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Vol.111 『Borobudurで1泊』
 2003年9月2日

唐突ですが、この度、
バリ島「アート・ギャラリー&ゲスト・ハウス」をオープンすることとなりました!!

ダラダラと過ごしていた日々から、一転して、ただいまアバラを押さえつつ、
その準備に追われている毎日である。あ〜忙しい…。
とはいうものの、なにかと「ポランポラン(のんびり)」のバリニーズ相手と、
そんな彼らですらあきれるくらいボヘボヘの我々との仕事は、まさに最強(or最低?)
のタッグマッチ、“超ウルトラポランポラン”で進行中だ。

この島に滞在出来るのも残り2週間ちょっとなのに、こんなことで果たして
無事オープンにこぎつけるものなのか?!極めて不安だが、なんとか頑張って
いきたいものだ。ギャラリーのアート担当は勿論、LARGO氏(アキヤン)
こいつが一番不安だったりして…(笑)。 まぁ、こう御期待!
うまくいったらHPでお知らせできることでしょう。

さて、慌しい中にも息抜きは必要と、1泊で近所の島のジャワ島に行く事にした。
目的は、ずばり世界の3大仏教寺院「Borobudur(ボロブドゥール)」を観る為である。
こちらで働くMinaちゃんが、最近旅行会社も始めたというので、チケット等の手配を
お願いした。おかげで、思い立った翌日に出発できる運びにとなる。

いつかは訪れようと思っていた「ボロブドゥール」
バリ島からは日帰りできる距離だが、こういうのはタイミングみたいなものが必要だ。
Minaちゃん曰く、「ボロブドゥールから観るサンセットが最高なんですよ!」
と薦められたので、それは是非観ようではないかっ、
と盛り上がり、急遽1泊で行くことになった次第。
直線のベルトコンベア
Yogyakartaの空港内の
荷物受け取り所。なんと一直線だ!
もの凄いスピードで出てきてビックリ。

夕方にバリ島を出発して飛行機に乗ること
1時間ちょい。ジャワ島で5番目に大きな街、
「Yogyakarta (ジョグジャガルタ)」
空港に降り立つ。
週末だったせいか、地元民で混雑していた。

空港を出ると、ホテルのスタッフが
お出迎え。車に乗り込み、一路、宿泊予定の
ホテルまでバイパスをひた走る。辺りは
すっかり暗くなっていたが、意外と広い
街並みに驚く。
“アジアってやっぱり人口が多いんだなぁ”と、
どうでもいいことを考えていたら、信号待ちで
止まった瞬間、不思議な光景が…。

車に向かってギターを弾きながら近づく男が1人。
なんと、流しの弾き語りだ! 今まで世界中の道路でいろんな物を売る人々を
見てきたが、こんなのは初めて。車の流れの速い高速道路で、信号待ちで一瞬
止まった隙をめがけて近づき、おもむろに「ポロロ〜ン」と下手くそな曲を奏でる、
かなりリスキーな仕事である。

落ち着いてよく見ると、そこら中に“ギター弾き男”はたむろしていた。
前のトラックから小銭をあげるのが見えたので、きっとそこそこ儲かるのだろう。
「こんな状態で聞けるわけないじゃん。」そうつぶやく私に、運転手のダルト君は
日本語で、「そう、じぇんじぇん、イミがな〜いですね…。」と答え、車内大爆笑。

1時間10分程で、お目当てのホテル「AMANJIWO(アマンジオ)」に到着した。


極美のエントランス

AMANJIWO
アマンジオ
部屋は全てヴィラタイプ。

「AMANJIWO」は、アマン・リゾート(別名“女殺しのホテル”と呼んでいる(笑))の
ジャワ島初のホテルだ。すっかり有名になってしまったアマン・リゾートだが、
ホテルの目指すテーマ “作為の感じられない完璧さ” は、今だ健在だ。
最近日本人観光客が急増したらしく、日本語を喋るスタッフがいるのには驚いた。

