Vol.109 『These days』 2003年8月20日 早朝起きてサヌールのビーチに波チェックに行く。 ここはサンライズが美しい場所。ビーチ沿いの店もまだ静かで、 地元の漁師のお爺さんが魚を採る姿が見かけられる。 ほのぼのと、のんびりした風景。 しばらく海をボーッと眺めていたら、おもむろに日本語が耳に入る。 「イマ、カンチョーダカラ、マンチョーノホウガイイヨ!」 誰かと思って声の主を見ると、それは先程から魚を採ってた漁師のお爺さんだった。 あ〜〜驚いた…。 一体いつからこんなにバリニーズは日本語を喋るようになったんだろう? バリ島は都市部と田舎の住み分けが出来ている場所だ。 田舎はともかく、都市部のメインの産業は「観光」なので、日本語を喋る人間が多い。 カタコトの日本語から流暢な日本語に至るまで、その数はかなりのものだ。 だから、この島では、英語が出来ない日本人でも、なんら苦労することなく 過ごす事が可能である。 もともと、ここはインドネシア語圏。お仕事関係の人ならともかく、 ちょいと遊びに来る人には、文字からの情報は伝わらない(読めないからね)。 だから文字の情報がない頃は、バリ島を知るには、「人」からしかなかった。 話し掛けてくるバリニーズも、まだまだ素朴で、日本語を覚えたくて必死の子が多く、 いろんな所にガイドして連れってくれても、我々が食事をしていると、外で いつまでも待っていてくれたりした。彼らにとってはレストランの食事は高いものだし、 こちらとしても誘うのも気が引ける。たとえ誘っても恥ずかしそうに断るバリニーズが 多かったように思う。 そうして何度か遊ぶうちに「おごるから一緒に行こう。」と誘うと、はにかみながら ようやく着いて来る…、そんな感じ。無論、お土産屋に連れてったりすれば、 彼らとて多少のマージンは貰うのだが、所詮物価は安いし、変にあざとさが無く、 それはあくまで“トモダチ”のレベルで、心地いいものだった。 しかも、親しくなればなるほど「あそこは高いよ。」と、何かと親切にしてくれる。 お金以上に、“トモダチ”を大切にしてくれた。 バリニーズの“お金と友情のバランス”は最高で、感動すら覚えたものだ。 だが状況は知らぬ間に、かなり変わったみたいだ。
今や、急増した日本人観光客に対応して、 こんな情報誌まで出ている時代である。 文字でみるバリ情報は新鮮で ちょっとした驚きだ。考えてみれば 旅行本も数多く出ているのだから 当然と言えば当然か…。 バリ在住の日本人の数も 登録している人だけで、 現在2,000人は超えてるらしい。 私が最後に聞いた時は 190人くらいだったから、 ここ4,5年で急増していたのであった。 ちなみに登録してない人もかなりいるだろうから、その数は、ちょっとしたもんである。 ハワイと違って、物価も安いし、同じアジア人として違和感も少ない。 バンジャール(村の共同体)の助け合いシステムも、年長者を大切にするところも、 一昔前の日本の農村を感じられて、ホッとするものなのかもしれない。 ハワイに寄って来たせいか、違和感が少ないけれど、ここは確かに日本人が多い。 サーフ・ポイント「クタ・リーフ」近辺になると、海に入ってる約半数は日本人。 思わず、ここが海外というのを忘れてしまうくらいだ。 今まで、海外で日本人と会うと必ず挨拶したものだが、ある一定以上人数が増えと、 さすがにいちいち全員に挨拶してらんなくなる。 視界に入るけど目は合わさないようにする、という不思議な感覚。 ふと、“日本の海ってこんな感じかなぁ…?” と思う。
クタから南に車で5分。船着場には、常時、数隻の船があり、ここからポイントまで アクセスする。船と言ってもカヌーのようなボートで、なかなか味があってよろしい。 この船で、行こうと思えば「ウルワツ」や「パダンパダン」まで行くことも可能だ。 ただ、我々が一番良く行くのは、「エアポート・レフト」か「ライテンダ−」。 空港の滑走路の近くにあるので、この辺りのポイントに入っていると、爆音と共に、 離着陸する飛行機が眺められる。ハイタイド時が一番良く、ロータイドになると リーフがむき出しになるので危ない。無風の朝が狙い目だが、波がいい時は 必ず混んでいる。 3日前は島中、波大炸裂だった。サヌール近辺はダブル以上の波となり、 「まだ、死にたくないっ!」と、お手上げ状態。だから昨日はサイズダウンした いいうねりが残っていることを期待しつつ、お気に入りのポイント「ライテンダー」に 来たのだ。そして狙い的中!? サイズは頭半くらいで、超ロングライドが可能なくらい綺麗に割れていた。 海にはすでに25人位のショート・ボーダーで混んでいたが、ロングは我々だけ。 入ってみると、セットは思ったよりデカい。発狂して沖から乗りたい放題のアキヤンを 尻目に、私はデカさにビビりなかなか乗れず、かといってインサイドの熾烈な戦い にもメゲ、そうこうしているうちに、とうとうこの日は1本も乗れずに終わってしまった。 「いやぁ〜、最高だったよ!」と笑顔のアキヤンに、意味もなくむかつく。 波乗りってなかなかうまくなんない。限界を超えれない自分に自己嫌悪…。 ちょっとだけ波乗りが嫌いになった1日であった。そういう時もあるよね?
