Vol.72 『Arenal & Monteverde』
 2002年12月15日

困った事に現在、風邪を引いている。鼻はズルズル、頭はボーッだ。
日本から持ってきた薬の数々。あまり使うこともなくここまで持ってきたが、
やはり、持ってきてよかった。今になってようやく役に立っている。

ことの始まりは原始生活最後の夜、最後の最後でついに気が抜けたのか?
アキヤンが裸で寝てしまい風邪を引いたのだ。
奴が風邪を引くのは勝手だが、私にまでうつしてくれとは頼んでない。
おかげで2人してズルズル、ボーッだ…。

コスタリカ滞在も残すところあとわずか。
インターネットでチェックするも波のサイズも上がりそうになく、こうなったら最後は
「Arenal Volcano(アレナル火山)」「Monteverde(モンテベルデ)」という
気になっていた観光名所でも行くか?と、珍しくホテルの予約までしていたのだ。
それなのに、ズルズル、ボーッなのである。

ホテルの予約などキャンセルすればよいだけの話なのだが、悩んだ末に、
『行かなきゃ、あとあと後悔するかも…?』という想いと、『ここで寝てても
しょうがない』という想いが交差し、結局強行突破することとなった。

まずは、「Arenal Volcano(アレナル火山)」に向かう。
早朝Mal PaisからPaquera(パケラ)へ車で移動。Paqueraでフェリーに乗って
ニコヤ半島に別れを告げ、Puntarenas(プンタレナス)まで渡る。
そこからはひたすらアレナル火山を目指して爆走。

アレナル火山はコスタリカで最もアクティブな活火山で、国立公園でもある。
ティララン山脈の北端にあるきれいな円錐形のこの山は、日中遠目に見える風景
からは想像もつかないが、山肌からは噴煙があがり、火口からは真っ赤な溶岩が
噴出しているという。だから夜観るナイト・ツアーなるものが人気らしい。

ふもとにあるアレナル湖はコスタリカ最大の人口湖。
ウィンド・サーフィンと釣りで有名だ。といっても、我々はどちらもやる気はない。
ましてや山登りなんぞする気もない。(ちなみに危険な為登山は禁止されている)
それでは、何しに行くのか??

それは… “温泉” に入りに行くのである!!
ここには 「Tabacon Resort (タバコン・リゾート)」という有名な温泉リゾートが
あるのだ。近年、ホテルも隣接されてさらに快適になったという。
運良ければ、火山の噴火を観ながら温泉三昧…。
まさに日本人の魂が揺さぶられる、心が躍る話ではないか?!

たぬき
アレナル山の麓に生息している動物。
コイツが道路にワサワサと次から次へと
登場してきた時にはビックリ!
このあたり全体が国立公園。
アレナル火山
アレナル火山。
夕方のまだ明るいこの景色からは、
噴火の様子や溶岩の流れる様は
想像できない。

ところが…、アレナル湖は想像以上に大きく、その周りをグルりと一回りしないと
「タバコン・リゾート」には辿り着けない。おまけに道は穴あきの舗装道路で、
極めて悪いときたもんだ。ようやくホテルに到着したのが午後3時。
もはや完全にグロッキー状態。アキヤンは熱まで出てきてこの日はダウン。

空は曇っているし、アレナル火山の姿もまったく見えない。
ホテルの人に尋ねると、標高の高いこの辺りでは、火山の頂上には常に雲が
かかっているのが通常らしい。なんだかガッカリ。
ただ、たまにドド〜ンと噴火の音らしきものが聞こえる。確かに火山はあるらしい。
しかたなく1日延泊することにして、明日に期待をもって寝る。

翌日。なんと快晴!!
昨日は見えなかったアレナル火山も、今日はその優美な姿を顕わにしている。
微熱のアキヤンもさすがに我慢出来なかったらしく、無謀にも「タバコン・リゾート」
に出かけることに…。そしてそこには素晴らしいアミューズメント・パークが
広がっていた。(詳しくは『BE COOL』参照のこと)
2人共、体調も忘れて、思わず1日中大はしゃぎしてしまったのであった。

そしてその夜。
ホテルの部屋からは、満天の星空のもと、ドッド〜ンという音と共に
真っ赤な溶岩を噴出すアレナル火山の壮大な姿が観られた。ラッキー!
そして、そのホテルの部屋の中には、勿論、
ウンウン唸りながら熱にうなされる愚か者の姿があったとさ…。あ〜あ。

*       *       *       *       *       *

翌日、地獄から再生したアキヤンとは裏腹に、妙に体がだるくなった私。
どうやら風邪菌を本格的に移されたらしい。う〜〜、しかし行くしかあるまい。
だってコスタリカ到着以来、私が最も興味があり行ってみたかったのが、
「Monteverde Cloud Forest Preserve (モンテベルデ自然保護区)」なのだから。

モンテベルデは国立公園ではなく、民間団体によって運営されている自然保護区
として有名で、その1万1,000ヘクタールの熱帯雨林の森には、かけがえのない
貴重な動植物が生きている、エコ・アドベンチャーズの夢の森だ。

