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Vol.98 『Amsterdam』
 2003年5月28日

スキポール空港の入国審査は、あっけないほど簡単だった。
何年か前にEC諸国は出入国が簡素化されたと聞いてはいたが、
出入国カードも無いし、税関で交わした会話など、「Are you Japanese ? 」
と聞かれて「Yes ! 」と答えると、ニッコリ笑って「こんにちは。」と日本語で挨拶されて
スタンプをポン!これだけ。リターン・チケットも不要ときたもんだ。
素晴らしい!!

かねてから興味があったことのひとつに、“ヨーロッパに住む”というのは
一体どういう感覚なのだろう? というのがあった。

世界中に飛び散っている人種はたくさんいる。中には中国人やインド人のように
住む所は地球!とばかりに縦横無尽に新しい土地にビジネスを持って根をはる
人種もいるし、イスラエル人のように母国の事情も絡んで旅が常識になっている国もある。
ここ数十年、安定して旅行にいそしむアメリカ人や日本人、最近急増している
韓国人や台湾人など、いまや世界中の人間が地球上をくまなく旅しているような気がする。

それでも旅のパイオニアは、やはり、ヨーロッパ人ではなかろうか?
キャプテン・クックからコロンブスに至るまで、歴史の差といえば話は終わけど、
世界中の大陸や島々を発見したのはほとんどヨーロッパ人である。
“ヨーロッパ人”などとひとまとめにするのも乱暴だと思うが、それは島国で育った
日本人から見た目ということで、この際勘弁してもらいたい。

まぁ、とにかく、個人的なイメージで言わせてもらうと、歴史のある国がいっぱいある所。
そんでもって、ある意味では“終わっちゃってる国”という感じがしていた。
基本的に“石の文化”なので建造物も立派だし、文化も完成度が高いけど、
なんか煮詰まって重たい空気を感じる… そういう感じ。
だからこそヨーロッパ人は、古い慣習や文化から逃げて、「地球の楽園探し」を
始めたのではないか…? と、思ったりしてたわけ。

だから今までは、観光とかでちょこっと寄っても、『物』とか『文化』みたいなものに
感動するだけで、『人』やそこで流れる『時間』の感覚まで、ゆってくり触れることもなく
過ごしていた。

その程度の認識なのだが、今回はせっかくヨーロッパに入ったことだし、
“ユーロの世界”をちょっとだけ覗いてみようと思う。
1ヶ月の限られた時間だし、どうせなら旅行者も多く英語が通じる所がいい。
ということで、やってきたのはオランダ
ホテル
泊まった安宿。
1Fはステーキハウスになっている。
Amsterdam(アムステルダム)だ!

一瞬、ロンドンに寄ったものの、気分的には
ネパールからAmsterdamに来た感じだ。
目に映るシーンはまるで様変わりする。
山から平原へ。田舎から都会へ。
水の無い国から水に囲まれた国へ…。

まずはいつものごとく宿探し。
右も左もわからないので、とりあえず人が集まる
Damrak.St(ダムラ-ク通り)沿いのホテルを
探す。この辺りには手頃な宿が集中しているのだ。
数軒見て廻った後、程よい宿を見つけてチェック・イン。

狭い階段
古い建物の階段はどこも急な造り。
歩幅は狭い!
階段
最上階への階段。

この街の家は玄関が狭く、奥行きがある造りが多い。
これは17世紀の黄金時代の名残らしい。その昔の船の時代、商業都市として
発展した運河沿いの土地は高く、課税額が間口の広さで決められていたからだ。

間口が狭い分、空間を広く利用しようと、階段はもの凄く急匂配。
切妻屋根も特徴で、よく見ると、古い石造りの建物はあちこち傾いて
互い違いになっていたりするのが面白い。

部屋の中
泊まってた最上階の部屋。
アキヤン
バルコニーでたそがれる人。

泊まったホテルもそんな造りのB&Bホテル。たくさんある中でここを選んだのは、
古い建物なのにエレベーターが付いていたからという理由であった。
切妻屋根の古いホテル。我々の部屋は最上階のバルコニー付きペントハウス…、
と言えば聞こえはいいが、ようするに屋根裏部屋である。

それでも、街の中心地をブラつくには便利だし、朝、コーヒー飲みながら
バルコニーから人通りの多いDamrak.Stを眺めるのも楽しい。
しばらくここに滞在しながら、キッチン付きのフラットを探すことにする。

Amsterdamの街は、中央駅を中心に下に扇状に広がっている。
旧市街を円形に取り囲む運河と、放射線状に貫く道路があり、
トラム(路面電車)もメトロ(地下鉄)もバスも発達していて移動は便利だ。
中央駅に近づくほど人が多く、離れれば離れるほど人通りが少なく落ち着いた
雰囲気になっていく。街の規模も大きくないので、把握するのは簡単そうだ。

街と建物
街中。
建物が傾いてるのわかる?
ボート・ハウス
運河に浮ぶボート・ハウス。
気持ちよさそ〜!