旧「ホリディ・イン」(今の「バリ・ハイ」)で 7年働いて、自分の船を買った。 目を閉じてると、まるで日本人? というくらい日本語がウマイ。 2年前から、船は順番制になったので (仲間内でもめてそうなったらしい)、 さっぱり儲からなくなったそうだ。 「もう、大変だよ〜。」とつぶやく カトちゃん。そうなんだ…。 あんまり値切らないようにしよう。 ここには、「お前もかっ…?」っていうくらい日本語が喋れるバリニーズが多い。 昔からここにいるカトちゃんに、「最近、あの子見ないね〜?」とローカルの 男の子のことを聞くと、「あ〜、みんな結婚して日本に行ったよ〜、茨城。」と言う。 そう…、バリニーズと日本人の国際結婚は多いのだ。 そしてそれは、圧倒的に日本人女性&現地男性の組み合わせである。 なにかとプレッシャーの多い日本社会の中で、対面を気にする男と変に 気をつかって付き合うより、お金はなくても、のんびりとやさしいバリニーズと 一緒にいた方が幸せを感じる、というのもわかるような気がする。 昔も今もバリニーズの “サクセス” と言えば、圧倒的に外国人との関係によるもの。 結婚となると、他の国同様、当事者達は何かと大変なこともあるだろうけれど、 世の中、何事も需要と供給のバランスで成り立っているのだから、 本人達が幸せならそれにこしたことはない。バリ島ほど数は多くないにせよ、 どの国も、日本の女の人は逞しい。現地の男と、サッサと付き合っていく。 “大和なでしこ”は、いち早く、インター・ナショナル化しているのである。 こうして日本人と付き合うバリニーズが、更に、日々、“日本語ペラペラ化”に 拍車をかけていくのであった。
バリニーズがやさしいのは別に、対女の子だけではない。 彼らは、“親日家” と言ってもおかしくないくらい、日本人のことが好きだと思う。 オージーほどうるさくないし、ヨーロッパ人ほどスノッブじゃない。 ブラジル人ほど荒くもないし、台湾人よりお洒落な感じ。穏やかで金払いが良く、 見た目も似ている日本人はつきあい易いのだろう。 勿論、「観光」が仕事なので、いいお得意さんなのだろうけれど、 彼らの日本人への接し方は、まだまだいい感じの “トモダチ” レベルで、 これが日本人にとっては、思いっきり気が抜けて楽なんだと思う。 巨大資本が投入され、情報も増え、バリ島の「観光」スタイルは多様化したけど、 バランス感覚に優れたバリニーズのことだから、きっと、うまくやっていくだろう。 いや、そうであって欲しい!と、切に願う。 さて、デカ波にメゲた時に良く行くポイントは…? というと、今のとこ、ここ。
クロボカンのお洒落なレストラン「KU DE TA」前。 レストランは “これがバリか?” という高飛車な値段だが、味は、まぁ普通。 それより、ここが最高なのは、敷地内に寝そべるベッドが置いてあること! だから、ジュースでも飲んで日焼けしながら、ついでに波乗りも出来ちゃう。 波乗りしない彼女も、ここなら黙って待っていてくれるに違いない。 (但し、午後になるとベッドが満杯になることも…。ベッドの予約は可。)
ワイドでたるく、インサイドで掘れる。 だからショートにはちょっと テイク・オフがきついかも? 場所柄か(?)入っているサーファーは、 ヨーロピアンが圧倒的に多い。 比較的空いてるし、 ビーチ・ブレイクなので安心だ。 疲れたら海から上がってベッドでゴロゴロ…。 ビーチの「物売り」も、レストラン内には入れないので、たまに外から敷地内の客に アピールするくらいなので、静かに過ごせる。 ビーチにはトップレスの女の子&たまにおばさんが寝転んでいる開放的な雰囲気。 快適な “オン・ザ・ビーチ” 生活が約束されている。
店内には流れる音楽も「Cafe del mar」系で、いい感じ。 飛び交う言葉もイタリア語やフランス語、及び英語である。 スミニャック&クロボカン在住のヨーロッパ人、および、その人達を訪ねて 遊びに来ているお友達、まんまナイト・ライフ・シーンに移行しても違和感なしと いった感じの人種がたむろしている。 世界中どこに行っても、“地元民と距離をおいて自分達の世界を守る” という ヨーロッパ人らしい空気一杯の場所。この島の人件費と物価の安さにセンスが 加わると、結構カッコイイ場所が出来上がるというのは良くある話。 そしてそんな彼らとつるんでいるのも、やはりバリニーズ。 バリ島では外国人は自分名義では店が持てない。だからローカルに名義を 借りてビジネス展開をするのだ。西洋文化を思いっきり受け入れて、 利用してのし上がっていくバリニーズも多い。 ここはここで、もうひとつのバリ島。
そんなちょっとハイソな空間に身を置きながら、ビーチを眺めるのも面白い。 笑っちゃうのが、ビーチの「物売り」のおばちゃん達。 知ってる人は知ってるだろうが、実は彼女達、簡単な言葉だったら数ヶ国語 喋れる人が多いのだ。日本人には、「こにちは?」と声を掛けてる彼女達も、 フランス人が通ると「ボンジュール?」、イタリア人には「ボンジョルノ〜?」と、 ちゃんと使い分けてる!! 耳を済ませていると、ちょっとした会話くらいなら出来るみたいだ。 彼女達は、恐ろしくもバイリンガルなのであった。 しかし、いつも思うけど、なんで見ただけで何人かわかるんだろうね? まったくもって、バリニーズの受容の感性と言語能力は計り知れない。 そう感じるのは日常のこんな風景なのである。 |