「明日は朝早いですから、早目にお休みください」とスタッフに言われたにも
かかわらず、久しぶりのゴージャスな部屋に、ちょいと浮かれ気味の我々。
すっかり夜更かしして、早朝4時のモーニング・コールが地獄のベルに聞こえた(笑)。

今回、AMANJIWOに泊まったのは、別に高級ホテルに泊まりたかったわけではなく、
ここが最もボロブドゥールに近く、尚且つ、『早朝サンライズ・ツアー』を持っていた
からなのだった。ボロブドゥールの物売りの多さはよく聞いていたし、
午前10時を過ぎると、一般観光客が押し寄せて写真も撮りづらいとのこと。
ゆっくり観るなら早朝に限るらしい。

眠い目をこすりながら簡単な朝食を食べ、ボロブドゥールに向かう。
ホテルから寺院まで車で7分あまり。辺りはまだ真っ暗闇だ。
階段を上がり頂上で日の出を待つ。

あいにくの曇り空だったが、時間が経って明るくなるにつれ、ジャングルに靄が
かかったような景色は、それはそれで幻想的な風景だ。
ストゥーパ(仏塔)に座ったまま、しばしボーッ…。

ボロブドゥールの朝日
Sunrise in Borobudor
朝もやが晴れてきたボロブドゥール
立ち並ぶストゥーパ(仏塔)が幻想的。

世界遺産にも指定されているボロブドゥールは、8世紀後半に建てられたというが、
誰が何の目的で建てたかは、今だ謎に包まれている。
現在は殆どがイスラム教のこの島も、その昔にこんな建造物が造られているくらい
だから、かなり仏教色が強かったのだろう。
近くに活火山がある為、何度も灰を被ったと思われ、時の流れと共に、
火山灰に埋もれていき、次第に人々にも忘れられていった。

そんな忘れられた建造物が、再び人々の前に姿を現したのは1814年のこと。
当時、東インド会社ジャワ副総督であったトーマス・S・ラッフルズ
あの『ラッフルズ・ホテル』で有名なラッフルズ卿である。

人々の伝承を頼りに、山に囲まれた盆地の中の小高い丘を探し出し、この遺跡を
発見したのだ。すべてを発掘し終わるのに、更に20年の時を経たという。
ボロブドゥールとは“丘の上の寺”という意味だそうだ。
仏塔の中の石像
ストゥーパ(仏塔)の中には
仏様が座っている。


仏石像

この仏様はむき出し。
上に被せるものが見つからなかった
らしい。なんせ遺跡ですから…。

その大きさは約120m四方の高さ42m(現在31.5m)。5層の方形壇と3段の円壇
からなる巨大な建造物。寺院と呼ばれているが、内部空間はない謎の建物だ。
下から順に、「欲界」「色界」「無色界」を想定してあり、くるくる回って下から上に
登るうちに、“煩悩の世界” から “悟りの世界” を体感できるようになっている。
いわゆる石で出来た巨大な立体曼荼羅のようなものだ。

3段の円壇には、たくさんのストゥーパ(仏塔)があり、中には仏様の像が入っている。
掘り起されるたびに多くの仏像が盗まれて、中が、がらんどうのものもある。
このストゥーパはお釈迦さんの姿を現したものと言われていて、下が「蓮」、
釣鐘型に被さっているのが「茶碗」、てっぺんの棒が「杖」を表しているのだそうだ。

その中の1つのストゥーパは、中の仏様の足か手を触ると、願い事がかなう、
と言われているらしく、ひっきりなしに我先にと地元民が触っていた。
当然、我々も触らせてもらう。
レリーフを眺めるアキヤン
回廊にはビッシリのレリーフが…。

5層の方形壇は、回廊に
なっていて、そこには一面
レリーフが彫られている。
その数、2500枚以上と
言われているから相当な数だ。
それぞれがユニークで
素晴らしい出来。思わずどこの
誰だか知らないがこれを彫った人に
「ご苦労さん」と声を掛けたくなる。