今の時期、気候は思ったより暖かくない。やはりヨーロッパは寒いのか…?
ロンドンよりはましだけど、日本の秋くらいの肌感覚である。
日が暮れるのも遅く、夜9時くらいまで明るい。
街をブラつきながら寒さに思わず服を買い足す日々。
さすがシティ! “買える物”が豊富だ。

久しぶりの街がうれしくてウロウロしている内に、あっという間に1日が終わる。
“シティは時間のスピードが早い”。こんなことじゃぁ1ヶ月もあっという間だろう。
早く落ち着く滞在先を決めたいのだが、これがなかなか決まらない。

当初は「ボート・ハウスもいいね〜。」などと話していたのだが、
気候的にちと寒そうだし、値段も高い(ちなみに購入するとマンションより高い!)。
運河沿いをクルーズする観光客には家の中丸見えだ。数日滞在するには
気持ち良さそうだが、果たして1ヶ月となるとどうなのか?
ハイ・シーズンになるこれからは、良い所はオーナーが使い始めるので、
出物の物件も少ない。となると、やはりアパートか…?

ユメ
地図を読みながら、途方に暮れてる姿…。
街中には不動産屋のようなものも見当たらない。
ツーリスト・インフォメで尋ねても、登録してある
宿を紹介されるだけ。
賃貸アパートは通常半年以上の契約が多く、
どうやら1ヶ月借りるというのが中途半端
らしかった。

街外れの不動産屋に尋ねて調べてもらう
という手もあるが、日本と一緒で、手数料や
前金を払わねばならず、たかが1ヶ月住むのに
それも面倒くさい。されどホテル暮らしを
ずーっと続けるというのもイマイチだ。
一体、この街で旅行者はどうやって部屋を探してるんだろう?

しょうがないので、会う人ごとに「1ヶ月住むアパート探してるんだけど、どこか知らない?」
と聞いてみることにする。すると驚いたことに(たまたまそうだったのか?)、
「あ〜それなら友達紹介してあげる。」とか、「俺の家をシェアするのはどうだい?」と、
どんどん物件が出てくる。

どうやら基本的にこの街はヒッピー文化が根付いているので、横つながりの情報が
多いらしい。“Amsterdamの人口の1割は外国人”と言われるほど、旅行者も
多いところなのだ。なるほど、そういう探し方も不思議じゃない。

しかし…、いくつか見た物件は、古過ぎたり、街中から
オランダ語の新聞
地方新聞。当然、オランダ語。
『全然読めな〜い!!』
遠かったりして、どれもピンとこなかった。
さて、困った困った…。

こうなったらバイロン・ベイみたいに新聞の住居案内で
探すしかないっ! と、勢い勇んで新聞を購入したものの
文字が読めそうで読めない。
「ん??」
それもそのはず、良く見たらオランダ語であった。
ガックシ…。メゲながらも当りをつけてTELしてみたが、
相手が英語が喋れずコミュニケーションがとれない。

“もはや、これまでか?”と思った時、1つだけ英語で
広告している記事を発見した。あきらめ半分で電話
してみると、英語が堪能な男性だった。ラッキー!
早速、そのまま物件を見に行く。

アパートの部屋
借りたアパート。
アキヤン
ようやくホッ。

地図を片手に訪ねて行ったその物件は、アパートというより、日本でいうところの
マンションのようなフラットだった。街中だし、建物も新しい。
部屋はいい感じだし、もうこれ以上宿探しするのも面倒だったので、
早速そこに決めることにする。家賃も交渉したらかなり負けてくれた。

以来、ここで暮らしてる。

パトリック
大家のPatrick。職業モデル。
超〜軽い40才。愛称パト
愛犬
パトの飼い犬。ジョセフィーヌ

大家のPatrick(愛称パト)は、モデルという職業柄か世界中いろんな所にいってる
ユニークな奴。最初に会った時は髪がショッキング・ピンクだった。
最近ブロンドに変えたところ。そんでもって、もうすぐピンクのメッシュを
入れるそうな…。ウルトラ軽〜い40歳(笑)。

妙に気が利くし、センスもいい。犬に「ジョセフィーヌ」な〜んて名前を付けてる
とこをみると“ゲイ”に違いない(?)と我々は踏んでいるが、今のところ、
突っ込みを入れても白状しない(笑)。約束しても5時間は平気で遅れてくる
テキトーさ加減も、自転車を貸してくれたり、レンタル・ビデオ屋のカードを
作ってくれたりといろいろ親切なので、まぁ、良しとしよう。

数ブロック先に住んでるので、たまに置いてる荷物を取りにきたり、
ピアノ(電子ピアノがあるのだ!)を弾きに寄ったりする、お茶目な奴である。

我々が住んでるこのフラットも、人に貸してないときはほとんど自分が暮らしている
らしく、おかげでなんでも揃ってる。壁の至る所にパトの“気合入れた”写真
が飾ってあるのが玉にキズだが(普通、自分の写真飾るかぁ〜?)、
リビング&キッチンと別にベッド・ルームもあるし、使いやすく快適。
なんだか友達の家をそっくりそのまま1ヶ月借りた様な感じなのだ。

こうして快適な“アーバン・ライフ”が始まった。
Amsterdam。なかなか面白い街である。

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