町
保護区の入口は、Santa Elenaの町。
日中は多くの観光客で賑わっている。
例のごとくおなじみの悪路。
いくつもの山を越えて、最寄の小さな町
Santa Elena(サンタ・エレーナ)
着いたら、そこから6kmでモンテベルデ
入口だ。この区間にいくつかのホテルや
ペンションがある。

ようやくホテルに辿り着いた頃には、
私の額はすでに熱かった。
これじゃァ誰かさんの二の舞だぁ… と
思ってもどうにもこうにも具合が悪い。
しかも、ここは山なので気候も涼しい。ヤバイっ…。
最強の冬服セット(Tシャツ2枚&ロング・T1枚&フリースに長パン&靴下)を着込むと
サッサッとベッドに潜り込む。もちろん、この日は身動きとれずそのまま激沈したのは
いうまでもない。

翌朝、長い睡眠に救われて(20時間くらい寝た)、奇跡的に一瞬復活!
モンテベルデに向かった。
トレイル
自然保護区のトレイルの中。
入場料9$。

苔

一つの樹木にはたくさんの
着生植物がビッシリ。

ここは“熱帯雲霧林”という変わった森だ。
熱帯で標高が800m〜1,300mの地域にある、常に雲に覆われて湿度の高い密林。
樹木には何千種類もの着生植物(大気中の水分を吸収して成長しているらしい)が
はりつき、それ自体が1つの生態系となっている。

雨季には雨具が必須らしいが、それに充分納得できるほどこの森は湿度が高い。
足元をみるとトレイルにも苔が生えている。
苔などの着生植物がまるで森全体を覆っているかのようだ。不思議な景色。

この神秘的な雲霧林の中には、幻の鳥といわれている有名なケツァールや、
オオハシ、ハチドリ、などバード・ウォッチャー天国ともいえるほど、
鳥達がたくさん生息している。

鳥

バード・ウォッチャー天国。

熱帯雲霧林。
モンテベルデ村が創られたのは1951年のこと。
軍国主義だったアメリカに反対して、自由を求めてやってきたクエーカー教徒が
選んだのがコスタリカだった。その理由は、コスタリカは軍隊を放棄しているから。
ほどなく、この“雲霧林”が生態系に多大な影響をおよぼしていることを悟った彼らは、
賢くも自分達の所有地の3分の1を自然保護区に決めた。
それがこのモンテベルデ自然保護区の基礎となったのだ。

いまやこの森は世界中の研究者や教育者の、貴重な生態系のフィールドとして
活躍している。いつの時代も、こういう偉い人が存在しているから、大事なものが
残っていくのだ。感謝!

さて、我々、実はモンテベルデではかなえたい夢が2つあった。
1つはケツァールを観ること!!
ただし観れる時期と観れない時期があるらしい。今は時期ハズレだし、
第一あまりに森がデカ過ぎて現地ガイドなしでは難しく、観れず終い。
だいたい体がフラついて、途中からケツァールどころか自分の足元を見るので
精一杯だったので、所詮無理な話だと言えよう。

2つめの夢は、レッド・アイ・フロッグを観ることだ!!
森では会えなかったけど、村にある怪しげな
カエル
Red-Eyed Leaf Frog
(アカメアマガエル)
コスタリカ派手ガエルの代表。
もっと写真を見たい方はこちらへ。
“カエル館” で対面することが出来た。

こいつがレッド・アイ・フロッグ!!
神様も派手な配色をしたもんだ。
ウルトラ可愛い!
もう家で飼いたいよ。ほんと。
狂喜乱舞する我々に、カエル館の係員は、
本来イレギュラーらしいが、
コイツを手の上に乗っけてくれた。
ピトッ。ウ〜可愛い…。
カエル
Blue Jeans Frog。(ヤドクガエル)
毒ガエル。今や絶滅寸前か?!
カエル
名前忘れた。 すごく小さい!!
葉っぱの上に置物みたいに寝てる。

昔はモンテベルデの至る所にいたこのカエル達も、今ではめっきり数が減ったらしい。
森
オゾンに溢れたこの森も、彼らにとっては
住みにくくなってきているのか?
いつまでも、このアートなカエル達が生き残れる
森であって欲しい。

体調イマイチの為、短いトレイルを楽しんだだけで
終わってしまったが、微熱に浮かされ歩いた森は、
神秘的で不思議な気持ちのいい空間。
貴重な体験だった。


こうして観光も強行し、ようやく旅の
ふり出し地点サン・ホセに戻ってきた。
久しぶりのサン・ホセは、人で溢れかえっていて大都会に思える。

写真の現像、買い物、荷物の送り出し… たまっていた雑用があっという間に片付いていく。
サンタ・テレサで、メール・チェックひとつするのに半日もかかった事が信じられない。
都会のスピード感に驚く。頭と体がすぐにはついていけない。

それにしても、サン・ホセの大都会から車で数時間の距離の場所に、
サンタ・テレサのジャングルやビーチ、噴火するアレナル火山
緑と鳥の王国モンテベルデなど…、とても同じ国とは思えない景色が
同時に存在しているこの国は本当に凄い。

あ〜これ書いてたら、また微熱が出てきた。
誰にも頼まれていないのに、体を壊しても、まだ遊ぼうとした我々。
考えなくてもわかる自業自得の結末だったのだ。
だから今のこの状態を誰にも文句言えないわけですよ、ハイ。ズルズル…。

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