この遺跡の修復には、実際、巨額のお金が必要だったらしく、それらのお金は
世界中から寄付されたそうだ。だからガイドのダルト君は、
「この遺跡は世界中の人々によって作られています。」と、誇らしげに語っていた。


人の姿が彫られたレリーフ

素朴なレリーフが可愛い。
それにしてもよく探したパーツ。
巨大な石のパズルみたいだ。
細部まで彫り込まれているレリーフ
誰が彫ったのか?今だ謎。

各回廊のレリーフは、1回廊が上下2段になっていて、上がお釈迦様の生涯、
下が仏教説話。2回廊以上はマハーヤーナ(大乗仏教)がテーマのレリーフと
なっている。その昔の仏教徒が、これらのレリーフを眺めながら、下の俗界から
上の悟りの世界まで登っていったのかと思うと、感慨深いものがある。

しかし、本来下から順に上に登るものなのだろうが、我々は上から降りてしまった。
「悟りの世界」から「煩悩の世界」へ…。こんなんで大丈夫なのだろうか?と
一瞬考えるが、ええいっ、これも現代人の強みよ!
ボロブドゥール全景
Borobudor全体像。
すべて石!
と振り切る。

遺跡を後にしながら、
つくづく“宗教の力”が
人間に及ぼす影響は凄いものだ
と考える。しばし「宗教」は
時代時代の権力と結びついて
人間達にトンでもない建造物を
作らせるのだ。

ボロブドゥールを観て、なぜか過去観たいろんな国の宗教建造物を思い出す。
石の文化の凄さを感じたせいかもしれない。
その昔、ヴァチカン宮殿を見たときには驚いたものだ。
思わず“ジーザス・クライスト・スーパー・スター!”と叫んでしまったくらいである。

宗教建造物には、その時代のアートが惜しみなく盛り込まれるのだなぁ、と感じた。
インドの宮殿しかり、ヨーロッパの大聖堂しかり…、あのヴァチカン宮殿だって、
何世紀もたったら、立派な古代遺跡となるに違いない。

十二分にボロブドゥールを堪能したあと、我々はまたしても・・・・??

象に乗る私
またしても象に…。
一面緑のタバコ畑
青々と繁るタバコの葉。
この地方の地場産業だ。
象に乗ったのである!
ネパールといい、これじゃぁ、“象好き”と思われても仕方がないが(笑)、
アマン・リゾートの提供する「象乗りツアー」というものに多少の興味があったのと、
村の中を通るといわれ、なんだか面白そうだから参加することにしたのだ。

そしてその感想は…?
別に普通に象でした(笑)。1人1象だし、乗る椅子も若干王様気分ではあるものの、
日差しはきついし、通る村も舗装されてて、村人から一々観られてちょっと
恥ずかしかった。それでも、途中川を渡ってマンディする村人を観たり、
広大な畑の中を通ったり、可愛い子供達から「スラマット・パギィ(お早う)!」
声掛けられたりして、ほのぼのとした気分は味わえたけど…。
やはり、象は「Tiger tops」でしょう。

極上の空間
部屋のガゼボ。
夜は虫の声。昼は鳥の声。
スヤスヤのアキヤン
ホテルのプールで爆睡。

午後ホテルに戻る。寝不足の上、早朝から動き回りフラフラ状態だ。
昼食を摂ったかと思うと、もう我慢が出来ず、プールサイドでそのまま爆睡。
しばらくしてから、起きてホテルのライブラリーを覗いたり、
部屋の風呂やガゼボでダラダラしているうちに出発の時間となる。

19:10発の飛行機に乗る為に、昨日来た道を、再び車で戻る。
信号で止まると、またしても「ポロロ〜ン」とギター弾きが寄ってきた。
「真面目に働けよ、兄ちゃん。」と思わず呟く。
しかし考えてみれば、彼らとて遊んでる我々には言われたくなかろう。

21:00過ぎにはバリ島に到着。
駆け足の1泊旅行だったが、かなり気分が切り替わっているのがわかる。
確かに、人間は空間を移動すると心も移動するらしい。

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