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Vol.101 『BELGIUM』
 2003年6月20日

「ついに夏か?!」

肌寒かった気候も、ある日を境に急に暑くなった。
それも3日くらいの間に、“フリース〜長袖Tシャツ〜タンクトップ”と、
あっという間の変わりよう。街を歩く人々の服装も一気に薄着に変わった。

公園には驚くほどの数の人々が日焼けを楽しんでるし、
運河を走るボートに乗る人々も、デッキでくつろぐボート・ハウスの住民も、
みんな水着になった。寒さに弱い我々が発狂して喜んでいるのは言うまでもない。

勿論、喜んでるのはローカルも一緒。
「最高の天気ね。」と見知らぬ人から、うれしそうに声かけられたりすると、
“あ〜、みんな夏を待ってたんだ…”と感じる。
気温が上がって日差しがきつくなっても、空気は乾燥しているのでさわやか。
風は気持ちいいし、自転車をペダルを踏む足もおのずと軽くなるというものだ。

もっともローカル曰く、Amsterdamの夏は、こんな天気が夏の間に数週間続くだけ
らしいが、それでも「季節の変わり目」を感じられたことに感謝!
おかげで夏を待ちわびるヨーロッパ人の気持ちが疑似体験できた。

今の時期、「日照時間」が長いのもうれしい。
夜の10時半くらいまでは平気で明るいのだ!
だから、最初の頃は時間の感覚が狂って困ったもんだった。
“そろそろ夕方かなぁ?” と思ってると、もう夜の9時くらいだったりして…(笑)。
ダラダラと昼まで寝てても、それからまだ10時間もある! というのは凄い。

おかげですっかり夜型生活になってしまった。
どうせオランダの次は、再びハワイに行く予定なので、いっそのことこのまま
突入したら、時差ボケ知らずでいいのかもしれない。

チケット屋
「D'reizen」。格安チケット屋。
信じらんないくらい待たされる!
ハワイ行きのチケットを購入する際、
旅行代理店に行った時のこと。
壁一面に飾られた外国旅行の値段の
安さにびっくり!!
特にヨーロッパ諸国は陸続きのせいか、
破格の値段だ。“外国が近い…。”
島国日本で育った身としては、
この環境は羨ましい限りである。

“せっかくだからどっか行ってみるか?”
と話は盛り上がり、
“どうせだったら今まで行ったことのない国、BELGIUM(ベルギー)に行こうではないかっ”
と唐突に決定! こうしてお隣の国ベルギーに遊びに行くことに…。

陸続きというのは不思議な感覚である。
オランダから2時間も走れば外国に出てしまう。
ちょうど、バスでAntwerpBrusselsを回る1日観光ツアーがあったので、
それに参加してみることにした。

観光バス
Damrakストリートにある観光バス乗り場。
途中の景色
どこまでも広がる平原。

朝10時、Damrakストリート沿いのバス乗り場に集合。
団体バスに乗り込んで、いざ出発!
街を出てしばらく走ると、景色はのどかな風景に変わっていく。
牧草地や田園、たまにみえる風車、どこまでも広がる平原…。
“平坦な視界で固定された”風景は変化がなく、妙に安心感を感じさせる。

途中、「ハイ。ここからベルギーです!」と言われ、国境を越えたのだが、
窓から見る景色もさほど変わらないし、税関もなく通り過ぎるので、
いまいちピンと来ない。

このツアーは、人気のツアーらしく、想像以上にたくさんの人が参加していた。
バスは、ほぼ満席。いわゆる、団体さん旅行なのである。
さっきから、ガイドは5ヶ国語を自由にあやつりながら喋りまくっている。
英語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、オランダ語だ。

ヨーロッパ人の友達に出会うと、まず、これに驚かされる。
環境の違いと言ったらそれまでだけど、大抵の人が何ヶ国語も喋れるのだ!
コスモポリタン・シティらしく、観光パンフレットも、常時5ヶ国語くらいで説明が
されているものが多い。

ちなみにオランダの公用語はオランダ語だけど、ほとんどの人が英語を話す。
先日映画を見ていた時も、主人公がフランス語を喋べるシーンがあって、
字幕も無いのに大勢の人が笑っていた。ということはフランス語を喋れる人も
多いということか? ベルギーに至っては、公用語がオランダ語、フランス語、
ドイツ語の3ヶ国語だ。…羨ましい。

とは言うものの、同じフレーズを延々5ヵ国後で繰り替えすガイドに、
“うるさいなぁ…”と少々食傷気味になる。Ducth(オランダ人)って変なとこ
真面目で、手間をかけることをいとわないとこがあるが、いくらなんでも忙し過ぎ!
他にもそう思った人は多くてクレームが出たらしく、
途中から英語&スペイン語&フランス語の3ヵ国語放送に変わった。
それでも十分、うるさかったけど…(笑)。
ノートルダム寺院
ノートルダム大聖堂
ステンドグラス
見事なステンドグラス。

2時間余りで最初の目的地、Antwerp(アントワープ)に到着。
Antwerpは世界最大のダイヤモンド加工地で、世界中のダイヤの原石が
ここに集まり研磨されている。ファッションの世界も元気で、
いろいろ見て廻りたい所がいっぱいあり、楽しみにしていたのだ。

