフリカゾウとは違って優しい感じのインドゾウとも信じられないくらい近い距離感で
接することが出来たし、サイなどの動物もたくさん見れて大満足!!
子供のようにはしゃいで過ごした楽しい日々だった。

さて、いよいよChitwanを離れるという日。
なんと突然ストライキが始まってしまい、身動きがとれなくなった。
しかたなく延泊することに…。どうならこのままテントでもう1泊したいところだったが、
あいにく我等が運転手のラム君は英語が無理なので事情が伝えられない。
どちらにせよテントには、電話もない。

“それなら、いっそのこと、気になっていたソウラハの村に1泊してはどうか?”
と3人で話はまとまり、翌日、ソウラハの村を探索することにしたのであった。

ソウラハ

ソウラハ。
宿の部屋
村で泊まった宿。

村に入るなり思わず叫ぶ。「暑〜〜〜〜いっ!!!」。日差しがきつい!
とたんに宿探しの為うろつくのも面倒になり、もっとも川沿いに近い1軒の
安宿にチェック・インする。「トリプル(3人部屋)ある?」と尋ねると、
「ノー・プロブレム」と、ベッドを無理やり入れてトリプルの部屋にしていた(笑)。
値段は昨日までのロッジに比べて100分の1の安さ!

部屋は狭い。おまけに蒸し風呂のような暑さ。
昨日までの涼しさとはエライ違いだ。これで同じChitwanとは思えない!
壁にぶら下がった扇風機の風が唯一の救い。しかしそれも生暖かく、
ほんの気休めにしかなりゃしない。絶えられないので外に出る。
まずは腹ごしらえ。食べ物は普通。ダルバードなら無難。

インスタントラーメン
インスタントラーメン。生のままポリポリと、
ベビースターラーメンのように
食べるのがネパール式。
ダルバード
ネパールの常食ダルバード
ご飯と(ダル)豆のスープを混ぜて
食べるのはおいしい。

ラプティ川沿いにあるソウラハ村は、山もなく平野だし、ネパールというより
どこか南国の雰囲気がするところだ。川沿いの道が浸水の為か(?)砂浜になっていて、
歩くと足が砂で白くなる。日中は余りの暑さにのんびり出来ないが、
川沿いに建っている数軒のバーや小屋には、日が暮れると色とりどりの豆電球が
ぶら下がり、まるで島にでもいるかのような気分にさせられる。

しかし、いかんせん暑すぎる!! こんなに暑いのは久しぶりだ。
ひょっとしたらエアコンの無かった子供の頃の夏以上に暑いかもしれない。
蒸し風呂のような安宿は、夜になっても一向に涼しくならず、それどころか
無情にも猛暑に拍車をかけていった。ドアを開けたいのはやまやまだが、
蚊の量も半端ではなく、それはそれで大変なことになりそうだったので閉めておくしかない。

ただでさえ狭い部屋の中にベッドが余計に入って尚、狭い。
そこに川の字になって寝る3人。一旦眠ろうとするも10分も経たないうちに、
「アア〜ッ!暑い!」と飛び起き、誰かれともなく水シャワーを浴びる始末だ。
結局その日は寝苦しい一夜を過ごすことになった。
“昨日まではあんなに幸せだったのに…。” まるで天国と地獄である。
やはり100分の1の値段の差は大きかったのか?

野良ゾウ
広いタライ平原の中では象も小さい。
野良牛は良く見るけど、これは野良ゾウ?
翌日、全員寝不足。
ゾウが川で水浴びをするのを
ボヘ〜と眺めながら朝食をとる。
「ああ、ゾウね…。」とすでに見慣れて
誰も反応しないのがコワイ。
これはこれでなかなか観ることのない
凄い景色だと思うが、それくらいここ数日
でゾウを十分満喫したということ
なのだろう。

しかし、ソウラハの村も一応は観れて
よかったけど、やはり何といっても
『Tiger Tops』が最高だった。どちらかにもう一度行け!と言われたら、
迷わず公園内のロッジに行くことだろう。
“やっぱり世の中お金かなぁ?” なぁ〜んて皆、口では冗談のように
言い合ってたけど、勿論、本当はそんな単純な話じゃないことはわかってる。

たぶん、というかきっとそうだけど…、
“3人でいたから楽しいのだ!”。
人間、感動を同時に共有出来るのはうれしい。
『お金で買える快適さ』も素敵だけれど、やっぱりそれを共有できる『人』が居なけりゃつまらない。
だって1人で『Tiger Tops』に泊まっても全然楽しくないもの。
それだったらソウラハの安宿に寝汗かいて寝た方がよっぽどまし。

大事な『人』がたくさんいる人生は最高だ。
そしてそこに『お金』が加わると楽しみ方が何倍も広がる。
世の中には『人』+『お金』がある人の為の楽しいリゾートがたくさんあるのだ。

ということで結論。今回のChitwanは『人』と『お金』のバランスを検討した結果、
『Tiger Tops』の圧勝であったとさ。おしまい。

(Tiger Tops の様子は BE COOL #14 にもあります)

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