ところが…。マルクト広場で一旦解散して、1時間半後に集合と言われる。
「え〜〜っ、たったの1時間半?そんな時間で何したらいいわけ…?」
団体旅行に慣れていない我々にとって、あまりにも短すぎる時間。

とりあえず、有名な「ノートルダム大聖堂」に行ってみる。
世界遺産にもなっている巨大なゴシック様式教会だ。聖堂の中には素晴らしい
ステンドグラスの数々、「フランダースの犬」でネロ少年(憶えてる?)が
一目みたいと憧れた、ルーベンスの三連祭壇画が展示されていた。

一通り見て廻ったらお腹がすいて、カフェで一休み。
「さて、どこに行こうか…?」と、ボーッとしてるうちに、気づいた時には
集合時間が迫っていた。追い立てられるようにバスに乗り込む。
ほとんどどこにも行けないまま集合、そして出発…。なんか忙しいぞぉ〜!

更に走ること1時間余り、首都Brussels(ブリュッセル)に到着。
EU や NATO の本部やその他各種国際機関がおかれ、住民の28%が外国人で
構成されている巨大な国際都市である。「グルメの都」としても有名で、
かのミシュランのガイドブックで星付きの評価を得ているレストランも少なくない。
本来は、ご飯でも食べながら、ゆっくり廻りたいところなのだが…。

ここでも持ち時間はたったの2時間半。やっぱり時間がない。
バスの客達は、皆速やかに街に散らばっていった。観光バスに乗る人々は
観光するのが目的なので当たり前だが、目的意識の薄い我々は、気付くと
またしても2人だけ取り残されていた。
街角の人混み
この人混みは、もしや?!
小便小僧
小便小僧(Manneken-Pis)
別名ジュリアン君。

気を取り直して、まずは観光名物、「小便小僧」を見に行く。
それは町の中心部にほど近い、住宅街の一角にあった。銅像の前には、
人がたむろしているのですぐわかる。「小便小僧」は、世界中にレプリカが
出回っている例のお馴染みのポーズで、ひっそりと街角にたたずんでいた。
実際に見た銅像は感動も何も…、なんてことないただの小さい銅像。
一体、なんでこんなんが有名なの?

この「小便小僧」の起源には各説があり、本当のところは何故?こんなに有名に
なっているのかは未だに不明だが、17世紀頃には、すでにルイ15世から
衣装が届いていたらしく歴史は古い。以来、世界各地から衣装が寄付されて、
その数650着以上が博物館に展示してあるというから、ますます訳がわからない。

Grand Place
Grand Place
17世紀の建造物に囲まれた広場。
ユネスコ世界遺産に選ばれている。
Grand Place
ブラバン公の館

それでもGrand-Place(グラン・パレス)はさすがに見ごたえがあった。
広場の周りを、16世紀からそのまま現存された建造物が取り囲んで建っている。
至る所に金箔をほどこした建造物は、世界遺産にも指定されていて、
当時のギルド社会の栄華がしのばれる。
カフェでベルギービールを飲みながら、16世紀の世界にしばしワープしてみる。


ベルギーワッフル

ベルギー名物といえばワッフル。
さすがにウマイ!
チョコ
王室御用達のチョコレートの数々。

しかし…、如何せん時間が短すぎる!!
名物のワッフル食べて、王室御用達のチョコレートを買って、
タンタンミュージアム観てたら、もうお終い。慌しく時間は過ぎて、気がつくと、
3ヶ国語放送のバスに揺られて帰路を急いでいたのであった。

今回つくづく感じたけれど、団体旅行は大変だ。
決められた少ない時間枠の中で自由にしろ、と言われても、所詮大した事は
出来ないものである。特に、我々のように自由気ままに毎日過ごしている
身の上では、尚更そう感じる。ベルギーに触れるつもりが、あまりの忙しさに、
一体どこに行ったのかわかりゃしない。やはり鉄道で移動すべきだった…。
日暮れ
日暮れは夜の10時半くらい。


夜の運河

夜の運河は美しい。

Amsterdamに到着したのは午後10時。外はまだ明るい。
東京駅にそっくりの中央駅(古くから日本との交流があるのは有名な話。
日本の東京駅はまさにここをモデルに作られた)付近には、人が溢れている。
見知った景色に、妙にホッとする。

それにしても、「外国で1日遊んで、自分の国に帰ってもまだ明るい」というのは、
よくよく考えたらスゴイことである。忙しかったけど、陸路で移動したことで、
陸続きのボーダレスな国に生きてる人々の感覚が、少しわかった気がする。

彼らが語学が堪能なのも、外国人との距離感がこなれているのも、
歴史的背景はもちろんのこと、この外国との距離感が関係しているのだ。
ヨーロッパの国々は近い。日本を国内線で移動するくらいの距離感だ。
そしてそれぞれの国に文化が存在していて、当然、言葉も違う。
他国と切磋琢磨している歴史が、日本とは比較にならないほど長いのである。

“もし、自分がこんな所で生まれ育ったら、どうなったのかなぁ…?
 きっと何ヶ国語もペラペラになっていて、気軽にヨーロッパ内を移動していた
 ことだろう。” などと、つい考えてしまう。この環境の差は大きいよ!

国境はあるけど、ボーダレス…。
そんなヨーロッパの世界観を、慌しくも垣間見た1日であった。

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